第6話 同期と歩み

「あなたについて行く」そう誓ってすぐに私の意識は落ちた。あまりの急展開に興奮状態になったのだろう。


目が覚めたときは自分の家の布団の中だった。


携帯にメールが1通来ていた。送り主は夜影カイ。


From:夜影カイ

To:如月ぽみ

『今すぐアバターでパソコン開け』


よく分からないが開こう。疲労が溜まっていて考えることもなく素直に従った。

たしかにパソコンには会議の招待があった。非公開の会議。つまり配信ではなく、社員としてと会議だろう。


『参加』をクリックした。


『あー!如月さん来たぁぁー!』

『遅いんだよ。田舎者め。』

『これが...如月ぽみ。姉さん知ってましたか?』

『...見たことあるわ。』


私の他に『夜影カイ』、『田中。』、『破魔弓ひな』、『破魔弓ひさ』が会議に参加していた。

全員第5期生のVTuver。もちろんみんな本人が登場しているのではなく、アバターで参加している。バーチャルアバター特有の少し不自然な動きをしている。


『おっつかれ様〜。今5期生でバーチャル打ち上げしてるとこよ!あんまりまだ交流ないやん?やから仲良く喋ろうなー。』


『え、あ、はい。』


そう関西弁を交えて喋っているのは『田中。』オレンジ色の短髪。社会人キャラだが、大人というよりチャラい大学生っぽい。スーツを来ているからは就活中の大学生にそっくりだ。今の私のテンションとは真逆だ。


『田中。はうるさいんだよ。もうちょっと静かに出来ないのか?』


『ごめん、ごめーん。ま、全員揃ったわけやし、軽く自己紹介せぇへん?名前と世界観、戦闘スキルとか。


とりあえず俺から。『田中。』です。一応サラリーマンっちゅう設定やけど、マジな年齢的にはもうちょい下や。大学は行ってないで。

情報収集が得意や。だいたい5、6ヶ国語が話せるで。日常会話レベルやったらもうちょい喋れる。

日本の方便は制覇してん。今は大阪で任務中やから関西弁やで。配信では標準語で喋ってるで。』


え、この流れだとスパイの話もする感じじゃん。


『次は俺。『夜影カイ』だ。バーチャルでもリアルでも17歳だ。ゲームを配信している。世界観とかは俺の動画でも見ろ。

基本的に銃を使ったり、短刀を使う接近戦が得意だな。サポート役が多いが、一人になった方が強い。』


17歳なんだ。銃も短刀もない私は何のスキルがあるんだろうね。


『姉さん、...僕らも自己紹介をしましょう。か。』

『了解したわ。...彼の名は『破魔弓ひさ』。私の...弟よ。リアルでも双子...よ。ネットとかPCに強くて、...ハッカーよ。』


『...姉さんの名は『破魔弓ひな』。僕の...姉です。僕が指示を出して、姉さんは動く。...僕と姉さんは二人で...一人だ。』


この双子はぽつりぽつり言葉を発してお互いを紹介した。


私も軽く自己紹介した。そして気になっていたことをいくつか聞いた。


『みなさんは今回の任務?をどうやって知ったの。何か知らせでも来たの?』


『あぁ、ぽみちゃんはホンマに何も知らない子かぁ。でも、ここで話すのはちょっと怖いなぁ。部屋に盗聴器あったら怖いし、パソコンになんか仕掛けられてたらダダ漏れやからなぁ。』


たしかにその通りだ。一応この事務所がスパイ事務所であることは認知した。けれど、私は何も知らない。この世界の事情も怖さも。


『やからぁ、一旦僕と会わへん?安全な場所は用意できるで。まあ、あんまり人数多いのは良くないから、他の方は遠慮してもろて。』


『たしかに。俺も破魔弓達も説明すんのはめんどくさいし、田中と如月がいいならそうしたら?』


『そやな。如月さんはどや?』


ここでハイと言えば私はスパイのことを知ってしまう。怖くて薄暗い世界かもしれない。


けど、そんな覚悟はもう済んでいる。


『ええ、よろしく!』

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