1章 邂逅編

1話:目覚め

……

システムチェック……

……

……

……

チェック完了

中枢システム、諢丞袖縺ョ縺ゅk譁?ュ怜?縺ァ縺ッ縺ェ縺?hで起動します

警告:このデータはレギュレーションを満たしていません

このデータでの起動には予期しないエラーが発生する可能性があります

起動しますか?

>Y/N

…………





 目が覚めた。いや、目が覚めたという表現は正しくないかもしれない。なぜなら目というものがおそらく存在しないからである。

ともかく、意識というものが覚醒した。のだが、どうも肉体が無いようで何かを動かすということができない。

耳も無いので何かを聞くこともできないし、鼻も無いから匂いも感じない。


(俺どうなってんのー)


 答える声は無いがなんか脳内、いや脳も多分無いからあくまでも感覚的な話なのだが、脳内を検索するイメージが走った。


(自立思考AI搭載型軍用宇宙ステーション計画第三号、「菊花」……なんじゃそりゃ)


 どうも中国語っぽい言語で表記されており、自分も中国製だからか読めはするものの違和感が凄い。あとで言語サポートを日本語に変えておこう。

どうやら自分が今いるのは宇宙ステーション「菊花」とやらの制御コンピュータの中らしい。正確に言えば自分自身が制御コンピュータそのものであるからそこにいるというのも表現としてはおかしいのであるが、如何せん人間だった時の記憶が半端に残っているせいか、上手く表現ができない。そのうち慣れるだろうか。

……ん? 人間だった時の?


(そうだ、俺は元は人間だったはずだ。細かい部分の記憶は無いが……)


 名前などのパーソナルデータは全然思い出せないが、平成とか令和とか、その辺の年代を生きた日本人成人男性であるような記憶がなんとなく残っている。

一応転生……ということになる……のか? 当時は確かネットでそういうの流行っていたが、まさか自分が体験することになるとは思ってもいなかった。死んだ記憶とかも無いし今を生きていると定義できるかも微妙なので転「生」なのかは疑問が残るとこだが。


(まあ実際のとこ、この記憶も本当のものじゃなくて、そういう記憶を形成したただのデータである可能性も否定できないんだけども)


 とはいえそんなことは考えるだけ無駄なので一旦脇に置いておく。確定できるだけのデータはどうも自分の脳内……この場合はストレージ? とにかくその中には入ってないようだし、出自が確定したところでじゃあ何か意味があるのかと言われると微妙だし。


(まあとにかく自意識に目覚めたからには、宇宙ステーションとして生きていくしかあるまい)


 自分でも驚くほど現在の状況を受け入れることが出来ている。前世の自分はだいぶ図太い性格だったのかもしれない。


(さしあたってしなければならないのは……とりあえずはこのステーションそのものの現状把握か)


 とにかく今の自分に何ができるのかがわからなければ何もできない。まずはこのステーションの構造を把握することにする。

さっきと同じようなイメージで脳内を検索して……ええと、これか?


(ふむ……基礎構造として中枢システムと通路がまずあって、それに後から肉付けしていく形式なのか)


 小惑星をくりぬいて中枢施設を形成し、そこから3本の橋を筒で出来たランドルト環状施設に繋いでいる。この筒は人が通るための通路や各種施設と物資運搬用のコンベア、送電やデータ交信用のケーブル群などで構成されているようだ。


(宇宙ステーションは俺が生きていた時代だと搭乗人数も1桁くらいの実験的なものってイメージあったけど、軍用に使えるほど発展してるならかなり未来なのか?)


 気になったのでそっちを調べてみることにする。さっきのステーション計画の資料を漁れば日付とか出てくるだろう多分。

えーとなになに……。


(…………西暦、2501年に運用開始? 500年後と来たか)


 500年。500年か……。

 時代の規模がでかすぎて上手くイメージできない。2020年代から見て500年前っていうと戦国時代よりちょっと前くらいか? 歴史の授業で習った気がしたが全然覚えてない。

まあとにかく、めっちゃ未来だということは理解できた。こりゃ知識チートとはいかなそうだ。なんとなく察してたけど。


 構造把握の続きに戻る。軍用ステーションということで規模はかなりのものだ。中枢システムのある小惑星はざっくり縦4km最大半径2kmの雫型だし、その外側に繋がれている筒状通路は太さが半径13m、ランドルト環は内円半径が6kmとか書いてある。これに各種モジュールが付いているんだからもはや要塞みたいなもんだろう。

次はモジュールの把握に移りたいのだが……。


(エラー? これは……送電システムが死んでるのか?)


 ランドルト環に繋がる3本の橋から先に繋がらないので干渉できなくなっている。エラーの原因としてはどうやら送電用ケーブルが橋の途中で切れているようで、現状を把握するためのアクセスが出来なくなっている。えーこれどうすんの?

とにかくこれを解消しないとどうにもならないので中枢システム内で出来ることを探していく。機能検索みたいな感じでいいんだろうか?


(検索してみたら色々惹かれるようなシステムとか解説もあるが……とにかく今は修復関連……あ、これか?)


 機能修復用ナノマシン。例えば千切れたケーブルや装甲の隙間などにくっつけた後自身の構造を変化・固定することで修理する接着剤のような役割を果たすらしい。それこそSFでしか見たこと無かったが、そういうのもある辺りすげーや未来。

ただ、どうやら中枢システム内に保管されている量は少ないらしい。この分だとあまり無駄遣いはできないから、1本分の送電用ケーブルを修復してあとは追々って感じにするか。

ではナノマシンを……これどうやって動かすの? あ、専用の命令系統があってそこから指示を出す? へぇなるほど。じゃあこれで……。量? いやわかんねーよとりあえず目分量で、余ったらその分は戻ってきてもらって……。


 修復が完了したらしい。到着までも数秒なら修復も数秒だった。すげぇや未来技術。

さてケーブルが修復されたなら送電システムも復旧できるはず。電力はどうやら結構残っているようだから、稼働できる範囲は全部チェックしていこう。えーと……。




…………

送電システムを復旧します

各モジュールをスキャンします

第一ドックの機能を復旧します……エラー:破損により第一ドックは機能を停止しています

第二ドックの機能を復旧します……エラー:一部が破損しています

第三ドックの機能を復旧します……エラー:破損により第三ドックは機能を停止しています

大型ドックの機能を復旧します……エラー:破損により大型ドックは機能を停止しています

第一中型ドックの機能を復旧します……エラー:破損により第一中型ドックは機能を停止しています

第二中型ドックの機能を復旧します……エラー:破損により第二中型ドックは機能を停止しています

第一工廠の機能を復旧します……エラー:破損により第一工廠は機能を停止しています

第二工廠の機能を復旧します……エラー:破損により第二工廠は機能を停止しています

倉庫モジュールの機能を復旧します……

居住区画の機能を復旧します……エラー:破損により居住区画は機能を停止しています

訓練施設の機能を復旧します……エラー:破損により訓練施設は機能を停止しています

ホールの機能を復旧します……エラー:破損によりホールは機能を停止しています

……

……




 ……ほぼほぼ動かんやんけ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る