言の葉

小悪魔はく

紡ぐことが出来ない言の葉

「じゃあね」


この言葉ことばをあと何回なんかいきみつたえられるだろうか。ぼくはもうすこししたらぬ。ちいさいころからかかえていた、やまいによって。今年ことしふゆこせるせるかどうかわからないと病院びょういん先生せんせいわれた。それぐらいぼく病気びょうきおもたくてなおすことの出来できないやまいだ。


ぼくにはおさななじみがいる。可愛かわいくて華奢きゃしゃからだをしているおんなくろかみにキラキラと宝石ほうせきのようにかがやひとみ。そんなおさななじみがぼく大好だいすきだ。

でも、この気持きもちをきみつたえたことは1もない。なぜなら、ぼくはもうぬことがまっているから。きみにこの気持きもちをつたえたところで一緒いっしょにいる期間きかんみじかいことはかっている。それに、きみはきっと病気持びょうきもちのぼくなんかすききじゃないから。それでも、きみかおるたびにおもいがあふれてまらない。きみのことをきしめてきみあいつたえたい。きみきだと。この一番愛いちばんあいしていると、そうつたえたい。


ながれ、ぼくからだおもうようにうごかなくなった。きみ一緒いっしょに、出掛でかけることあそこともできなくなった。病院びょういんのベッドによこたわるぼくきみ心配しんぱいそうにつめる。キラキラとかがやいていたひとみ不安ふあんいろかがやいてる。それでも、ぼくきみ本当ほんとうのことをつたえることはできない。本当ほんとうのことをつたえてしまえば、きっときみいてしまうから。でも、心配いんぱいはかけたくないからバレない程度ていどうそをつく。ぼくうそいて不安ふあんいろぬぐえないひとみのまま、ぼくはなしうなづいた。きみはそれでいい。なにらなくていい。ぼくのこのおもいはむねにしまって今日きょうもまたきみうそをつく。


今日きょうひさしぶりにゆめた。いつもゆめみるることがないぼくひさしぶりにゆめたのだ。でもそのゆめたのしいゆめではない。だってきみいているゆめだから。どうしていているの。わけかせて。きみいているところをると、ぼくまでかなしくなってしまう。むねいたんでしまう。おねがいだからかないで、きみがおなんかより屈託くったくのない笑顔えがおわらっているほうがとても可愛かわいくてぼく大好だいすきだ。そのおもいをめて、きみばす。なぐさめようとしたそのきみからだをすりけた。おかしい。きみさわれない。なぐさめてあげたいのに。でてあげたいのに。そのとききみさけぶ。


『どうしてんでしまったの。ねぇ!』


くしゃくしゃのがお嗚咽混おえつまじりのこえぼくうったえる。そこではじめてづいた。


━━━━━━━そうか、ぼくんだんだ。


ごめんね。んじゃってごめん。きみ一緒いっしょにいれなくてごめん。かせてしまってごめん。きみつたえたいことがたくさんあるんだ。きみわらったそのかおきとか、勉強べんきょうができるくせに、ちょっとドジなところとか、自分じぶんのことはつぎまわりの人達ひとたち優先ゆうせんするところとか。


あと、きみきとか。


でも、ぼくおもいをらなくてよかったのかもしれない。

このおもいは、きっときみこまらせてしまうから。


ふときみのそばをると綺麗きれい花束はなたば一通いっつう手紙てがみちていた。ちた衝撃しょうげき手紙てがみ封筒ふうとうからている。


大好だいすきです。わたしってください。

返事へんじは、はいかYES《イエス》以外いがいけません。

了承りょうしょうください。』




━━━━━━━━━ぼくはじめて後悔こうかいした。

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言の葉 小悪魔はく @kanzakiior

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