03.問題です
ここで唐突に問題です。
硬水と軟水の違いって何だと思いますか?
「すみません、私にはわかりません」
「うんうん、アールが分からないのは仕方ないよー」
目に見えて落ち込んでいる、ベルーナ伯爵家から行儀見習いで私についている彼女の頭をなでる。
前世では、ググレ〇スッ!で片付く質問だ。
しかし、この問題の答えを得ようとしたとき、本来は様々な分野の学者が集って研究した結果で判明する事実なのである。
最低でも地質学者に生物・水質研究者。ネットで調べるとすぐわかることも、多くの人の努力の結果だということを忘れないよーに!
そしてこの世界には魔法がある。
ひょっとしたらどこかの乙女ゲームの世界に転生したとか言われそうだが、あいにくそっちは詳しくないので知らない。私自身に何かがふりかかることがなければ別にどうでもいい。
ただ、魔法があるために科学技術の発展が著しく遅い。これもまぁ、この手でよくある話だ。
結果として、微生物がうんぬんかんぬんとか、病原菌が~~とか言われても全く通じないだろう。迂闊にそんなことを言い出せば魔女狩りの対象になりかねない。
あ、ちなみに答えは『硬度』の違いね。
水1Lに対してカルシウムとマグネシウムがどれくらい溶け込んでいるかである。
学校の理科の授業であった誰もが一度は習っているはずの、水の体積に対してどれくらいの塩が解けているかって問題。溶け込んでいるものが違うだけでやっていることは同じである。
水の質がどうして違うのか、その問題は地質と地形だ。
中世などで代表的でもある欧州は基本的に石灰岩質で、山から海に出るまでがとても長いためにカルシウムとマグネシウムが水に溶け込んでしまう。日本は山から海へまでが傾斜がきつめで、墓石にも使われている花崗岩によってろ過されるので軟水になりやすいという違いがある。
「いくら魔法があるといっても地質や地形まで変えるのは無理……よね?」
「当たり前ですよ!」
何を言っているんだとアールがキレのいい突込みをくれる。専属の侍女から専属の突込み役にクラスアップが必要かしら?
とりあえず、魔法でできる範囲を調べるべきかな?
科学技術がない世界で、それを前提に話しても通じない。年齢も足りなければ実績もないのだから信じてすらもらえない。
しかし、もう一度言おう。
「権力はある!」
正確には親の権力だけど、筋を通して言えば聞いてくれるんだから問題ない。
ベッドの上で立ち上がって吠える私。
隣でお嬢様がご乱心です!! そう泣きながら叫ぶアール。
カ オ ス である。
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