七合目 ササの決意と巧の想い 2
「今日はすっごく楽しかったです」
朝陽と別れてからの帰り道、ササは感慨深く呟いた。
そんな彼女を見ていると、この出会いをくれた父親に対して、改めて感謝しないといけないなと思う。
「そうだな。こんなに楽しい日々は初めてだ」
「それは日本酒と出会ったからですか? それとも、私と出会ったからですか?」
「両方かな」
巧の素直な言葉にササはキョトンとしてしまう。同時に思わず心がドキッとしてしまったことを悟られてはいけない。
「私も巧さんと出会えてよかったです」
ササはにやける口元を隠すために、俯きながら、巧との距離を詰め、表情を整えてから顔を上げた。
「だから、私のこと、もっともっと好きになって下さいね」
しなやかに、ふんわりいい匂い香るほどに近づかれながら瞳を覗き込まれ、その可憐で澄んだ瞳に思わずどきりと身構えてしまう。
「な、なにいってんだよ」
思わずどもって、明後日の方向を向くと、ササはケラケラ笑いながら、「もちろん私とは日本酒のことですよ」と言った。
「わかってるよ」
からかわれているとわかっていても、相手に笑われる反応をしてしまう自分に少しイラッとしてしまう。
「そういうことにしておきます。でも、これだけは言わせて下さい」
ササは巧の正面に立ち、相手の瞳を見つめると、高らかと人差し指を天に向けて宣言した。
「私がいることで巧さんを幸せにしてみせます。消えてくれなんていっても、ずっとあなたのそばからは離れませんので、覚悟していて下さいね」
そこにはとても可愛らしい笑顔を浮かべ、新たな使命に燃える少女の姿があった。
カンパイッ! ~お酒は二十歳になってから!~ 小鳩かもめ @kamome1106
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます