第21話 ベルのレベル上げ

 魔王城を出た俺は、ベルと共にとある所に移動していた。


「……優斗様……私飛ばなくてよかったのですか?」

「いいんだよ。どうせまだめちゃくちゃ遅いしな」


 現在俺がベルを持って空を飛んでいる。

 始めはベルも一人で飛んでいたのだが、ステータスの差がありすぎて俺にとっては物凄く遅すぎたのだ。

 しかし流石にずっと抱っこされるのは恥ずかしいのか顔を隠しているが。


 今回俺が行こうとしているのは、魔王城から遠く離れた魔界の端にある森だ。

 そこはルドルフが管理している聖森の様な場所ではなく、瘴気に完全に汚染された『死の森』。

 全ての動植物が魔物と化した生物の居ない森で、更には瘴気が濃いため人間界の魔物より遥かに強く危険である。

 しかし俺からしたら、強いと言ってもワンパンだから物凄くいい狩り場に変わらないんだが、ベルには厳しいだろう。

 だが此処で強くなって貰わなければレベルだけ高くなってスキルが伸びないので、技術が体に追いつかなくなってしまい、使い物にならない。

 そんな状態で連れて行くことなんてアリシアが許すはずもないので、この一ヶ月の間で身体、技術共に強くなってもらわけれなならない。


 魔王城から出発して三〇分程で死の森に到着。


「こ、此処って……死の森じゃないですか……? まさか……」

「そのまさかだ。此処でレベル上げをするぞ。時間がないから直ぐに入ろう」

「いやいやいやいや此処はダメですよ! だって死の森ですよ!? 危険な森で誰も近寄らないんですよ!?」


 まぁ確かにこの森にはLevel:500位なら普通にいるしな。

 それにしても魔物って生き物じゃないのに如何してレベルがあるんだろうな?

 植物にはそもそも無いはずなのに魔物になったらLevelが誕生するのも意味不明だし。

 まぁそこは日本の常識が通用しないファンタジーとして受け止めているが。


「大丈夫だって。もしもの時は助かるから。それにこれをやるよ」


 俺は亜空間収納から一つの指輪を取り出す。

 そしてその指輪をベルの右手の人差し指にはめる。


「優斗様……この指輪は何なのですか?」


 指輪をはめられたベルは困惑した表情で俺を見る。

 だがこれは説明するより実際に見てもらったほうが早い。

 

「取り敢えず『解放』って言ってみて」

「は、はい。『解放』……!?」


 ベルの解放の言葉に指輪が光ると、変形してナックルになる。


「な、ナックル? でも……何も変化がありませんよ?」

「当たり前だろ? これは格闘術の指南用のナックルだからな。このナックルをはめていれば一時的に【格闘術Level:11】のスキルが使える様になる。これを使えばスキルレベルが上がりやすくなるぞ」

「【格闘術Level:11】!? そんなの神話級の武器じゃ無いですか!? いいんですか、私が使っても?」

「使ってもいいけど一週間だけな。あんまり使いすぎると体と頭でラグが発生するからな」


 俺は説明を終えると、ベルを連れて森の中に入る……までもなく魔物が襲って来た。

 その魔物の名前は『モンスタープラント』。

 木が瘴気を吸収して魔物化したものだが、レベル的には八〇とそこまで高くない。

 そのため、ただでさえレベル三〇とは思えないステータスを持っているベルが、神話級の武器を持ち【格闘術Level:11】が発動しているのでモンスタープラント程度の相手ではなかった。


「えいっ!!」

「——ッ——!!」


 ベルの超人級のパンチでモンスタープラントの動体部分である幹が吹き飛ぶ。

 モンスタープラントは声帯がないため声が出ないが叫び声が聞こえてくるかの様に体を揺らして死亡した。

 すると突然ベルが「ふぁぁぁ!?」と言う叫び声を上げる。


「も、物凄くレベルが上がりました! 一気に四二になりました!」

「おお、結構上がったな。この調子でがんばれ」

「はいっ!」


 そう言って新たに攻めて来たモンスタープラントに突っ込んで行く。

 ベルには恐怖心というものがないのだろうか?

 レベルが五〇程離れていれば普通は怖がるものなんだが……。


 俺は目の前でモンスタープラントだけでなく、レベル一二〇程のウルフデビルをもボコボコにしているベルを眺めながら思う。

 確かに怖がってばかりで一向にレベルが上がらない事よりは断然マシだが、此処まですぐに戦闘に適応できるのは普通に凄い。

 神と悪魔と言う超越種の血を受け継いでいるのと何か関係があるのだろうか。


 ベルが集団で襲ってくるウルフデビルをまるでダンスでも踊っているかのように躱して一体ずつ頭を吹き飛ばしていく。

 ウルフデビルは連携がうまくて非常に厄介な相手のはずで、ステータスも互角のはずなのだが、終始ベルが圧倒していた。

 三体同時に攻撃しようが避けられるか頭を吹き飛ばされる。

 

 二時間程経つとベルの近くには魔物の死体の山が出来上がっていた。

 そこにはモンスタープラントやウルフデビルを始め、スネークデビルにゴブリンデビルだけでなく、レベルが二五〇程あるオークデビルすらもベルになすすべなく殺されて山積みになっている。

 きっと今頃ベルのレベルは上がりまくっていることだろう。


 俺が余りの凄さに軽く引きながらもベルを呼ぶと、ナックルのためか全身に血飛沫を浴びたベルが俺に呼ばれて嬉しかったのか、それとも褒めてほしかったのか分からないが、笑顔で近寄ってきた。

 しかし俺は思わずベルを見てゾッとしてしまった。

 ベルが血飛沫を浴びているのも相まって狂気の殺人鬼にしか見えなかったからだ。


 ……これが俺じゃなくて他の人なら間違いなく泣くか気絶しているぞ。

 

「優斗様――」

「ベル……血飛沫を浴びている時に笑顔で俺以外に近づこうとするなよ。と言うか血飛沫をなるべく浴びないようにな……」


 俺は笑顔で近づいてくるベルに鏡を取り出して姿を見せながら言う。

 始めは何を言っているのか分からないと困惑していたベルだが、鏡に映る自分の姿を見て納得したのか笑顔を引っ込めて後退りし始めると、


「…………優斗様の言う通り物凄く怖いですね。まるで殺人鬼のようでした。次からは出来る限り血飛沫を浴びないようにします……」


 そう言って腕を抱き、涙目になって肩を落とすベルであった。

 今回ばかりは俺もフォローできなかったので黙っていたのは言うまでもないだろう。

 

 

————————————————————————————

 取り敢えず10万字程書いた時点で、人気であれば続けます。

 なので、☆☆☆とフォローをよろしくお願いします。  

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る