第1話 いつもの日曜日は今日も変わらず


心白とは中学三年生の時に、親同士の再婚により久しぶりに再会した。湊斗の母親は不運な事故で亡くなっており、湊斗のお父さんは男手ひとつで我が子を立派に育て上げた。なので再婚を知らされた時は少々驚いたのだが、そこはこれまでの感謝と共にこころく受け入れた。


そして、お互いに子どもがいるとは知らされていたのだが、顔合わせの日に準備を整え待ち合わせのレストランに向かうと、そこにはなんと幼い頃離れ離れになった心白がいた。湊斗は驚きを隠せなかったが、向こうは驚きよりも少し気まずいような、恥じらうような。そんなよそよそしい雰囲気だったが、それは時の流れによるのもあるのだろう。お互いは幼い頃とは違い、思春期を迎えて容姿も心も成長していた。


そして、今では家族揃って天宮家の一軒家で湊斗と心白は“義兄弟”として仲良く暮らしている。


珈琲コーヒー入れるけど、しろもいる?」


今日は日曜日で学校は休み。なので、日々の疲れから解放されるように休日はのんびりと過ごす。


「あ、お願いします」


「わかった」


あの頃の距離感はふたりには感じられないが、高校生の男女の距離感としてはこれくらいがちょうど良いのかもしれない。


「はい、どうぞ」


「ありがとうございます。湊斗さんの入れる珈琲は香り豊かですごく美味しいです」


「いつもしろは美味しく飲んでくれるからね、こっちこそ嬉しいよ」


しかしそれでも、時々湊斗は昔のような心白との雰囲気を恋しく思う。心白はもしかすると、兄弟だからといって何かの間違いで男女の関係にならないように距離を置いている節も、もしかしたらあるのかもしれない。


「そういえば来年は受験だけど、しろはどこか行きたい大学でもあるの?」


湊斗と心白は征華学園せいかがくえんという日本トップレベルの学力を誇る高校に通っており、今は二年生で来年には受験を控えている。なので、そろそろどこか行きたい大学は固まっていると思ったので聞いてみた。


「そうですね。大学はだいたい決まってますけど、受かる自信はあんまりないですね」


「無責任な言葉だけど、しろならきっと受かるから大丈夫だよ。学校でも結構成績良いんだし」


「ありがとうございます。ちなみに、湊斗さんはどちらの大学へ行かれるのですか?」


「あー、俺は正直あんまし決まってないからそろそろ行きたい大学固めないとやばいんだよね笑」


「そうなんですね、でも湊斗さんは毎日コツコツと勉強してますから、どこの大学を受けるにしてもあんまり困らないでしょうね」


「そうだといいんだけどね...笑」


高校受験も大変なのだが、大学受験はそれよりも困難を極め、狭き門なので本気で準備しないと痛い目をみることとなる。なので、それを見越して湊斗や心白は二年生になったばかりだが、それ以前の一年生からコツコツと勉学に力を注いでいる。


「ふぅ、それでもこうしたのんびりできる休日は有難いよね」


「そうですね、学校では朝から勉強ですからね。今のうちにしっかり休んでおかないと、一週間なんてとてもじゃないですけど、もたないです」


「ねえ、今日は時間もあるし気分転換にでもふたりで散歩に行かない?」


今日の天気は文句なしの晴れ。おまけに春の心安らぐの光と、春風が疲れた心を洗い流してくれる。おまけに心白といっしょに散歩に出かけるので、更に癒されること間違いなしだった。


「いいですよ、私たち。“兄弟”ですからね」


「ああ、兄弟はふたりで一緒に散歩くらいするさ」


そう言ってふたりはそれぞれ準備を整えて、リビングにいる両親に少し出かけてくる。と一言伝えて玄関のドアを開ける。


“ガチャッ”


「わぁ、青空が綺麗ですね」


「うん、いい天気だね」


外に出て空を見上げると、どこまでも青い空はまるでふたりを祝福しているかのように見えた。


「しろ、昔よく行っていたあの土手に行こうよ」


「そうですね、なんだかんだ長い間行ってませんしね」


こうしてふたりは何気に訪れるのは、久しぶりになる場所にへと足を運んだ--

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