第20話 決戦は一ヶ月後
「「「「「「「「…………」」」」」」」」」
俺の言葉に一気に玉座の間が静かになる。
今日既に何度も見たから慣れてしまったよ、この状態に。
そんな中一番に声を上げたのは以外にもテスラとベルだった。
「わ、私は優斗様の提案に賛成ですっ! 優斗様の考えが私の考えですし、実際今日人間の恐ろしさを味わいましたし……」
「私も……賛成。強くなれるなら何でもでいい」
うーん……ベルは何だか俺に対して盲目だな……せめてもう少し考えて欲しいんだが。
それにテスラはそもそも今回の件に関して全く興味ないだろ。
ベルは俺をキラキラと期待の眼差しで見ており、テスラは何の感情も感じさせない目と顔をして何故か俺を見ている。
俺がテスラに見られている理由がわからないでいると、テスラが首を少し傾げて言う。
「……王国に強い人いる?」
「あ、ああ一人か二人はいると思うぞ。だが流石にアリシア並みの奴らは居ないけどな」
「……今すぐやろう」
そう言って表情を変えずに握り拳を胸の前に持ってきてふんっと気合を入れているテスラ。
如何やら強い奴がいると言う事で気合が入っているらしい。
「おい、テスラ! そんな事でこれは決めて良い事じゃないんだぞッ!?」
ゲルブがそう言ってテスラに詰め寄るも、相変わらず感情の読めない目をゲルブに向ける。
「なら被害を出しても良いの? 魔界で人攫いが起きたらゲルブは責任取れるの?」
「い、いやそれは……」
「ならさっさと賛成しろ」
「くっ……分かったよ……俺は賛成する!」
テスラに論破されたゲルブが賛成の意を示す。
まぁ確かにもしこれを放っておいて実際に何人もの魔族が攫われたらゲルブだけでは確実に責任なんて取れない。
必ず魔王であるアリシアを責める様になるだろう。
その考えに至ったらしいウルヘイムが声を上げる。
「俺も賛成だ。魔王様にまで被害が及ぶ可能性がある。それだけは防がなければならない」
「お前はもう少し民の事を考えろデカブツ!」
「俺にとっては魔王様が一番だ」
相変わらず魔王様至上主義のウルヘイムにゲルブが突っかかるも、一貫して魔王様が一番と言う考えを改めなかった。
そんな二人の言い合いの中、シャナが俺の方に寄ってきて小声で話す。
「……今回軍は使うのですか?」
「いや使わない予定だ。これから一ヶ月でベルを使えるまでに強くする。そしたら魔王軍幹部であるお前らと俺とベルで向かう」
「魔王様は行かれないのですか?」
「行かせないぞ。魔王軍は魔王がいなくても一国くらいすぐに滅ぼせると、他国にも威圧しておく。そしたら一先ずの間は何もして来なくなるだろう。その間に軍の総力を底上げすれば良い」
「なるほど〜なら私も賛成です〜」
シャナが手を挙げて相変わらずほんわかとした言葉で賛成する。
「俺も賛成だ。聖森を荒らされて行けないからな」
ルドルフが聖森の為に賛成する。
どれだけコイツが聖森を好きかは知っていたつもりだったが、此処までとは少し予想外だった。
まぁ賛成してくれるなら何でも良いが。
すると必然的にまだ賛成していないフリーの方に注目がいくわけで……フリーが俺たちの視線を浴びてため息を吐く。
「はぁ……どうせ私が反対した所で皆様行くのでしょう?」
「「「「「「コクコク」」」」」」
アリシアとフリーを除いた全員が首を縦に振る。
「でしたら私も行くことにします。お守りは優斗様のみでは足りないでしょうから」
本当にその通りだよフリー。
コイツらをまだ二、三ヶ月しか付き合いがない新参者の俺が制御出来るわけない。
なのでフリーには絶対に来て欲しかったのだ。
「ありがとうフリー」
「いえ、全ては魔王様と優斗様のためでございます。彼らの事は私にお任せください」
「本当に助かるよ。俺はベルだけで手一杯なんだ」
「「「「「私(俺)達は子供ではない(です)!!」」」」」
「……遺憾。私は大丈夫」
「貴方が一番の危険人物ですよテスラ」
その言葉に初めて顔を顰めるテスラ。
ただ俺もフリーと同じでお前がぶっちぎりの一番で不安要素だよ。
そんな事を考えていると、アリシアがコツンと玉座に座りながら足を鳴らす。
その瞬間に俺も含めた全員が跪く。
「……結局どうする?」
魔王様が威圧を込めて言葉を発する。
その姿は先程怒っていた奴とは別人に見える程の風格を有していた。
「はっ! 私、浅井優斗は改めて神聖王国を滅ぼす事をご提案します」
「私、ベルも優斗様の意見に賛成します」
「私、ゲルブも賛成します」
「私、ウルヘイムも賛成です」
「私、シャナも賛成です」
「……私、テスラも賛成……」
「私、ルドルフも賛成でございます」
「私フリーも優斗様の御提案に賛成致します」
俺の言葉にベルと幹部全員が同意を示す。
その姿に魔王様が一度全員を見渡すと、
「……よかろう。妾——魔王アリシアとして命ずる。一ヶ月後に人間界の神聖王国を滅ぼせ」
玉座から立ち上がり、そう俺たちに命じた。
「「「「「「「「仰せのままに———!!」」」」」」」」
俺たちはそれに応じる様に答え、更に頭を下げた。
***
「それで……詳細は如何言った風にしようと考えているのかしら?」
勅命の後、俺たちは場所を変えてアリシアの執務室に集まっており、アリシアが聞いてくる。
「まず、俺は商人を装って王国に入る。その際に護衛と言う
「それはいいんだけどよぉ……俺たちの見た目は如何するんだ? ベルは何とかなるだろうが……俺は如何やっても魔族とバレるぞ」
そう言うゲルブは、思いっきり頭にドラゴンの角が生えており、尻尾もある。
確かに衣服で隠せる程の物ではないだろう。
ベルは神の血が入っているからなのか肌も人間に近いし、悪魔のしっぽくらいなら衣服で十分隠せれるレベルだ。
「ゲルブには【偽造】スキルを掛ける。俺のスキルレベルなら衛兵程度にはバレる事はないだろう」
「なら大丈夫か」
「……私達は?」
テスラが聞いて来たのでそちらに向くと、フリーとウルヘイム、ルドルフもこちらを見ていた。
「テスラとフリーとウルヘイムには、俺たちが反乱を起こした後で混乱に乗じて乗り込んでもらう。ルドルフは……強そうな奴を眷属として増やしていてくれ」
「ん。なら暴れる」
「魔王様に危害を喰われようとする奴らに鉄槌を」
「やりやがりましたね優斗様……はぁ……私はお三方のお守りをしなければならないのですね……」
「俺は眷属を永遠と製造しなければならないのか。あれ疲れるのだがな……」
よし、なんか不満がある者もいる様だが、俺にとっては知らん。
「ベル」
「何でしょうか優斗様!」
アリシアと話していた様だが、俺の声を聞いてすぐに飛んでくるベル。
邪魔した様な気もするが、アリシアも怒っていなさそうなのでまぁ良いか。
「今からレベルアップしに行くぞ」
「え? 今からですか?」
「一ヶ月しかないからな。これから毎日ずっとレベル上げだ」
「が、頑張りますっ!」
「よし……なら俺は此処でおさらばさせてもらうぞ」
俺はそう言うと、意気込むベルを連れて執務室を後にする。
これから楽しい楽しいレベル上げの時間だ。
ベルが楽しいかは知らないが。
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取り敢えず10万字程書いた時点で、人気であれば続けます。
なので、☆☆☆とフォローをよろしくお願いします。
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