第25話三人いっぺんは無理ですよ

学内では今日、ある話題で持ち切りだった。


それは、年に一度の催しである「レッツ! 男女でファッションショー!」というものの話で持ち切りだった。


それは要はあれのことね。


男性と女性の両方のミスコンを同時にやっちゃおうということでしょうね。




そのミスコンは、男性のほうから女性へと誘うのが習わしらしい。


なので学内の女子たちは、もしかしたら自分も誰かからお誘いを受けるのかもと、浮かれ話に花を咲かせている。




かくいう私もユリウス王子に、もしやのもしやお誘いを受けたり……。


しないでしょうね……。


とても残念なことに。




そもそも今だにユリウス王子とは何の接点もないわけだし。


それに私にお誘いをしてくれる殿方などいるわけ――。




「――ミシェルさん、どうか私と一緒に今度の催しに参加しては貰えないでしょうか?」


後ろから声がした。


はひ?


一体どなたでしょうか。


振り返ってみると、その声の主はアルバート様だったのでした。




ああ、きっとこれは夢ね。


まさかアルバート様がこの私をお誘いになるわけがな……。


ってえええええっ?




「はあああ?」と教室にいたヴェインがこれでもかというほど大声を出していた。




いや、私が一番びっくりなんですけど!




「ミシェルさん、どうかお返事をお聞かせ願えないだろうか?」




「ア、アルバート様……どうして私に?」




「それは、あなたという魅力に、私はとりつかれてしまったようだからなのです」




ふべっべっべべべべべ、アバっー!?


尊いオーラ全開で、そんな魅惑のお言葉をぶっこんで来たアルバート様。




教室中の女子たちが、そのアルバート様のお言葉にハートを射貫かれてしまったように「あぁ、なんとお尊いの」と一様に騒ぎ立ていた。


と、同時に私に対して嫉妬に似た何かの視線を送ってきている気がする。


うん、きっと気のせい気のせい……。




こうなってはアルバート様に返事を送らねば。


私がアルバート様に返事を返そうとした時に、ヴェインが「まてミシェル早まるな!」と言ってきた。




「ヴェインには関係ないことですよね?」




「そうだけど。そうじゃないんだよ」




いや、何言ってのこの人?




「俺もミシェルのことを誘おうと思ってたんだよ」




なんですとー!?


そんなことってある?




いえ、ありました。


今目の前で起きてることみたいです。


これは本当に現実なのでしょうか。


いいえ、夢ですよね。


そうですよね。


本当にありがとうございました……。




「あ、ミシェルいたいた。あのさ今度やる催しなんだけど、僕と一緒に出てくれないかな?」




その声はグウェンのものだった。


今度はグウェンからですとー!?




「おいおい、これじゃ三人のうち誰かを、ミシェルに選んでもらわないといけないじゃないかよ」




ヴェインが、何か不満そうにそう言った。




「いいえ、私が一番最初にミシェルさんをお誘いしたのです。なら早い者勝ちで、私が選ばれても良いはずです。ミシェルさんは私では不服でしょうか?」




アルバート様が、私の心が溶け上がってしまいそうなふうにそう言った。




「えー、そんなのズルいよ。僕が一番最後に誘ったとしても、ミシェルは僕を選んでくれるよね?」




グウェンが、いつにも増してぐいぐいとくるようかのようにそう言った。




ちょちょちょ、ちょっと。


何なの一体。


私の思考が追いつかないのだけれど。


もう私の脳はオーバーヒート寸前なのですけれど!?




「――ミシェル(さん)は誰を選ぶんだ(くれるんでしょうか)?」




三人から同時に口を揃えてそう言われた。




「……わ、私が選ぶのは――」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る