じつは実話です。その8 子産石の話

10年ほど前、知り合いの職場が関係している現場からソフトボールサイズの子産石が発掘された。


子産石とは、当該地域の地層に眠る丸い石のこと。

地下水に含まれる化学成分により、地層の中でまわりの岩石より固く異なる石質となったコンクリーションの球状のものを子産石と呼ぶらしい。

子産石は、その名の通り、この地域で安産のお守りとされてきた。

子どもに恵まれない女性が子産石をなでた手で腹をさすると懐妊するとか、妊婦が石で腹をなでると安産になるなどの伝承が江戸時代後期に書かれた書物にも記されている。


さて、今では博物館に安置されているその子産石だが、発掘された当時は、男ばかりの職場内の、子どもが欲しい人たちの間で、しばらく回覧されていた。


するとなんと驚くことに、石に触れた職員達の家庭が、次々と子宝に恵まれたのだ。


そのため、当然だがその職場では子ども達の年齢が近い。

だからぜひ子どもたち同士で遊ばせようということで、コロナ禍に見舞われる前まで、年に何度か父親会なるものが開かれていた。

父親達が休日に子ども達を連れて公園に集合し、遊ぶという会である。

10人以上の子ども達とそのお父さん(20代~40代)がアスレチックのある公園などに集まり、さらに独身者も加わり、大人数でなかなか楽しく遊んでいたようで、その間、母親たちは自分の時間が持てるということで、誰からも好評な会だったようだ。


この職場のベビーラッシュが子産石のご利益だとすると、子産石をなでさするのは子どもを望んでいる家庭の人物であれば、女性でなくてもよいのだ。

伝承に加えたい逸話である。

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