2話:現状把握
おっけー、とにかくほぼほぼ壊れていることはわかった。とりあえず列挙していこう。
破損し動かないモジュール
第一、第三ドック(艦の発着場と応急修理を兼ねた施設。駆逐艦や輸送艦といった小型艦が使う場所だ。発着場部分が全部壊されている)
第一、第二中型艦ドック(上に同じ。巡洋艦や大型輸送艦、宙母が使う。そこに搭載されている艦載機を修理するためか、第一工廠と近い位置に配置されている)
大型艦ドック(戦艦や大型宙母が使う。第二工廠に近い位置)
第一、第二工廠(機体を整備や製造、開発する場所だったはず。中の施設は丹念に壊されているようで、機能は望むべくもない)
第一~第四防衛プラットフォーム(多数の砲台と小型機の発着ドックが取り付けられた防衛用設備。中からではなく外からの攻撃で丹念に破壊されているようで、修復にはどれだけかかるやら……)
居住区画(このステーションで働く職員や停泊した艦船に搭乗する軍人が住む区画。当然ながら生体反応は無い)
ホール、通路、商店、レストラン、大気精製室、管理センター、その他諸々(ランドルト環系通路の中身概ね全部。ステーション運営に必要そうな機械は壊されているようだが、調理場など重要度の低いものは電気を通せば使えそうだ)
ナノマシン精製施設(修復用と医療用の2種を作れるが、これも丹念に破壊されている)
生きているモジュール
コンテナ倉庫(電気さえ通せば完全に機能する、中身に何か無いかな)
液体保管用倉庫(こちらも生きている。ただ優先度は低めか)
第二ドック(破壊に使った爆薬か何かが足りなかったのか、小型艦が発着可能なドックが2つとドローン発着用ドックが生きている他、未起動の小型作業用ドローンが2機、宙域作業用ドローンが4機残っている)
太陽光発電施設(そのまま。充電済のエネルギーセルも複数のサイズで残っており、同施設に置かれている運搬用ドローンも使えば中枢システム含めて電力確保は問題無さそう)
その他生産施設(消耗品の食糧や水、作業用ドローンや各種電子部品を生産するためのもの。中の機械も壊されている様子はなく電力を入れれば動くらしい)
ううーん……なるほど。この現状とここが軍用施設であることを考えると、なんとなく背景がなんとなく見えてくる。
おそらくは敵の攻撃によってステーションを放棄せざるを得なくなり、戦闘に関係する施設を優先的に破壊したものの、途中で破壊に必要な物資が足りなくなったというところだろうか。そうなると敵に制圧されていないのが不思議だが……敵側も損害が大きくここを占拠するだけの人員が足りなかったとか?
軽くログを見てみたが、例えばこの日何が起きたとかは記録されておらず、このステーションの稼働データしか残っていない。日報とかのやり取りは別口で行っていたんだろうか。この辺は機械の泣き所というべきか。てかデータも色々消されているっぽくて色々歯抜けだ。削除といえばなんかパソコンだとゴミ箱に入れて消すだけだと駄目みたいな話もあるが、流石軍用だけあってその辺はきっちり消えてる。丁寧な仕事しやがって。
モジュールや戦闘機の設計図みたいなのはあるのでこれ使っての建造もできそうだが……どうもここに残っている設計図はどれも旧型のものっぽいので、残しておく価値が無いとされたんだろう。戦闘機の設計図の日付30年前とかになってるし。まあそもそも工廠動いてないし取らぬ狸のなんとやらだなこれは。
まあ、無いものは仕方ないのでこれからをどうするか考えていこう。特に修復用ナノマシンは少ないので優先度は考えなければならん。生産施設が動いているのがありがたいのでこれを使うことにはなると思うのだが、そうなると倉庫の現状把握が先だな。
とりあえず第二ドックの小型ドローンを使って各種モジュールを探検させるか。秘密基地の探検みたいでわくわくしてくる。
小型ドローンはカメラ機能も付いているようなのでついに俺も未来世界をその目で堪能できるらしい。胸が高鳴るな。えーと命令系統はこれで……ええと? カメラ機能は? これ?
(おお……)
ONにしたドローンのカメラ機能で飛び込んできた景色は、まさに近未来世界の港だ。
遠くに見える強力な光を放つ恒星、間近に見える青いガス?に包まれた惑星、目線を落とせば航空機着艦用のドックがずらりと立ち並ぶ。前世じゃそれこそゲームか映画みたいな創作でしか見たこと無いようなSFの世界だ。
まあ。
(宙はデブリまみれ、ドックは爆破痕でぐちゃぐちゃじゃあ、感動は半減だな……)
戦闘があったからか艦船や戦闘機、よくわからん機械の残骸がそこら中に漂っており、お世辞にも景色がいいとは言えない。ゴミに囲まれてるわけだしね。ドックも焦げ跡と破損だらけ、流れ着いたデブリが散らかっており汚い印象が強い。復旧には時間がかかりそうだというか、これでよく一部とはいえ機能が生きているもんである。
(とにかくドローンを内部に通してモジュール内を確認せねば)
消えたデータの中には各モジュールの在庫管理表なども含まれており、現状どこにどれくらいの量の資材が残っているかがさっぱりわからない。時間はかかるだろうが、全モジュールがどうなっているのか隅々まで探索する必要がある。まあこんなデブリまみれの宙域に近づいてくる人もいないだろうし、のんびりゆっくりやるとしよう。
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