じつは実話です。その7 さかなふるまち

「お宅の屋根に大きな魚がのっています。落としちゃっていいですか?」


ある夏の日、うちの玄関先に隣の奥様がやってきた。

うちの屋根に銀色の大きな魚がのっているという。

隣家には屋上がある。屋上で洗濯物を干していて発見したものらしい。


うちではどうしようもできないので、お任せしたところ、ご主人が釣り竿で落としてくれた。


私自身はその時分、仕事に出かけていたので、帰宅後に留守番の義母と娘からかわるがわるこの話を聞くこととなった。


屋根に魚とは・・なんと奇怪な・・

もしや『ファフロツキーズ現象か?!』と、期待したが・・・。


どうやら鳥が空中で獲物を取り落としたものらしい。


娘曰く、


「釣り竿でおとしたらね、下の自転車のカゴにね、ちょうどすっぽりとおさまったんだよ。銀色のお魚だった」


「魚のおなかにかじり跡があったからトンビだろうね」


と義母。


娘と義母と隣家の話を統合したところ、銀色で体長30~40cmの大きな魚は、どうやらアジで、大きな獲物とらえたはいいが、獲物を銜えきれなかったトンビが途中で取り落とし、それがたまたまうちの屋根に着地したという顛末らしい。


屋根に落ち、さらに自転車のカゴにまですっぽりおさまるあたり、なかなかミラクルなアジだが・・、真夏の日中に生魚をそのままにしておくわけにもいかずに、隣家の方が処分してくださったので写真がないのが残念なことである。


調べてみたところ、とある地方では鳥が落としたボラで瓦が割れるような被害も発生しているらしいので、魚が降る事象というのはそんなに珍しいことではないのかもしれない。


家は海岸から直線距離で200m~300mという位置。

頭上にはくれぐれも注意したほうがよさそうだ。

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