第34話 魔王軍会議
「それじゃあまずは総大将の優斗、現在の魔王軍の状態の報告をお願い」
「了解」
俺はアリシアに呼ばれて立ち上がる。
こんな態度なのは、アリシアに幹部達の前だけはこれでいいと言われたからだ。
流石に兵士達がいる前では敬語を使うけど。
「えっと……現在魔王軍の約90%の兵士を強化し終わった。現在ベルが行っているダークエルフのレベリングと、軽い戦闘訓練が終われば、後は1部隊のみだ」
「強化済みの兵士のレベルは?」
「平均350。種族によってステータスの差はあるが、2年前に比べて10倍以上は確実に強くなっている。それに1週間に何度か部隊同士でのガチンコ死闘が行っているから戦闘経験も豊富だ」
俺がそう言うと、アリシアを含めたその場の全員がドン引きの表情に変わる。
おかしいな……ベルは「素晴らしい案ですね!」って満面の笑みで言ってたのに。
俺が首を傾げていると、アリシアが恐る恐る口を開く。
「し、死闘って……?」
「文字通り死も仮定した戦闘だ。安心しろ。死んでも生き返るし、精神的なダメージも回復させる。それにやりたく無い部隊には別の訓練を行なっているから」
「ち、因みにどれくらいの舞台が?」
「現在はゴブリン、オーク、ヘルハウンド、サキュバス、インキュバス、獣人種全般、ハーピー、戦闘系上位悪魔、リッチ———」
「殆ど全てじゃないっ!? 本当にやりたがらない部隊には他の訓練を行っているんでしょうね!?」
そう言って俺の襟を掴んでガクガクと揺らしてくるアリシアに俺は言う。
「当たり前だ! 近衛隊は俺が作ったゴーレムを使った侵入者への対処法の訓練、ダークエルフは森の中での優れた機動力を森以外に生かす空中固定型ワイヤー操作を教えているわ!」
「そ、そう……なら良いのよ……。それで残りの10%は?」
「巨人族」
「ああ……あの頑固な奴らね……」
アリシアが名前を聞いただけでうへぇ……と顔を歪めた。
ただ俺もアリシアと同じ気持ちである。
アイツら図体がデカいだけで、力はオークキングと同格だし、速度は言うまでもなく最弱。
アイツらの大将の巨人王は、力こそ幹部以外なら最強だが、大振りで殆ど当たらないし、デカすぎてただ魔法の的になってしまい、現状では全く使えない。
そのくせしてプライドだけは高いので、相手にするのが面倒なのである。
「……巨人族は最悪出来なくても良いわ。それじゃあ次は……ゲルブ」
「はっ!!」
「「「「「「「【防音】」」」」」」」
指名されたゲルブは勇ましく立ち上がり、大声で報告を始める。
その大声があまりにも五月蝿いため、最近では耳を防音魔法で緩和させながら聞くのが当たり前となっていた。
「俺は人類の世界に行き、武者修行と経済状況について調べてきました!」
おいおい……ゲルブが頭を使う仕事が出来るのか!?
「まず俺は全力で戦えば、龍の中では最弱だが、珍しく家族で行動する爆炎龍3体の討伐が行えます! そして現在風神龍に挑戦中です! そして経済状況は、此処2年でどの国も下降傾向にあります! 恐らく我ら魔法軍の強さに恐れた王達が、軍事を強くする為に税を引き上げたのだと思う———思います!!」
「それで、その国の国民達は?」
フリーがいつもと変わらない冷静な様子で質問すると、ゲルブは元気よく大声で応える。
「魔王軍への敵対心は未だ高いものの、最近では国の上層部を恨む様な言葉が多く見られます! 一部の国では小さな内乱が起こっている程です!」
「そろそろ攻め時と言うわけね?」
「俺はそう考えております魔王様!!」
「この意見に反対の者は?」
アリシアがそう問うと、シャナが手を挙げた。
「私は今すぐに攻める事に〜反対します〜」
「何故だ?」
ゲルブがシャナの方を向いて不服そうに訊く。
するとシャナは待ってましたと言わんばかりに話し始めた。
「魔王様〜1年前の反乱を覚えていますか?」
「ええ。その時は貴女に随分と助けられたものね」
「お褒め頂きありがとうございます〜。そしてそれが今回の案に反対をする理由です〜。現在鎮圧中ですが〜未だに魔王様に敵対する者は少なくありません〜」
まぁ歴代で初めての女魔王っているのもあるのだろう。
そして敵対的なのは、魔王になれると思っていた昔の幹部達ってところか。
「そんな中で〜人類に戦争を仕掛けるには〜少々不安材料が多いかと〜」
「そうね……仮に私に敵対的な奴らが人間と組んだら相当厄介ね……内側から壊されかねないわ」
「———ならソイツらは俺とベルで何とかしよう」
俺がそう言うと、全員の視線が集まる。
「優斗……一体どうやる気?」
「魔族は徹底的な実力主義だろ?」
「まぁ……そうね、最近では少しずつ変わってきてはいるけど」
「いや、ソイツらは女であるアリシアが魔王になったのが気に入らないと考えているのなら、きっと古臭い実力主義の考えも持っているだろう」
「だから? まさかお父さんの幹部達をボコボコにする気?」
アリシアの問いに俺は大きく頷く。
「———そうだ。俺とベルで奴らに格の違いを徹底的に叩き込んでやる」
そして俺の直属の部下にして手足の様に働かせてやるさ。
————————————————————————
☆☆☆とフォローよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます