第1話 運命の出会い
二人の少女が校門をくぐり教室へと向かう。それ自体はよくある光景だろう。
「聖ちゃん、なんか、私たち、注目されてない?」
屈みながら小声で隣を歩く少女に聞いた。
「まぁ、気のせいではないなの」
「やっぱりかぁ。みんな、どこで調べてくるんだろうね。それにしてもお姉ちゃんはすごいや」
「美奈はわかってないなの?」
「なにが?」
「わからないならいいの」
美奈と呼ばれた少女が首を傾げたので、背の低い少女、西野聖歌は溜め息を吐いた。美奈が感じている視線の主はほとんどが男子生徒。なんの飾り気がなくても、これだけの視線を集めてしまうのだから、もうちょっと自分の容姿に頓着してくれれば、その辺のアイドルにだって余裕で勝てるのだろう。しかし、このバカに言っても「そんなことより大事なことがあるからいいよ」というだけなのはわかっている。もちろん、そんな美奈を聖歌は好ましく思っているので、口にはしない。
それに、美奈が容姿以外でも注目を受けるのは時間の問題だというのも過去の経験上、聖歌はわかっていた。
「そんなことより、聖ちゃん。知ってる? この学校にあの、高松塁がいるんだって」
「知ってるなの」
そこから二人の話題は一人の男子生徒の話題になったが、そこに女子高生特有の甘酸っぱい会話はない。
これで四番は埋まるだの、打撃はいいけど、守備力はどうだだの、周囲が聞けばなんでこんな女の子が?と、首を傾げる内容だった。
それもそのはず。彼女がなによりも大事にしているのは野球。この学校へも甲子園で優勝を目指すことに青春をかけるため入学してきた。
「今年は私がいて、聖ちゃんもいて、岳夫も来た。それで高松塁でしょ。今年の夏からフルスピードで駆け抜けられるんじゃないかな」
美奈は楽しそうに語るが、「そんな簡単なものじゃないと思うの」と聖歌が釘を差す。
「わかってるって。甲子園に出るのはそんな簡単じゃないことくらい。お姉ちゃんだって、夏は一回しか出れなかったし」
「そういうことじゃないなの」
発言の意図があまり伝わらないことに聖歌は苦笑するしかなかった。
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