第31話 中間考査
征華学園の第二学年中間考査は数IIに始まり数Bやらなんやらで教科数自体は10を越えるのだが、それはさすがに一日では終えれないので何日かに渡って行われる。
「おはよう、れいか」
「あ、おはよ〜。みなとくん」
今日も今日とて麗華は早起きをして、せっせと朝ごはんとお弁当をつくっている。
「いやー、それにしてもついに来たね笑 ここからしばらくは勝負の日が続くね」
「うん。絶対に稜真に勝たないとね」
湊斗はこの約一週間のために登下校中であっても。学校の中でも。家の中でも。どこに行ってもでも勉強していたし、朝は頭が回りやすいので数学などに取り組み、夜は寝ている時間に記憶が定着するので寝る前に暗記教科にひたすら取り組んだ。
時には疲れを取るために麗華と気分転換に話したり、外に散歩なんかをして上手く自分と相談しながらここまで頑張ってきたので、どうしても湊斗は稜真に勝ちたかった。ただ焼肉を奢られたいわけでは勿論ない。これは漢の勝負なのだ。勝たなければ意味が無い。
「うん。応援してる」
麗華から応援してる。なんて言われたら湊斗はいよいよ後に引けなかった。
「ありがとう。れいかに応援してもらったから絶対に負けられないな」
その思いを背負って湊斗は学校に向かった--
※※※
「お、湊斗。ついにこの日が来たね」
学校に向かう途中で湊斗は同じく学校に向かう稜真に声をかけられた。
「ああ、手加減なんてしないから覚悟しとけよ」
「ふふっ、そんなことを言ってられるのも今のうちだろうね」
お互いに確かな自信があるのか、バチバチとした雰囲気を纏いつつも、それぞれにどこか余裕があるように思える。
「ちなみに、隣にいる一ノ瀬さんも油断しちゃあダメだよ?」
いつもは周りの目を気にしてそれぞれ湊斗と麗華は異なる時刻に家を出るのだが、湊斗が肩を怪我していた頃に念の為麗華が付き添うような形で登校したこともあるので、学校までではないにしろ少しだけ一緒に登校するようになっていた。
「余計なお世話ですよ。一色さんはいつも私には一歩及ばないんですから」
「ははっ、今日も手厳しいね。でも今回のテストは首席の座を譲ってもらおうかな」
「まあ、お互いにそれぞれベストを尽くそう」
「そうだね、一色さんには今回も負けませんよ?」
「まあ、結果を楽しみにしといてよ」
こうして各々が抱える勝負はついにこの日をもって幕を開けた--
※※※
〈〜湊斗の場合〜〉
“ガラガラッ--”
「よし、みんな席に着け。これから問題用紙と解答用紙を配布する」
西城先生は少し厚みのある冊子を腕に抱えながら教室に入ってきた。それを見るとこれからテストなんだなと嫌でも伝わってくるし、それは教室の雰囲気が一気に痺れる感覚を伴わせた。
「ふぅ、」
湊斗は神経を研ぎ澄ませ、配られた問題用紙に意識を向ける。麗華に支えられた日々。麗華に分からないところを丁寧に教えてもらったある日の夜。そして何より自分で頑張り続けた日々。いいや、その内の一時間。さらにその一分一秒を思い出してこの中間考査に臨む。
(絶対稜真に勝ってやる)
※※※
〈〜稜真の場合〜〉
“ガラガラッ--”
「皆さん席に着いてね〜。これから問題用紙と解答用紙を配るからね〜」
稜真の在籍するクラスは湊斗と麗華の在籍する
2-1の隣にある2-2で、担任の先生は女性で名前は
「星宮先生はほんといつもと何も変わらないですよね笑」
「もうっ、一色くんは先生をあんまりからかっちゃあダメよ?」
「めっ!」というような顔をしながらそう言う星宮先生は日本トップレベルの学力を誇るこの征華学園に在籍している先生の中では実は随分と若いのだ。たしか大学を卒業してすぐこの学校に来たんだとか。つまり、星宮先生はポンコツのように見えるが、この学校で働いている以上実力は確かにある先生なのだ。
「でも、今日のテストはいくら一色くんでもちょっとだけ難しいかな?」
ちなみに星宮先生は国語の先生で西城先生は数学の先生である。
「全体的に、ですか?」
「う〜ん、どうだろうねー。少なくとも数学は難しいんじゃない?」
「でもテスト範囲は毎年同じですよね?それだったらあんまり変わらないんじゃあ...」
高校二年生の中間考査なんてほとんどの学校が同じ内容だろうし、仮に征華学園が特別だったとしてもそれは毎年同じ範囲で変わらないので、難しくなったとしてもそんなに変わらないと踏んだ稜真だったが--
「う〜ん。でも今回のテスト作ったの
「西城先生が作ったとしても、僕はいつも通りやるだけですよ」
「ふふっ、一色くんならそう言うと思ったよ。それじゃあ配ろっか〜」
そう緩い雰囲気で稜真の中間考査はスタートした。
※※※
〈〜麗華の場合〜〉
「よし、みんな席に着け。これから問題用紙と解答用紙を配布する」
(みなとくん大丈夫かな...)
隣をチラリと見てみると、いつにも増して真剣な顔つきの湊斗が見えたので、あまり気を張りすぎると空回りしてしまわないか心配だった。
(みなとくんはここ最近ずっと頑張ってたんだから、それを落ち着いてこのテストにぶつければきっといい結果は自然とついてくるよ)
そう声を掛けてあげたかったが、このピリついた空気では麗華の小さな口は開くことはなかった。
「よし、みんな手元に冊子あるな。それじゃあ、始まりの9時まで残り30秒くらいだ。ひとつだけ言えることとしては、分からなくても絶対最後まで諦めるなよ」
“キーン コーン カーン コーン...”
西城先生は最後にクラスのみんなにそう言って少しすると、征華学園 中間考査の開始を告げるチャイムが学校全体に鳴り響いた--
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