第9話 い、いっしょに...お風呂!?
湊斗は麗華に最高のプレゼントを渡せた。
今日は本当に良い一日だ。あぁ、本当に--
「み、みなとくん、何回も言うけどぜったいにその目隠し外したらだめだからね!」
「.....」
(で、なんで俺とれいかは一緒にお風呂に入ってるんだっけ?)
湊斗の傷は思ったよりも深く、しばらく不自由な生活を送ることとなった。この現実を麗華はどのように受け止めているだろうか。
麗華は優しいので、自分のせいで湊斗が大怪我を負ってしまった。おそらくそんなことを思い、罪悪感と責任感を抱えているだろう。
だから麗華は湊斗が予定より早く退院するとき、医者に「みなとくんは私が支えるので大丈夫です」なんて言ったのだろう。
「じゃあ、頭から洗うね」
「あぁ、助かるよ...」
(肩が上がらないのも、案外不自由なもんだな)
「じゃあ、次は身体洗ってくね」
「う、うん」
(あ、やばいなこれは...)
何とは言わないが、目隠しの効果は湊斗にとって絶大だった。
(耐えるんだ俺。絶対に反応したらだめだ)
ここでもしも、湊斗の“あれ”が反応してしまったら、一生懸命に洗ってくれている麗華に対して申し訳ないし、失礼だろう。
しかし、無念にも湊斗の固い意志は次の瞬間に呆気なく崩れてしまった--
“ふにゅっ”
「っ、!?!?」
(な、なんだ?ちょうど俺の背中に当たっている、この丸みを帯びた天国のような感触は...)
「ご、ごめんね!痛かった?」
「い、いや。大丈夫だよ...」
(あ、あぶなかった...まだバレてないよな?)
「よかった、それじゃあ最後に前を洗うね」
「!?」
「い、いや!前は自分でもできるから!」
「で、でも...」
「もういいよ、本当にだいじょう--」
今の湊斗の“みなとくん”は絶対に麗華に見られてはいけない。そう思い、少し抵抗したのが良くなかったのか、湊斗を唯一この楽園から遮断している目隠しの結び目が緩んでしまって--
“パサッ”
「「あっ、」」
その封印が解けてしまったと同時に、二人の声が重なった。
※※※
「「.....」」
(き、気まずい...)
湊斗と麗華はお互いの背中を合わせて、同じ湯船に浸かっている。
「そ、それにしても、みなとくんの背中すごい大きくなったね!」
「昔とは違うんだね...」と付け足して麗華は言う。
そうだ。湊斗と麗華はあの幼い頃とは違う。
ふたりは、それぞれの道を一歩一歩 着実に歩んできたのだ。それは会話を通さなくとも、自然とお互いに伝わった。
「れいかこそ、本当にきれいなったよ」
「ほ、ほんとに!?」
「うん、すごい魅力的だよ」
「.....」
(ん?急に黙ってどうしたんだろう)
と、その時--
「ちょっ!?れ、れいか!?」
「後ろ向いたら、だめ...」
なんと麗華が後ろから湊斗に抱きついたのだ。当たり前だが、この時のふたりの身体は完全に密着している。
「みなとくんの心臓すごいドキドキしてる...」
「そんなの当たり前だよ」
こんなのドキドキしない方がどうかしている。
「実は、わたしも...」
「え?」
「確かめて、みる...?」
「れ、れいか、それって...」
湊斗が後ろを振り返ろうとした時、麗華は小悪魔のような笑みを浮かべながら--
「ふふっ、じょーだんだよ?」
“ちゅっ”
「っ、!?!?」
「それじゃあ、先に出るね?」
「...」
“ガラガラ、バタンッ--”
「.....」
麗華は湊斗のほっぺたに軽くキスをして、足早に出ていった--
(ど、どういうことだよぉぉお!!!)
湊斗は幸せと羞恥がごちゃごちゃになった、
このなんとも言えない感情に湯船の中でひとり静かに溺れていた--
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