12.今日も私はひなたぼっこをする
数日後、老婆は病院で死んだらしい。
老婆の姿は見ていないが真昼がそう言っていたし、真昼からは老婆の匂いと死の匂いが入り混じっていた。ちなみにチビは懐いてもいなかった癖にしょんぼりしていた。
近くで葬儀が行われているという噂だけ聞いて私は様子を伺ってみたが、真昼は見慣れない人間たちに囲まれてどぎまぎしていたが滞りなく行われたらしい。
それからしばらくして近所の空き地は新しい家を建てようと工事が始まった。だがこの家は残し真昼は今も尚そこで一人暮らしている。
人間は死者を尊ぶのだという。仏間にある仏壇もそのための一つで、この家にも昔からそれが置かれている。その仏壇には数年前に死んだ爺の写真と新しく老婆の写真が置かれていた。
「真昼ー来たよー!」
「わあ、いらっしゃーい」
玄関の方から小娘たちの声が聞こえ、縁側で微睡んでいた私はあくびをした。
またやかましい小娘達がやってくるのかと思うと少々うんざりする。
昨日だってきたばかりなのに今日もやって来ては騒がしくおしゃべりをしている。キマツシケンがどうのこうのと言っていたがそのシケンというのはいつになったら終わるのだ。
「お邪魔しまーす。あ、ミケちゃんとクロちゃんこんにちはー!」
『また来たのか、やかましい』
「なでるのも程々にしてね」
「はーい」
真昼も私が嫌がっているのが分かっているなら止めろと訴えても、彼女なりの嫌がらせらしい。本当にうんざりする。
真昼の友人が仏間から去り、入れ替わるようにチビクロが私の様子を見に来た。
チビはチビと呼ぶには体も大きくなり、真昼もクロと呼ぶようになった頃に発情期を迎えた。その後に去勢手術で見事
『おばあちゃん?』
『問題ない。しばらくしたら縁側で寝る』
『分かった』
老婆がこの家を去ってからというもの、毎日仏間に置いてある写真の老婆を見にこの家に来ていたが、冬になり寒さに耐えられなくなってからというもの私は結局この家で暮らすようになった。
「ミケはホントこの場所が好きだね」
「にゃ」
この小娘の思う壺であるのは癪だが、私はこの家が好きだ。
窓から差し込む陽だまりに、私は今日もうとうとと眠る。
死に場所にはいられなくなったし、飼い猫になってしまったせいで寿命が延びてしまった。まあいい、死に場所なんてまた今度探せばいい。
でも、もし自分が死ぬ時が来たあかつきには、老婆が迎えに来てくれるといいな。
――――――
ここまで読んでくださりありがとうございました。
私は三毛猫である 伊藤 猫 @1216nyanko
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