幕間
美奈は甲子園を目指すなら神英と決めていた。これは聖歌にとっては幸運なことだった。神英の練習を見学する機会があったが、今のレギュラー捕手なら、自分はすんなりとレギュラーを取れるという自信があった。美奈の相棒でいられる期間は延長したけれども、それに伴う新しい問題が出てきた。
そう、どうすれば神英が甲子園に出られるのかを考えなければいけなかった。
きらりのように春夏一度づつでもいいのなら、いろいろと長期的なスパンでことが考えられるが、美奈はすべての大会で優勝すると言っていた。もちろん、美奈の実力はよく理解しているのだが、野球は一人でなく、九人でやるもの。そういう意味では、神英の選手たちは小粒な感が否めない。
新入生のプラスアルファを期待するも、レギュラーを掴めそうなのは自分と美奈と、美奈を追って神英に入学してきた岳夫くらい。これでは、強豪校に太刀打ちできない。頭を悩ます聖歌だったが、そこに思いもよらぬ部員がやってきた。
その男の名は高松塁。入学当初はブランクを感じさせる打撃だったが、天才と言われてきたのは伊達ではなかった。
正直、聖歌は塁のことをあまり好きではなかった。理由は美奈に挫折を味合わせた張本人であったから。けれど、塁がいなくても、いつか美奈にはあんな状況がきていたと思う。それが早かったのは感謝すべきことなのかもしれないと考え直す。なにより、塁の加入によりこのチームなら美奈の目標まで行けるかもしれないという希望が鮮明に持てるようになった。
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