3話:現状把握-2

(改めて広すぎだなこのステーション)


 小型作業用ドローンを稼働させて4日。まだ完全にとはいかないものの、残っている物資状況の把握や環境把握は概ね整ってきた。


 残っている物資の中で一番多いのは食料と飲料水。ほとんどは缶詰系だが、種類は多くないが大人100人がゆうに1年生活できるほどの量がある。消費期限も約2000日と日持ちもばっちり。……まあ、今の俺にとってはかけらも役に立たない代物ではあるのだが。


 次点は艦船用の装甲材。これも結構な量があるものの、肝心の工廠が動いていないのであんまり意味はない。ナノマシンで無理やりくっつけることは出来るが、ガワだけ貼り付けてなんにもならないしなぁ。他にも艦船や戦闘機を製造・修理するための資材が色々残ってはいるもののやはり工廠が動いてないのが痛く、今のところ役に立つ感じは無い。


 艦船用装甲材をバラして作業用機械の復旧に使えないかと思ったが、装甲に使われている素材の性質上作業用機械修復のための精密な加工が難しく断念した。大掛かりな施設があれば可能なのだが、その大掛かりな施設を復旧したくて頭を悩ませているわけだしね。


 ただ、艦船用素材を用いても問題ない施設というのは残っていた。別の意味にはなるが、スクラップ再生工場である。これはその名の通りすでに使えなくなった部品や金属材をまとめて破砕機でスクラップにし、その後分解機と再生機を用いて指定した材質を吐き出すものだ。


 幸いにもここは手づかずでそのまま利用できる。あくまでもここで生産可能なのは資材で合って電子部品は作れないが、各種機械の修復用資材を作り出すには十分なはずだ。幸いにもデブリは山ほどあるので、在庫には困らないだろう。問題はスクラップ再生工場に資材を持ち込むための手が足りないところだ。4機の宙域作業用ドローンを全力稼働させねば。


 上手いことここで資材を作れるなら電子部品工場に回して各モジュールの機能修復もできるはず。この時代の電子基板の基礎であるGRシステム(generic rewritable System)は生産できるから、その間に小型ドローンは各作業機械の損傷スキャンに回して各モジュールの設計図と比較して損傷箇所を正確に割り出せば修復も早そうだ。


 はず、ばかりだが……とりあえず道筋は出来たのでしばらくは忙しく取り組むことが出来そうだ。どこかで引っかかったらまたその時に考えればいいだろう。


(しかし、人がいないというのは寂しいものだなぁ)


 人は孤独に耐えることが云々みたいな話を聞いたことがあるが、この広い空間にぽつーんと浮いているだけというのは実際寂しい。かといって定点軍事拠点として建設されたこのステーションには移動能力なんてものは無い。反重力装置を用いた姿勢制御・位置固定システムはあるが。なのでここから移動して人に会いに行くこともできない。他の拠点データとかも削除されてるからどっちに行けば人に会えるかとかもわからないし。


 そもそもとして、今の自分は宇宙ステーションだ。修復とか製造とか、軌道に乗って整えば無人運用も視野に入れられるとは思うが、無人運用して何をするんだよって話である。例えば軍備を整えても戦う相手がいなきゃどうしようもない。


 というか、戦う相手が出来てしまうこと自体がまずいんだよな。負けて非道な奴らに占拠されるのはもちろん、下手に勝って大規模な戦力に目を付けられても困る。まあ占拠されるわけにはいかないという点で後々結局自衛用の戦力は用意しないといけなくなりそうなのはそうなんだが……。


 人に会いたい。しかし面倒ごとは避けたい。難しい話だ。


(どっかに善寄りで俺を蔑ろにせず相談しあえてそこそこ戦力あって他の人間とのコネクションも繋げるようなやつ、いないもんかなー)


 まあそんなのがいたとして、こんなどこともわからん宙域に飛んできて偶然俺と出会う、なんてことがあったとしたら……。


(それはきっと運命……なんてね。まずは人事を尽くすとしますか)


 そう結論付け、地道なデブリ拾いを続けることにするのであった。

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