第31話 神聖王国滅亡

「き、貴様が五〇〇年前の勇者で現魔王軍総大将だと……? そ、そんな馬鹿な……」

「これが本当なんだな。証拠を見せてやろうか?」

「しょ、証拠?」


 俺は魔剣と成ったグラムを顕現させる。

 魔剣と成ったグラムは禍々しい魔力を纏っているが、見た目は殆ど聖剣のときと変わっていない。

 そしてこの時代でも聖剣グラムの事が詳細に描かれている絵本などがあるため、この剣を見た民衆たちにどよめきが走る。

 

 まぁ今の時代では魔剣グラムは紛失したと思われているらしいからな。

 実態は、グラムと俺の魂が同化しているので、たとえ俺が何処にいようと絶対に離れられないと言うものなのだが。

 

「どうだ? この剣に見覚えないか? まぁ魔剣に堕ちてしまったけど、一応この剣の元は聖剣グラムだ。そして魔剣に堕ちたって事は……ね?」


 俺がそう言うと、男は強力で膨大な魔剣の魔力に当てられてか、それとも恐ろしくなったのかは分からないが、腰を抜かしてその場にへたれ込んでしまった。

 そしてガタガタと震えながら、浅ましくも、俺に許しを請おうとしてくる。


「で、ですが、貴方様も我らと同じ人間!! 同族を殺すのは躊躇いが生じるでしょう。ど、どうか、お、お許しくだ―――」

「無理」


 俺は言葉の途中で口を塞ぐように、魔剣グラムで屑の首を斬り飛ばす。

 こちとら既に数万人の人間を殺してんだぞ。

 今更人間斬るのに躊躇うわけ無いだろうが。


 俺は恐れ慄いている民衆達に、さながら死刑宣告のような事を告げる。



「今から俺はこの国を滅ぼす。勿論それはお前ら民衆の命も入っている。慈悲など一切与えない。誰であろうと俺は殺す。これは―――魔族と人間の戦争だ。全ては人間から始めたことだ。恨むなら己の無能な主君を恨め。そしてよく覚えていろ。俺達魔王軍は敵対した者を絶対に見逃さない。たとえ地獄であろうと追いかけて潰す」



 実際五〇〇年前は、いくら戦争とは言え魔族にも同じことをしていたんだからな。

 実行したのは俺でも命令したのは人間。

 これからも仲良く贖罪を背負っていこうぜ。


「それじゃあ死ね」


 俺は魔力をグラムに込め、横薙ぎを繰り出す。

 魔力の乗ったグラムから三日月状の斬撃が何十も現れ、無差別に民衆の命を奪っていく。

 

「―――うっ!!」


 ふとえずく音が聞こえたので振り返ると、ベルが口元を抑えて顔面を真っ青にしていた。

 どうやら今の光景は少々彼女には早すぎたようだ。


 まぁ今俺の目の前では首を切られたり、胴体を真っ二つにされたりした何千何万もの人間の死体が転がっている……と少々グロい光景が広がっているからな。

 辺り一面血の海が出来上がっており、奇跡的に攻撃を受けなかったものは死物狂いで俺から距離を取ろうと逃げていた。

 まぁそんな事全く無駄なのだが。


 そう言えばちゃんと商人は逃げただろうか?

 商人に魔王軍の……俺の言葉を届けてもらわなければ。

 まぁ他の幹部には人間を殺すなと言っているから、民衆でも商人でも多分何人かは生き残って居るだろう。


「さて……俺は自分のしなければならないことをしよう―――【ファイアボール】✕一〇」


 俺の周りに直径一、二メートル程のファイアボールが一〇個展開される。

 噂を広めてもらうために一定数は生き残ってもらわないといけないから、この王都全てを一瞬で燃やし尽くせる【神炎】などは使えない。

 なので少々面倒だが、少しずつ殺していくことにしよう。

 

「―――行け」


 ファイアボールが民衆に向かって放たれ、着弾すると爆発する。


「や、やめッ――」

「アアアアアア!!」

「アツいいいいいい!!」

「ギャアアア!!」

「イヤダイヤダイヤダイヤダアアアアアア!!」


 既に此処は阿鼻叫喚地獄となっていた。

 ベルは既に幹部と同じく魔界に帰しているし、現在この国には俺以外の魔王軍はいない。

 これからは俺の人間への復讐だ。


 俺がどんどん魔法を発動していると、1人の剣を持った男が現れ、憎悪の感情を浮かべて叫ぶ。


「お、お前なんて……勇者様達が絶対に殺してくれ―――グフッ!!」

「その言葉は禁句なんだ。それに勇者は来ない。アイツラは弱者だからな」


 事実、彼奴等は俺から発せられる圧倒的な魔力を感知して、王都に帰らず違う国に逃げているのをしっかりと俺が感知しているからな。

 だがそれに関しては英断と言えるだろう。

 

 彼奴等がどれだけ束になって掛かってこようが、現時点で俺を倒すことなど絶対にできない。

 何なら俺と対峙すれば動く間もなく殺せてしまう。

 だから今回の奴らの最適解は「逃げる」だ。


 まぁ、


「それを勇者がやって良いわけではないが」


 勇者が逃げるなど絶対にあっては行けない。

 常に勇者は格上の相手と戦わなければならないのだから。

 そのために勇者の中には死んでどれだけ時間が経っていようと、原型さえあれば生き返らせれるスキルを持っている奴もいるのだし。


「さて、そろそろ逃げる時間はたっぷりあげたし滅ぼすか―――【深淵の底なし沼】」


 俺は魔力の半分を消費して禁呪魔法を発動させる。

 この魔法はその土地ごと消滅させる事ができ、その土地一帯は呪いの地へと変わってしまう。

 愚かな人間達に丁度いい。

 

 深淵の深い闇が王都を覆った。








 



 

「次はお前達だ―――勇者」


 

 


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