第24話 え、気にするとこそっちなんだ...
時刻:午前7時12分--湊斗:無事(?)起床
「んっ」
「なっ、!?」
男なら一度は朝起きて重い瞼を開けた先に、女の子のおっぱいが目の前にあるという状況を思い浮かべることが多々あると思うが(そんなことはないぞ)、
「うぅ...頭痛いな」
(これは完全に寝不足だな)
ズキンと頭に痛みが走って麗華の胸に動揺なんてしている余裕はない。先程にも言ったが正直それどころではないのだ。
そう、それどころでは--
(どうして胸元のボタンだけ開いてるんだよ...)
これは男の
(れいかが起きたときのことを考えてボタンを閉めておいた方がいいのか、それともそっと布団を掛けてこのまま はだけたままにしておくべきか...)
「.....」
寝不足で働かない頭でしばらく考える湊斗だったが、最終的に導き出した答えは--
“パサッ”
(はいそうですよ!俺はヘタレですよ!ええ悪かったですねボタン閉めてあげる勇気がなくて!)
「いや、ヘタレと紳士は紙一重だ。これはお互いにとって一番良い選択だろう」
そうポジティブに自分に言い聞かせた湊斗は麗華を起こさないようにそっと優しく布団をかけて、そのまま身支度を整えるために静かに洗面所に向かったのだった--
※※※
“バシャバシャ”
「ふぅ、朝からほんと刺激が強すぎるんだよな...」
冷たい水で寝ている脳みそを叩き起こして心機一転さっぱりした湊斗は、汚れと一緒に朝っぱらから抱いた邪念もきれいに水に洗い流したのだった。
「よし、れいかの前で変な挙動とらないように気持ち入れ替えよう」
何も知らない麗華に対して、ひとり勝手に気まずくなって変に思われても嫌なので、今のうちに気持ちを入れ替えるのが得策だろう。そんなことを思っていると、噂をすれば何とやらとはまさにこのことだろう。階段からトントントンと足音が聞こえてきた。
「あ、れいかおはよう。昨日はよく眠れた?」
「みなとくん、おはよぉ〜。うん、なんだか寝てるときに安心感があっていつもより熟睡できたよ」
むにゃむにゃとまだ眠たそうな目を擦りながら麗華はそう言う。
「あ、そうなんだ。良かったね」
平和ないつもとなんら変わらない会話のようにみえるが、湊斗の内心はそんなに穏やかではなかった。なぜなら、
(まだ胸元はだけてるんだけどー!?)
つい先程、冷たい水に流したばかりの忌まわしき邪念どもが次々に復活を遂げる。麗華の胸元を見ると真っ白な透き通るような肌をした二つの程よい主張をする山々。その山々を覆うように包み込んでいる氷の結晶のような美しい水色の下着が露呈したままだった。
(まずい、この状況でれいかに恥ずかしい思いはさせられない)
どうしたものか。と頭を悩ませていると、洗面台の鏡に麗華の上半身が反射していることに気がついた。
(ま、まずい隠さないとっ!)
“スッ”
「みなとくん、何やってるの?笑」
咄嗟の行動故に、湊斗は鏡にへばりつくような形で隠しているので麗華は湊斗の行動を可笑しく思った。
「えっ、や、ちょっとここにゴミがついててさ?それを取ろうとしてるんだけどなかなか取れなくて」
自分でも正直苦しい言い訳をしていると自覚しているので、なんともいえない感覚がした。
「ふーん、まぁなんでもいいけど早く洗面台使わしてね?」
「う、うん...」
そう言って麗華はリビングに向かっていったので、湊斗は ほっと一息ついた。しかし、そんなのもつかの間。リビングから恵さんの声が聞こえてきた。
「あら麗華、そこのボタン外れてるわよ?」
「え?どこ--」
恵さんに言われて麗華は視線を落とす。すると、上からだと分かりにくいが前の方のボタンが二、三個外れていることに気がついた。
「.....」
麗華は先程、湊斗が何故あのような変な行動を取っていたのかをなんとなく理解したと同時に、羞恥で顔が熱くなっていくのを感じた。
“じーー”
(ん?なんだろう?)
湊斗が洗面台で髪を整えていると、背後から何やら熱い視線を感じたので振り返ってみる。
「れ、れいかどうしたの?そんなとこからこっち見て...笑」
振り返ると、麗華が少し火照った顔を半分だけ覗かせながら、ルビーの瞳で何か言いたげにこちらをじぃっと見ていた。
「わ、忘れて...」ボソボソ
(忘れて?あ、あぁ...もしかして胸のボタンが外れてたことかな)
いつかはバレることだとは思っていたが、湊斗が思ったよりそれは早かった。
「あ、うん。全然気にしてないから大丈夫だよ?」
先程はヘタレだったが、今度こそは紳士に対応しようと思い、湊斗は全然気にしてないよ。と言って麗華をフォローしたが、何故か麗華はそれを聞いて--
「そこは気にしてよ!」
どういう理由か麗華は湊斗に逆に意識してよ!と言い放った。
「え?な、なんのこと?」
湊斗は紳士に振る舞ったつもりだったが、それは麗華にとって逆効果だったらしく、湊斗はわけが分からなかった。
「だから、昨日の夜のき、キスのこと!」
「へ?」
湊斗は麗華の胸元がはだけていたことに羞恥心を抱いているとずっと思っていたが、どうやら麗華が言っているのはそのことではないらしく、昨日の麗華からの少し強引なキスのことを忘れてと言っているみたいだ。
「私、あんなに...はしたなくないから!」
“バタンッ”
「そ、そっちなんだ...」
麗華はまるであの時の自分を飢えた獣のように思っているのか、そう訂正して洗面所のドアを勢いよく閉めて行ってしまった。
「いや、でも。あの時のれいかはいつもより積極的で、小悪魔みたいでむしろ良かったけどな...」
湊斗は朝から変に意識して色々していたことがなんだか馬鹿らしくなったのであった--
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