第5話 新たな世界

拝啓、田舎に住んでいるお母さん。事務所への所属が決まったときは、何の事務所か説明する前にすごい褒めてくれたよね。


ごめんなさい、その事務所、


スパイの事務所でした!!


「ってどうゆうことですか。田舎者の私でも簡単には騙されませんよ。ちゃんと本当のこと言ってください。」


海斗様は困った表情でアリアちゃん達の方を見た。


「東城ライト、耳猫アリア、夜影カイ、それぞれ今日の任務内容と報告をしろ。東城は現場の状況説明もしろ。」


「「「はっ。」」」


「耳猫アリア。監視カメラを潰す任務だったにゃ。予定通り、監視カメラには2週間前の映像を流し、今のところホテル側に侵入には気づかれてないはずにゃ。」


「夜影カイ。主に東城さんのサポートの予定だったけど、想定していたより向こうの人数が多かったから、ちょっと銃を持った。音は大丈夫。敵の制圧は完了してる。」


「東城ライト。カイと一緒に書類の入った金庫を開けるのが任務内容だったのですが、金庫の暗号がかなり長く、打ち間違えた瞬間に爆破する仕掛けになっていました。現在は処理班が丁重に扱いながら数字を打ち込んでいるようですが、かなり時間がかかるものと予想されています。その間に援軍を呼ぶ可能性も十分にあります。」


「報告ご苦労。如月ぽえ、同僚の話を聞いて少しは信じれたか?それともまだサバイバルゲームの話をしていると思っているのか?」


「いや、口だけなら何とでも言えますし、コスプレしてるんじゃないんですか?そもそも現代の世の中にスパイだなんて聞いたことありません。」


パニック状態で目の前にいる推しに反論してしまった。


「一理ある。では、彼らの白シャツについた赤い液体にルミノールと過酸化水素を用いてルミノール反応を起こさせようか?血液なのだから、発光するはずだ。

それとも……」


そういうと海斗様はズボンの右ポケットから黒い光を放つ鉄の塊、銃らしきものを取り出した。どんなにこの会場がゴールドで染まっていても、その黒いものには一切金色は映り込まない。


「これは本物の銃だ。遊びなどではない。試しに撃ってやろうか。」


そう言って銃口を私の方へと向けてきた。銃を構えた姿も絵になる。


私を撃つのかと思いきや、海斗様はその腕を自身の真上に上げた。


ッパアァァン



ッガッシャァァァ


天井に吊り下げられていた豪華なシャンデリアが落ちてくる。私とはある程度距離があるから、3歩ほど下がれば安全だろう。

そんなことより、海斗様は?真上のシャンデリアは重量がかなりあり、下敷きになれば即死なのは誰でも分かる。自殺でもしたの?


「海斗さまぁぁあ!」


シャンデリアの破片が飛び散り、まだ少し残っている白煙のせいでよく見えない。


「うるさいぞ。俺はここにいる。」


声がする方を見る。生卵が床に落ちたかのようにシャンデリアが崩れている。


その上に繊月海斗がいた。

輝きを従えている。


「これで信じただろう。信じられないなら、次はこのホテルを破壊する。」


目は画面上と変わらない威圧感があるのに、口元は不敵な笑みが溢れている。頬が少し紅潮している。その目にはゴールドが映っている。


これが本当の繊月海斗なのか。


「信じます。もとより、一生あなたについていくと決めているのだから。」


今度は目元が緩み、フッと笑った。


「それで良い。


ようこそパフェミラ事務所へ。



ようこそ夜の世界へ!」

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