第2話

村に着いたのはすぐあとの事だった、あのデカさのグラスボアを運ぶなら本当は村の男全員で切り分けるなどで何往復も前提とするレベルの重さだ、それをこの男は軽石でも持つかのごとく1人で担ぎやがった。

村に入ったと同時に見張りのやつが声をかけてくれたが後ろのグラスボアを運ぶアインを見て空いた口が塞がらない状態になっていた、そりゃそうだ。

俺だって考えることをやめたおかげでまだ何とかなっている。

「えっと、とりあえずデカすぎるから広場に置いて処理でもいいか?」

「...(コクッ)」

「(き、気まずい...)」

仏頂面なのと寡黙気味ってのもあって全然何考えているか分からねぇ。

「案内はこれで完了だな、日も傾いて来たし2人とも村で休んでいくか?」

「ありがたい申し出だな、可能であれば村の重役にお世話になるのだから挨拶をしておきたい。案内は可能か?」

「あー、それくらいなら呼んでくるさ。ここで待ってな」






静かに待つのは性分ではない。反応は微妙だろうが話でもして待っているか。

「食料と泊まる場所の確保が出来たか、どうやら私たちは運がいいようだなアイン」

「...正直不要だがな」

「確かに私たちには休息も食事も不要だ、ただこれらが娯楽としてないと暇だぞ?」

「...私にとっては今更だがな」

「...それもそうか」

そう、この体は休息も食事も、他にも様々なこと人間として必要な活動がどれも不要なのである。

「まぁ長い時のささやかな暇つぶしだ、付き合ってくれよ?」

「...ふん、今更言う必要があるか?」

「ないな!」

ケラケラと笑う

そう和んでいると視線を感じる。

1つ、2つ、3つ。

3人か。

「...アイン、せっかくだし待ってる間解体でもしておこうか」

わざとらしくそう言うと察したのか

「...なるほど、たしかにな」

1歩だけアインから離れておく。

そうすれば勝手に彼は判断して始める。

ロングソードを抜き構える。

一閃。

瞬間の事だがネタは分かってる私からしたらタネを知ってるマジックを見てるような感覚だ、ただ視線の主達にとっては驚愕の出来事だろう、剣を一振りして鞘に収めただけなのに部位ごとに綺麗に切れるのだから。

「「「!!!」」」

「ヒュウ、お見事。」

「...ふん」

「さて、隠れてないで出ておいで、少年たちよ」

視線の主達の方を向き一言。物陰から出てきたのは幼い子供達。

「すっげぇ!!お兄ちゃん剣振っただけで全部切れちゃった!」

「(コクコク)」

「母ちゃんの言ってた''奇跡''みたいだ!」

一瞬のことだったが聞き逃せなかった。

ー''奇跡''ー

かつての神達が使っていた技、時には天から光を、雷を、地から溶岩を、海から大津波を。

人への試練、裁き、様々な言い方はあるが結局のところは命を刈り取るための技だ。


まさかまた聞くことになるとはな。


「...少年、お母さんから聞いた奇跡ってのは?」

「僕のお母さん、この森の奥の遺跡を調査してる『こーこがくしゃ』?ってお仕事なんだって!ふるーい本に昔の神様のお話が書いてあるんだって!」

「そうか、なら後でお話をお母さんに聞きに行ってもいいかな?」

「後で?いいよ!先に家に帰ってお母さんに言っておくね!」

「ああ、頼んだよ」

予定も決まったことだ、さっさと飯の用意して話を聞きに行こうとするか。

すっとアインの方を振り向くと

「お兄ちゃんデッケー!」

「(グイグイ)」

他のちびっこ2人に揉みくちゃにされていた。

「ふふふっ、君は子供達に怖がられやすいのに随分好かれているじゃないか。」

「...何とかしろ」

「面白いからこのままにさせてもらうな。」

なかなか滑稽な困り顔だ。

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