じつは実話です。その9 デモドリ

子どもが家の中で友達と遊んでいたときに、飼っていたトリを籠から出した。


人の肩にのりたがる人懐っこいうちのトリは、うちの子の肩から友達の肩に飛び移ろうとした。ところが、あいにくその友達は鳥が苦手だったらしい。

飛び回るトリがその子に向かっていったとき、その子はたまらず玄関のドアを開けて逃げ出した。

トリも突然ひらけた視界に驚きながらも、勢いでそのまま外に飛びだして、空高く飛び去って行った。

雨雲が垂れ込める水曜日の夕方の出来事だった。


その日は、日が暮れるまで近所を探し回った。次の日も早朝と夕方に探し回った。交番と保健所に届け出て、ポスターを貼ってもらった。その翌日も探し回った。いつでもトリが帰ってこれるように籠は外に出しておいた。

トンビやカラスなど大型の鳥が飛び交う空を仰ぎ見ては絶望的な気分になった。


土曜日は仕事が休みだったので、子どもと近所を一回りした後に神社に寄った。トリが帰ってきますようにと祈った。ついでに、その境内のさらに山をのぼった奥にある金毘羅様にもお参りをした。

すると金比羅様の小さな祠の前に、鳩のものと思われる大量の羽が散らばっていた。ネコか狸にでも襲われたのだろう・・。

さらに絶望的な気持ちになりつつ帰宅して、スマホを見た。


ツイッターにDMが来ていることに気がついた。


じつは、トリの迷子情報についてはツイッターにも掲載していた。

ツイッターを普段から全く使いこなしておらず、フォロワーもろくにいない私の迷子トリ情報だったが、なんと世の中の顔も知らない親切な方々がリツイートしてくれており、リツイート数は既に3桁を超えていた。

しかし、とんでもないことにツイッターを使い慣れていない私は、ツイッター画面の見方がよくわかっていなかった。DMなど受け取ったこともなかったし、さらに相互フォロー以外のDMは発見しづらくなっているものらしく、いなくなった水曜日の夕方にすでに届いていた3通のDMに、私はどういうわけだか全く気付いていなかったのである。


DMを開けてみると、うちの黄色いトリがどなたかの肩にのっている写真とともに無事に保護済である旨のメッセージが届いていた。

その方は車でうちの近所を走行中に、道端の黄色いトリに気がつき保護してくれたものらしい。

逃げ出した直後、心細くなったうちのトリは、すぐさま人に助けを求めていたのである。


私はあわててDMを返信し、トリを引き取りに行った。トリはオカメインコのいるうちで楽しそうにしていた。


たまにはこんな奇跡もあるのだ。


Twitterに神社に、そして何よりも保護してくださった方々に、心より感謝申し上げます。

***アリガトウゴザイマシタ***










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る