第35話 神魔覚醒

 俺は会議が終わると、即座にダークエルフとベルがいる森に転移する。


「———ベル」

「あっ、優斗様! お待ちしておりました! 既にレベリングは終了しています!」


 ベルがパッと笑顔になって俺の元にタタタッとやってくる。

 その姿は飼い主の下へやってくる犬の様だった。


 ベルはこの2年で非常に強くなり、外見も成長した。

 アリシアに負けず劣らずの美貌は、誰が見ても美人だと思われるだろう。


「おっ、早かったなベル。もう少しかかると思ったんだが」

「優斗様を待たせるわけにはいきませんので! ……それで、会議はどうでしたか?」


 俺は会議での話を大雑把に説明する。

 勿論これから俺達が元幹部達の下に行くことも。


「成程……遂に人間との戦争を始めるのですね……。その際に元幹部達が好きに動かれては困ると言う事ですね」

「まぁそんな感じだ。だから今から俺達2人で幹部達をボコボコにしに行くぞ」

「分かりました! 今すぐに準備しますね!」


 ベルはそう言うと、転移で何処かへと消える。

 しかし僅か10秒程で戻ってきた。

 両手には大きな大剣を2本持っている。


「準備終わりました! それでは行きましょう! 今回は大剣で良いんですよね?」

「ああ。一応他のも持ってきているか?」

「はい! 相手は腐っても元幹部ですからね。油断は禁物ですから」


 最近ベルには色々な戦い方を教えており、今は大剣で、1ヶ月前までは素手での格闘術、その前は弓術、その前は魔法だ。

 種族的に才能は絶大で、どれもすぐに習得し、それから1ヶ月程で達人と呼ばれる域まで達してしまう。


 正直ステータスはアリシアや俺に思っているが、その内技術はどれも抜かされそうだ。

 まぁ俺的にはその方が嬉しいんだけど。

 師匠を超えるのが弟子の仕事だろう?


 この言葉は俺の師匠の最後の言葉で、俺を支えてくれた大切な言葉だ。


 おっと、感傷に浸るのはよそう。 

 

「よし、それじゃあ行くか。ベル、少し俺に掴まっていてくれ」

「? 分かりまし———たぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺はベルが身体に掴まると同時に全速力で目的地まで飛翔した。

 速度は大体雷速———秒速10万メートル程だ。

 終始ベルがあまりの速さに叫んでいたのはご愛嬌という事で。








「———着いた」

「ふぎゅ……速すぎ、です……」


 僅かゼロコンマ数秒で目的地に到着。

 俺はこの移動に慣れているが、ベルは未だこの速度での移動は初めての様で、ちょっとの間だけだったが目を回していた。

 

「大丈夫か? ———【状態異常回復】」

「ふぎゅー……ありがとうございます……元気になりました!」


 俺が【状態異常回復】を掛けてやると、一瞬にして元気を取り戻すベル。

 その姿に本当は全然目を回していなかったんじゃ……と思ったが、どうやらそんな軽口を言っている暇は無さそうだ。


「……随分と危険なお出迎えだな」


 俺とベルの周りを何千ものオーガが取り囲んでいた。

 いや、それだけではない。


 その他にミノタウロスの様な姿のデーモンと呼ばれる下級魔族に、ドラゴンが何百と集まっていた。

 皆だいぶ良い武器と防具を装備しており、何かのバフを受けて通常個体の10倍ほど強くなっている。


「正直此処まで必要だったか眉唾だったが、確かに歴代最強と言うだけあって強いな」

「是非我らの手助けをして欲しい」

「ふんっ、あの小娘の手先は全て殺処分だ」


 そう言うのは、竜人、悪魔、鬼人の3人の元幹部。

 どれもそこらの兵士とは別格の力を持っており、下手したら今の幹部より少し強いかもしれない。

 

「それに貴様はあの男の友人で歴代最強勇者。そこのよく分からん混ざり物はどうでも良いが、貴様相手には本気を出さねばすぐに此方がやられてしまうわ。やれ———!!」


 元幹部の1人———『軍団のドン』だったかな?

 確かそんな名前の鬼人の号令で、オーガにデーモンにドラゴンが精錬された動きで俺達に襲い掛かる。


 どうやらコイツはただの馬鹿ではない様だ。

 しっかり俺との実力差を理解している。

 故に本気で潰しに来た様だ。


 しかし———どうやらベルを少し過小評価し過ぎの模様。


「ベル、好きに暴れろ」

「はいっ! ———【隠蔽】解除。【神魔覚醒】」


 その瞬間にベルの体を膨大な魔力が変化した光と闇が包み込み、混ざり合って膨れ上がる。

 その驚きの魔力量に軍団だけでなく、元幹部達すらもが恐怖し震えていた。


「ば、馬鹿な……! 何だこれ程の魔力は!?」

「既に魔王様を超えているのでは!?」

「一体何者だ!?」


 おー焦ってる焦ってる。

 まぁその焦りが絶望に変わるのはもう直ぐだけどな。



「———【神魔殺の矢雨】」



 そう言った瞬間に何千ものオーガ軍団を覆い尽くす程巨大な魔法陣が天に展開され、そこから混沌色の矢が何万もオーガに向けて降り注ぐ。


 ———神と魔に愛された孤児の子孫。


 それは世界に愛されていると同義。

 それ故に神にも魔にも命を狙われる不遇な種族。

 しかし、1度覚醒すれば敵なしとも呼ばれる世界の王の爆誕である。


 ベルを包む魔力が徐々にベルの体に取り込まれ、輝く天使の輪を背に展開し、左右に4つの黒と白の翼が現れる。

 耳の上に禍々しい羊の様な角を生やし、その身に黒と白の可憐なドレスを纏っていた。


 瞳は瞳孔の細い赤眼と、湖の様に澄んだ碧眼。


「———後3人」

「チッ———やるぞお前ら!」

「こんな小娘に本気を出さんといけないなんて屈辱だ」

「そんな事言っている時間はない———行くぞ!」


 その言葉に3人の元幹部は一気にからだから魔力を噴き出し、物凄い速度でベルへと突っ込んでいった。


「食らえ———【鬼神降臨】」

「———深淵を覗きし者———【淵々】」

「カァアアアアア!! ———【竜神の撃滅爪】」


 そしてベルに天変地異レベルの技が繰り出される。

 しかしベルが取った行動は1つの詠唱のみ。



「———神を穿ち、魔を滅する———【神魔超越】」


 その言葉と共にベルの掌に3つの破壊光線が放出され、3人は一瞬にしてその身を灰に変えた。


 


————————————————

ベル

魔族(神魔族) 25歳

称号:神と魔の孤児みなしごの子孫 先祖の力を色濃く受け継ぐ者 

   歴代最強勇者の最初の弟子 


《スキル》

【神魔覚醒Level:10】

【神邪法Level:11(MAX)】

【神邪眼Level:11(MAX)】

【神魔闘気Level:10】【格闘術Level:10】

【弓術:10】【全属性魔法:10】

【大剣術:8】

【気配感知Level:11(MAX)】

【空腹耐性Level:11(MAX)】


ステータス


Level:745(通常時)

総合値:1728400(GOD級)

体力:318115

魔力:496915

筋力:283100

防御力:270435

敏捷性:359835

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