星に手を伸ばすのは

青空一星

星の光

 午後6時、星が薄っすらと見え始める頃、彼女は散歩を始めた。彼女は力強く光る星を見つけるのが好きなのだ。


 好みの星を見つけられるかなと手をルンルン振り、機嫌は上々だ。ほら、さっそく見つけた。少し目線を上げたくらいに見える星の光。あの様に一見近くに見える星というのも好ましい…


 彼女は歩く。その度に光は強くなる。まるで彼女の歩みに応えているようだ。もしかして光を間近で見られるのではないか?そんな希望を胸に、彼女は走った。


 しかし、その希望はある一定の距離に達した時、みるみると萎んでしまった。彼女が見つけたと思っていた光は星の光ではなく街灯の光だったのだ。ポールがあまりに細く、光も小さかったために勘違いを起こしてしまったようだ。


 彼女はそれが分かった途端、先程とは比べ物にならないほどのスピードで街灯に迫り、ポールをよじ登って街灯を引っ掴んだ。


 眼球へ刺さる光は痛く、その光が本物であることを理解させる。自分は偽物だと思っていた光もまた、暗闇から人々を照らす本物の光に違いなかった。


「こんな安っぽい光に…」


 彼女は街灯をポールから引き千切り、地面へ叩きつけた。パリーンとCheapチープな音が辺りに散らばる。それを確認して、やはり偽物だったと思った。彼女の思う本物ではなかったのだ。


 彼女はまた歩き出す。真上を見上げれば多くの星があった。どれだけジャンプしても、どれだけ走っても辿り着けないその光にうっとりとする。


 星の光程度では夜の暗闇を照らし、人々の道行を照らすことなどできない。そこにあると見えるだけで、それは数億年前の残り灯なのかもしれない。星は街灯の様に我々の近くで見守ってくれもしない。


 だから彼女は星に手を伸ばす。届かないと、触れないと分かっているから。近くにいない、干渉などできないと分かっているからその光を讃えることができる。手が届いてしまうのなら、その程度の存在なのだと興冷めして金星でさえ叩き落とすだろう。


 手に入れたいから歩むのだ

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星に手を伸ばすのは 青空一星 @Aozora__Star

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