一合目 日本酒との出会い 2

「ありえない、ありえません!」

 夢の中にしては相手の声がはっきりと聞こえる。

「どうして? どうして、こんな世の中になってしまったんですか!」

 姿は見えないが、声色からして、なにかに怒っているようだ。

「あなたもあなたです。勝手な推測で私たちのことを判断しないでください」

 真っ暗やみの中で、声の主ははっきりと自分に敵意を向けてきた。

「せっかくの、記念すべき誕生日を祝いにきた私は非常に不愉快です」

 声は一通り文句を言った後、たっぷりと時間を置いて、「許さない、絶対に許しません」と怨念めいた言葉を発する。

「覚悟していてくださいね!」

 はっきりとした、その言葉は巧の脳を鷲づかみにした。

 その瞬間、巧の意識は覚醒する。このまま眠っていては危ない。本能が告げていた。

 その予感は的中する。まさか、目を開けると、いきなり生命の危機に瀕しているとは夢にも思っていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る