第67話「最上の結果」

 三人が待つ道具屋に寄る前に、ボク達は武器の強化と防具の更新を行った。

 現在のステータスはこんな感じだ。


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PN:シエル

JOB:ガンブレイダー

Lv:40

HP(体力):30/30(+230)

MP(魔力):20/20

STR(筋力):20(+50)

VIT(耐久):10

AGI(敏捷):20(+230)

DEX(器用):50

INT(知力):345(+55)


右手:イルシデイション・ガンソード+20

左手:装備不可

頭部:空欄

胴体:LSSブレストプレート

腕部:LSSバンブレース

足部:LSSグリーブ

装飾:〈ワイズマン・リング〉〈カウ・リング〉〈ビートル・ネックレス〉

使い魔:メタルスライム、ガーディアン、ガーディアンウルフ


【スキル】

・ブレット作製技術

・セラフ魔術

・完全毒無効化

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 イベントの参加証で手に入れたインゴットで、新たに強くなった防具。

 LSS──ライト・サペリアー・スチールの装備で、HPとAGIのプラス合計値は230になった。


 ボスが多用する毒に対する耐性も完璧。

 他の三人も第二層ではこれ以上ない装備になり、イベント戦前と比べたら大幅にパワーアップしている。


 道具屋に帰還したときは、エミリーさん達もボク達を見て驚いていた。


「〈ワイズマン・ファクトリー〉か、流石に俺も聞いたことがない道具だな」


「シエルのガンソードが、こんな凄い進化するなんて私も見たかったなぁ……」


「皆さんの進化した装備は、少なくとも市販で入手できるものじゃありません。スペックもオーダーメイド級だと思います」


 アメリアさんとリリーさんが、物珍しそうにボクのガンソードを間近で観察する。


「アメリア、いつまで遊んでるんだ。早くシエル達が持ってきてくれた古代文を解読するぞ」


「はーい、わかりましたー」


 ハリセンを構えるエミリーさんに、頭を両手でガードしながら彼女は紙を広げたテーブルに駆け寄る。

 二人が解読している間は、完全に暇になってしまう、


 ボク達はその間、配信用の道具を見ることにした。


「マイクって色んな種類あるよね」


「配信で使い分ける用だな、ダンスとか演劇だとこのヘッドセットマイクになるかな」


「歌配信する人は手に持つ、ダイナミックマイクを使うわよね」


「……ミカゲは沢山の人に見られるのは怖くて、個人配信したことないから分からない」


 流石にゲームの精神強化が入っても、配信をする度胸はないらしい。

 それならと、ミカゲ先輩に一つ提案してみた。


「それじゃボクと一緒にやってみますか」


「え? な、なにを……?」


「もちろん配信ですよ。需要があるかはわかりませんが、一緒にフラワーガーデンを散歩するホームビデオ的なのどうですか」


「む、ムリ! ムリムリムリムリムリムリ!」


 顔を真っ青にして彼女は、近くにあった商品棚の影にしゃがんで姿を隠してしまう。

 その姿はまるで、怯えるハムスターのように震えていた。


「すみません、そんなに嫌がるなら止めときますね」


「せっかく誘ってくれたのに、ごめんなさい……」


「あ、でも今度のボス戦は放送しますよ。みんなと一緒なら平気ですか?」


「……二人以上いるなら大丈夫、わたしは目立たないように画面の端にいるから」


 ふと気になって、これまで彼女と撮った〈スターリンク〉のライブアーカイブを確認する。

 するとミカゲ先輩は器用に画面に端っこに立って、意識して見ないと分からないようなポジショニングをずっと続けていた。


 なんて器用なことを……。


 すごい、とてもすごいけど。

 努力の方向性が、明らかにおかしい。

 心の中でツッコミを入れると、そこでようやくエミリーさんが「解読終わったぞー」と声を掛けてくれた。


 急ぎ彼女とアメリアさんが待つ机に〈スターリンク〉全員で集合する。

 頭からやや煙を出しているアメリアさんを尻目に、エミリーさんが解説してくれた。


「今回の汚染ポイントは、ボス部屋の中央にある魔術式を束ねる装置じゃなく、フロアの四角にある大樹の一つらしい」


「フロアの四角にある大樹の一つって、ただの背景オブジェクトですよね?」


 そんな物ですらボスに影響を及ぼせるのか。

 これを考えると前回の汚染ポイントは、ど真ん中にあったから分かりやすかったなと思う。


「それとこれを記したジャヌアリーによると、汚染を色んな手段でばら撒いて都市を破壊しているヤベー奴がいるようだ」


「ボスフロアにあるのは、そこから都市全体に広がりやすいからだろうって記してあるよ」


「つまり全ての元凶って考えたら良いのかな?」


 ゲームには必ず敵対勢力が存在する。

 今回発覚した相手は、個人なのか複数いるのかは分からないけど相当タチが悪そうなのは理解できた。


 バグをばら撒いて世界を滅ぼす敵か。

 汚染に対抗できるのは、それを修正する〈リバイズ〉を所有するボクしかいない。


 ちなみにボク達が第一階層を攻略した後、全世界の第一階層で生じていた汚染が消失したらしい。

 つまりこのクエストに関しては、クリアした影響が他のサーバーにも共有される。


 かといって、ボクと同じ〈リバイズ〉の使い手は未だ確認されていない。

 クエストを独占状態というのは、ゲーマーとしては嬉しいけど少々気掛かりでもある。


 そんなこんなで話が終わると、ボク達の目の前にクエスト情報が表示された。


【第二層汚染状況】70パーセント


【危険予測】汚染が100パーセントに達した場合、モンスターの進化及びガーディアンの派遣制限が解除される恐れがあり。


【対処法】修正スキルの所有者が、汚染された特殊形態のボスを討伐する事。


【特殊形態】ボスフロアの汚染されたオブジェクトを修正する事で変異する。


【参加条件】最大10人(階層突破制限無し)。


【報酬】ユニークボス撃破により、第三層進出権を獲得。


 今回もシース姉さん達は参加できそうだ。

 敵は強化された個体、倒すのなら彼女達の力は必要不可欠である。

 ただおんぶに抱っこにならないよう、気を引き締めなければいけないが。


「それじゃ、今日は祝賀会を上げて改めて後日にボス戦に挑もう」


「「「おー!」」」


 こうして〈スターリンク〉の初陣は、優勝という最上の結果で終わった。

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