第5話 雑談
「こんにちは。」
学校の授業が終わり、それぞれの部活やサークルに向かう中、僕は他の人に気ずかれないようにミキさんの所にやって来た。
「あれっ?居ないんですか?」
返事が返ってこない。
昨日より部屋が散らかっているから、実験でもしていたのだろうか?だったら速く完成品を見てみたい。何処にあるんだろう?探してみよう。
そう思ってテーブルの反対側を見てみると、ミキさんが倒れていた。
「えっ、大丈夫ですか!先生よんでこなくちゃ。」
「その前に起こす努力か、知る努力をした方が良いんじゃないか?」
ミキさんはむくっと起き上がった。
「よかったー。実験の犠牲になったのかと…。」
「そんな事にならないようにこれをつけてるから大丈夫だよ。」
そう言って、ミキさんの胸ポケットから出したのは少しボロボロになった布をだった。
「お守りですか?」
「そうだよ。どんな神のお守りより強いお姉ちゃんのお守り。」
「ミキさんにお姉ちゃんっていたんですね。」
「まぁここに住んでるから会えていないんだよね。」
「…え?ここに住んでる?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
ここに住んでいるって事はここはミキさんの部屋って事になんじゃ。いや、だとしても一応ここは実験室。そんな大層な物では…。
「それって必然的にここがミキさんの部屋って事になるんじゃないですか?」
「まぁ部屋の定義にもよるけど、私はここが家だと思ってるよ。寝るのも着替えるのも食べるのもここだから。」
俺は知らない内にミキさんに受け入れて貰える存在になってたって事?思ってたより関係が進展しているって事か。めちゃめちゃ嬉しい!
「あぁでも勘違いしないでね?ちゃんと一戸建ての家があってあくまでもそっちがちゃんとした家だから。」
ただの思い過ごしだったって事か。考えてみればまだ二日目だし当然か。
「それで!何の実験をしてたんですか?」
「ゴミを消せないかなって思って作ってたんだけど、もそも消えない容器を作らないといけないでしょ?」
「ゴミの定義にもよりますけど、容器を作らないと、絶対触ってはいけないようになりますね。」
「おっ、良いね~。結構追い付けるかも知れないね~」
少しにやけているミキさんに対して、僕はさらに惚れてしまった。
「結局そこから上手くいかなくてね。結局限界が来て、倒れてしまったってわけさ。」
「そうですか。」
「…大丈夫?何か辛そうだけど。」
「…大丈夫ですよ。何も辛い事なんてありません。強いていえばミキさんが魅力的すぎる事です。」
「ふふっ。そう。」
きっと僕はミキさんに隠し事なんて出来ないだろう。さっきの質問にすぐに答えられなかった事が何よりも証拠だ。ははっ。溺れてるな…。
私は見逃さなかった。彼が辛い顔をした所を。無理やり聞くのもいいけど、やっぱりダメだよね。
「そういえば上に報告してなかった!ちょっと行ってくるね。勝手に帰ってもいいよ」
と言って、私は部屋を出た。
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