第25話 王城に潜入して拉致

 誰もが寝静まったであろう深夜零時。

 俺は王城の前で一人王城を見上げていた。


「…………久しぶりだなクソが……」


 日本とは違って流石に深夜は暗く視界も悪いのだが、俺には暗視スキルもあるので昼間と変わらない風景が見れる。

 そのため俺の目には自国の力を誇示する様に莫大な金と人員を費やして建設したであろう無駄に煌びやかな王城が映っている。


「……早くぶっ壊したいな」


 この王城を見ているとこの世界に来た時のことを思い出すので早い所跡形もなく消滅させたい。

 その為にはまずはこの王城に侵入しないとな。


 正面の門には二人の衛兵……と言うよりは王族の近衛兵だろう。

 どちらも王都に入る時にいた衛兵とは比べ物にならないほど強い。

 まぁあくまで衛兵と比べたらの話だが。


 更には王城の周りを徘徊する兵士が五〇名に、門の中の庭で警備している近衛兵が五〇名。

 王城の中はもうウヨウヨと兵士や魔法使いがいる。

 そして愚王の部屋の前には……騎士団長だろうか?

 俺から見ても強いと思わされる程の力を持った者がいる。

 だが強いと言っても精々ベル程度。

 幹部の誰かが出逢えば余裕で勝てるだろう。

 

「よし、この中に俺の行手を阻む強者はいない……っと」


 俺は音もなく門にいる近衛兵の一人に近づき、ナイフを振るって頸動脈を斬る。

 兵士は命を失う覚悟で務めていると思うので、躊躇はしない。

 これで気絶だけさせていても後々自分の足を引っ張ることになりそうだからな。

 力なく倒れる胴体を器用に音を立てずに地面に下ろす。


「……? おいシ———」


 音を立てていないつもりが気配で気付いたのか、今俺が殺した奴の名前であろう言葉を発する前に特殊なナイフで喉仏を掻き切ってそれと一緒に頸動脈も切る。

 血が大量に吹き出すがすぐにナイフに吸われ、力を失って倒れそうになった所を俺が支えてゆっくりと地面に降ろす。


「ふぅ……これで第一関門突破だ。次は……っとその前にコイツらをどうにかしないと」


 俺は死体となった近衛兵達に目を向けて考える。

 このまま置いておくと間違いなく巡回している兵士たちに見つかるので勿論なし。

 かと言って亜空間収納に仕舞うのも嫌なのでそれもなし。

 そして魔法で燃やすのは論外。

 王城なんだからスキル発動を感知する道具ぐらい持っているだろうから、一瞬でバレる危険性があるのでなし。

 となるとやっぱり……


「隠すしかねぇか……」


 と言う事で門を静かに開けて中にある茂みに隠すことにした。

 これなら探すのにある程度の時間が掛かるだろう。

 血は吸血ナイフが吸っているので一ミリも飛び散っていないし。


 俺はその後に門を閉めて先へと歩を進めた。





***






 その後も巡回する兵士や魔法使いに気づかれる事なく案外簡単に王城に侵入出来た。


「殺した衛兵の事は誰も気付いていないみたいだし……もしかして職務怠慢か? まぁこの国ならあり得る話か」


 今思えば巡回と言っても兵士同士でぺちゃくちゃと話していたし、魔法使いは魔法使いでベンチで魔法書を呼んでいたりしたから、元よりこの国の軍事組織は腐っているのかもしれない。

 今の俺にとってはありがたい事だが、ここに住んでいる人間にしてみれば最悪な状態だろうな。

 まぁ精々王族が拉致された事を悔やむがいいさ。


 俺は廊下では必ず遭遇は避けられないので、先程と同じ様に吸血ナイフを使ってどんどん殺して行く。

 流石に気配が突然減り出して異変に気付いたのか、騎士団長の気配が動き出した。

 それと同時に廊下が騒がしくなってくる。

 鎧と鎧が擦れる音が聞こえ始め、ドアをノックする音も響き始めた。


「これは少し早めに動かないと不味いかもな……」


 これで逃げられれば元も子もないので走る速度を一気に上げて、取り敢えず今年一九になるらしい一番下の王女の元に移動する。

 すぐに来たためか護衛がまだ到着していなかったので、衛兵を装ってノック。


「王女様! 緊急事態ですっ!」

「……はい、どちら様でしょうか?」

「げ、現在何者かが王城に侵入している為、王女様をお守りする様めいを受けて参りました!」

「そ、そうなのですか……? い、今すぐ入ってください!」


 扉の奥から怯えた様な声色が聞こえる。

 だが騙されてはいけない。

 この王女は清楚な見た目と口調だが、裏ではとある犯罪組織に所属しており、町の幸せそうな人を見つけては殺しているらしい。


 ……うん、愚王よりもヤバい奴かもしれん。

 コイツは駆除確定だな。


 俺はゆっくりとドアを開けて光がなるべく入らない様にすぐさま入ってゆっくり閉める。

 王女は寝起きでまだ完全に頭が覚醒していないのか俺の正体に気付いていない様子だ。

 俺はゆっくりと王女に近付くと———


「まず一人確保」

「何———ぐむっ!?」


 俺は王女の口を手で掴んで塞ぎ、そのまま亜空間収納に仕舞う。

 ラノベでは亜空間収納は生物は入れられないとか言う設定があるが、この世界ではそんな事ない。

 普通に人間も動物も仕舞える。

 ただ魔法袋は他のスキルで制限を掛けて生き物は入れられない様になっているが。


 王女を拉致した時点でこの部屋に用は無くなった。

 ——次は王子だ。


 俺は王女の部屋を後にし、王子の眠っている部屋に高速で移動する。

 しかし今度は王女とは違って護衛がいた。

 

「一、ニ、三……三人だけか。これなら一瞬だな」


 俺は護衛の兵士達に気づかれない速度で移動して全員の頸動脈を掻き切って殺し、そのままの勢いでドアを開ける。


「なっ、だっ、誰だ!」

「それは後で分かるさ」

「や、やめっ——」


 声を上げやがった王子を急いで亜空間収納に仕舞う。

 そして仕舞った後で周りに誰もいない事を思い出す。


「……そう言えば周りに誰もいないから急がなくても良かったな……」


 まぁいい、早いことに越した事はない。

 兵士が更に来られては面倒なだけだしな。


 さてと———次はいよいよ本命達の番だ。

 

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 取り敢えず10万字程書いた時点で、人気であれば続けます。

 なので、☆☆☆とフォローをよろしくお願いします。 

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