第2話 夏に向けて
久々の感触だった。忘れかけていた、それでいて、求めてやまなかった感触。
あの場でずっとバットを振りたかった。今のスイングを自分の身体に染み込ませたかった。
家に帰ると押入れの中に押し込んだバットを引っ張り出す。もう使うことはないと決めたはずが、それでも捨てなかったのは、記念か未練か。
グリップを握り、今まではスイングの形、軌道、自分の感覚を大事に素振りをしていたが、今日はなにも考えず力いっぱいスイングした。もちろん、形などあったものではない。このスイングがいいのか悪いのかもわからない。怪我をした肘も痛む。
それでも気持ちのいい汗をかいた。
その中で自分がどうしたいのか考える。
自分が野球を続けてはいけないと思っていた。けれど、久しぶりに面と向かって野球をやれと言われた。もう自分のピークは終わったと思っていたが、また戻れる可能性が示された。ならば、そこに向かって努力をするべきではないか。
中学時代のチームメートの言葉が頭をよぎる。
「お前のしたいようにしろよ。今は意固地になってるだけかもしんないからさ。ただ、俺たちはまた野球してほしいって思ってるからな」
もう一度、頑張ってみるか。
簡単に揺らいでしまった決意を自分の中に落とし込んで、高校生活の覚悟を決めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます