第14話捕食者に追いかけらるの巻

ふう、今日も授業が無事に終わったわ。


時間は放課後へと移り変わった。




「リコ、今日も授業お疲れ様ね」




「ミシェルさんもお疲れ様です」




「今日もこの後、図書室に行かないかしら?」




「はい! そうしましょう!」




ふふふ。


リコったら嬉しそうね。


まあ、そう言う私も、リコと一緒に過ごすのがいつも楽しみなのだけれどね。




私は、リコと雑談をしながら帰り支度をしていた。




すると、藪から棒のようにひょっこりと現れたヴェインが、「やあやあ、ミシェル今日も俺は君に夢中だよ」と、いつもの調子で私が恥ずかしくなるようなことを言ってきた。




またそんなことを言って……。


この人は、私にいちいち甘い言葉を言わないと気がすまないのかしら?


ってやだ、変に意識し始めたらまた身体が熱くなってきた……。




ダメよ、落ち着くのよ私。


深呼吸深呼吸。


ひっひっふー、ひっひっふーと。


よし。




「ヴェイン、今日は私に何の用なのですか?」




「んー? 別に用なんてないさ」




「はあ? なら、用もないのに話しかけないでくださいよ」




「想い人へ話しかけるのに、いちいち理由なんて必要ないさ」




うばああああっ!


あわわわわわっ!




またそんなイケメンの放つ甘ったるいお言葉を聞いてしまったら……私。


マズイわ!


このままじゃ私、ヴェインへの耐性HPが底を尽きてしまうわ!


このままヴェインに一発KOされてしまう。




そしたら私は、ヴェインの手中にまんまと引っかかってしまうわ。


まるで蜘蛛の巣に捕まった蝶にようなことになってしまうのよ……。




アワアワとしいる私に構わず、ヴェインはなおも私に話しかけてきた。




「ミシェルあれから足の具合はどうだい?」




「お、おお、おかげ様で……もうすっかり大丈夫ですよ」




「良かった……。ミシェルの足が怪我をした時はとても心配したよ。でも、こうして元気そうなようで安心したよ」




「そそ、それはそれは、ご安心頂けたようで何よりですわ……」




「ああ、本当に良かった。君は俺の”とても特別”な人だからね。そんな君の元気な姿をみれるのが、俺の一番のエネルギー源なんだよ」




ああああああううううううっー!


ダメだ私……。


もう持たない。


ヴェインへの耐性HPがどんどん減っていってる音が聞こえる。




こんなのもう、ヴェインの顔を直視なんてできないじゃない!




先ほどから黙ってみていたリコが「毎度いつもご馳走様です」と、デジャブ感のある一言を呟いた。




またリコに頂かれてしまったー!




リコはニマニマとした笑みを浮かべ、私たちに「もうお二人とも、末永くお幸せに!」と、親指を上に立てながらそう言ってきた。




リコそれは気がはやすぎるし、私は王子と結ばれる……いや、その予定だから!


私にはこんなデンジャラスな恋をする勇気はないのよ!




自分の思考キャパを遥かに超えている今の状況に、混乱としてきた私は、いつもの調子でその場から足早に走り去った――


のは良いのだけれど、いつぞやのようにヴェインが「ミシェル今日こそ君を逃さないよ」と言いながら追いかけてきたのだった。




ヒイイー!


やっぱりヴェインは絶対蜘蛛なんだわ!


蜘蛛みたいに糸を絡みつかせて、私のことを、最後はバクリって食べる腹積もりなのよ。


そうに違いないんだわ。


でなければ「君を逃さないよ」なんて言いませんもの。


ヴェインは私に狙いを定めて捕食しようとしている蜘蛛なのだ。




そんなモンスターからは逃げなきゃ。


っていつまで追いかけてくるのよー!?




ヴェインは、ドドドドっという音を出しながら私のことを追いかけて来ている。




ってはやっ!


このままじゃ追いつかれちゃう!




逃げなきゃ。


でもどこへ?




外に出てそのまま家に帰ってしまおうかしら。


いやでも、荷物を教室に置いてきてしまった。


どのみち校舎の中を逃げ回るのにも限界がある。




なら一旦外に出て、安全を確保出来しだい、教室に戻ってさっさと帰るのが一番でしょう。




ということで、校舎の玄関で靴を履き替え外に進路を変えたのだった。




ゼーゼーと息が上がりながら、校庭の方へと私はきていた。




――そこで走っていた私は、そこにいた誰かにぶつかってしまいました。




「いたた……。ってごめんなさい! 私ったらちゃんと前を見ずに……」




「いえ、気にしていませんよ」




そう優しく言ってくれたのは、あのアルバート様だったのでした……。

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