第13話 麗華とのデートに向けて。その2

「どうかな?」


「おー、かなり良いね」


「まあ、色んなの試そうよ」


「そうだな」


湊斗は稜真の選んだ服を試着して、麗華とのデートに着ていく服を選んでいた。


「これなんてどう?」


「俺には少し派手だな」


「そうだねー、一条くんの雰囲気にもう少し合わせてみようか」


湊斗も一緒に探してみる。


(お、これなんて良いんじゃないか?)


「なあ、一色これはどうだ?」


「うーん...間違いは無いだろうけど、せっかくのデートなんだから、もう少し遊び心があってもいい気がするね」


「なるほど...」


(遊び心ってなんだよ、服選ぶのだけでもだいぶ難しいな)


「これなんてどう?」


「一色には似合うだろうけど、俺には似合わないだろ...」


「そんなことないって、とりあえず着てみてよ」


「わかった...」


湊斗は渋々試着室へと向かった。

それから少しして--


「一条くん、もう着替えた?」


「あぁ、いちおう...」


「一応ってなに笑」


「開けるよ?いい?」


湊斗がもう着替えたと言うので、稜真は試着室のカーテンを開けた。


“シャッ”


「おお、いいじゃん」


「ほんとか?」


「うんうん、似合ってるよ」


もう一度鏡で全身を見てみる。


(もしかして、これはこれでアリなのか?)


湊斗はこれまで服にこだわりは無かったので、オシャレな服を着ている自分が見慣れないので初めは少し違和感を抱いたが、見ているうちに少しずつアリなのではないか、と思い始めていた。


「結局これが一番いいのかな?」


「そうだな、俺もそんな感じがする」


最終的に二人が選んだ服は--


「よし、それじゃあ最後に靴買いに行こっか」


「うん、俺はこのスニーカー 一足しかないからな」


「それ本当に言ってる?笑」


「今まで特に出かけたりしなかったんだよ」


「それにしても、そのスニーカーだけってのはさすがに...笑」


「だから外出にピッタリな靴を、俺に見繕ってくれ」


「了解、一条くんに最高の靴を選んであげるよ」


もうすぐ日も暮れるので、最後に湊斗の靴を買いに行った。


※※※


「ふぅ、今日は色々とありがとな。助かった」


「全然いいよ、それになんだかんだ僕も楽しかったしね」


「そうか、それなら良かった」


「それじゃあ、帰りはどうする?一緒にご飯食べて帰る?」


「あー、その、嬉しいんだけど...ごめん」


「何かあるの?」


「れいかが家で待ってるん--」


そこまで言って湊斗はやっと気づいた。


「えっ?」


稜真と買い物をしていつの間にか心を許してしまったのか、つい口から溢れてしまった。


「いや、なんでもない...」


「もう、遅いけどね!?」


「...」


「はぁ、なるほど。そういうことだったんだね」


「?」


なぜか稜真は納得のいったような顔をしているので、湊斗は不思議に思った。


「いや、どうして急にあんなに冷たかった一ノ瀬さんが、転校生にデレデレしてるのかと思ってたんだよね」


「へ、へぇ...」


しかし、湊斗はそんなことどうでもよかった。


(まずい、俺とれいかが一緒に住んでいることがバレてしまった...)


紅玉の悪魔が男と一緒に住んでいるともなれば、征華学園のほとんどの生徒が衝撃を受けるだろう。なので、湊斗と麗華は学校でのルールを作っていたのだ。


しかし、今この瞬間に征華学園のアイドルである稜真にバレてしまったのだ。そうすると、たちまちこの情報は広がり、手をつけられなくなってしまうだろう。


(まずい、どうする--)


必死に考えを巡らす湊斗だったが、


「どうしたの?急に黙り込んで」


「あ、いや...」


「何かあるなら言いなよ」


「その...できれば、このことは秘密にしてくれると助かるんだが」


「あー、なんだ。そんなの分かってるって」


「へ?」


「そんなこと周りに言ったら、とんでもないことになるのは間違いないしね」


「言わないのか?」


「僕は面倒事が嫌いなんだ」


「そうか...」


(やっぱり一色はなんだかんだ良い奴なのかもしれない)


この一日で湊斗は稜真に対するイメージが、少しずつ良い方向に変わりつつあった--


※※※


「ただいま、れいか。ごめん遅くなった」


稜真と別れたあと、湊斗はできるだけ急いで家に向かったが、買い物の荷物と学校の鞄を抱えていたので、家に着く頃には20時を過ぎていた。


「もう、遅くなるならちゃんと連絡して...」


麗華が湊斗を出迎えるため、リビングから出てきたが、髪を切って少し爽やかになった湊斗を見て麗華は言葉を失った。


「ん?どうしたんだ、れいか」


「あ、いやっ、そのっ、」


(急によそよそしいな、どうしたんだろう?)


麗華がなにやらチラチラとこちらを見てくるので、湊斗は不思議に思った。


「ごめんっ!」


“タッタッタッ”


「あ、ちょっと...」


“バタンッ”


(え...何かしたかな?俺、)


よく分からないが、麗華は耳と頬。おまけに自慢の美しい瞳も赤くしながら、自分の部屋に駆け込んでいった。なので、湊斗は無意識のうちに何か麗華にしたのではないかと思ってしまい、ひとり玄関で不安になってしまった。


「ま、まぁ、とりあえずお風呂行こ...」


荷物を自分の部屋に置いて、足取り重くお風呂に向かった湊斗であった--

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