第29話 愚王の最後
今回短いです。
申し訳ありません。
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「早く言えよ。お前まで後王妃だけだぞ。いい加減本当の事を言ってしまえよ」
「ぐ、ぐぐぐ……」
「あなた! 既に息子も娘も死んでしまいました! 私も死にたくはありません! お願いします、言って下さい!!」
どうやら勇者のことは王妃ですら知らないようだ。
もし知っているのなら既に言っているだろうからな。
王妃は民の前だと言うのに情けなく愚王にしがみついて早く真実を言えと懇願している。
普通の人間ならこの時点で全てを吐いているだろう。
しかし……相手は愚王だぞ?
あのプライドと自己顕示欲にまみれた最悪の王だぞ?
―――王妃も見捨てられるぞ?
「我は……そんな事していない……」
「あなた!!」
俺の予想通り、愚王は王妃の命より自分のプライドを優先した。
「じゃあな」
「あ、あああああ……」
ズバッ―――ブシャアアアアアアア!!
王妃の首が胴体から離れて宙に浮き、愚王の目の前に転がった。
愚王は王妃の首から噴水のように溢れ出す血をモロに浴びて全身真っ赤に染まる。
しかしそれでもまだ話そうとしない。
此処まで来たらもはやくだらないプライドも感嘆に値するな。
まぁそんなプライドなんて直ぐに消えてなくなるだろうが。
「とうとう最後になったな、国王サマ? そろそろ言わないと民衆が暴走するぞ?」
俺は愚王の耳元で小さく囁く。
脅しに聞こえるが、今回は普通に事実だ。
既に民衆たちの疑惑は飽和しそうなほどに膨れ上がっており、いつ民衆が愚王をボコボコにするかわからないほどである。
「いい加減に言ったらどうなんだ、国王サマ!! 俺はただ真実を語って欲しいだけ。何も難しいことは要求していないぞ」
「そうだそうだ!! いい加減言いやがれ! お前のせいで最近は税金も物価も上がって俺達平民はまともな生活も送れないんだ!」
「そうだ! もはや俺達は奴隷と化している!!」
「俺達はお前の奴隷じゃないんだぞ!! 国王を名乗るくらいならしっかり俺達の生活を安定させてくれ!」
「それが出来ないなら死んでしまえ!!」
遂に我慢の限界が来たのか、勇者の話などそっちのけで不満を言いまくり、石や割れた木材を愚王に投げつける者が現れた。
勿論俺はその行為を止めるわけもなく、今度は自分の血で染まっていく愚王。
だがプライドの高い愚王がこの状況で何もしないわけもなく――
「五月蝿いぞ下民共がッッ!! お前達は我に黙って金を払えば良いのだ!! 死んでも生き残った奴がそいつの分まで払え!! ―――あっ」
「―――終わったな、愚王?」
愚王の言葉に全民衆が静かになる。
しかしそんなのは一瞬で直ぐに民衆たちの顔には憤怒が浮かび上がり、愚王目掛けて怒声が放たれる。
「――巫山戯るな、クソ野郎が!!」
「やっちまうぞ!! 全員でクソ野郎を殺せ!!」
その声とともに愚王目掛けて血走った目をした民衆が押し寄せる。
その光景を目にした愚王が恐怖に腰を抜かし、ガタガタと震えながら此方を向くと、
「おい、浅井優斗!! 我を助けよ!! これは命令である!!」
俺はその言葉を聞いた瞬間に、呆れてため息すら出なかった。
一瞬放って置いても良いかなと思ったが、それだと五月蝿いままなので、まるで小さな子どもと対面するかのように優しく教えてやる。
「愚王くん。結論から言うとね―――助けないよ」
「な、何故だ!?」
「だって俺は愚王くんの事が、今直ぐにでも殺したいくらい大嫌いなんだもん。嫌いな人は助けない。子供でも分かる世界の法則だよ? じゃあ―――頑張ってね」
「ま、待ってく———」
俺がそう告げると同時に愚王は民衆の波に飲み込まれていった。
もう愚王の声が聞こえることはなかった。
『神聖王国の国王を含めた王族は全て死んだ。もう良いぞ―――始めろ』
通信魔道具越しに優斗から状況を理解した残りの幹部は、救世主に告げる。
「「「承知いたしました」」」
神聖王国の滅亡は近い。
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