第2話 被害者ズラのママ


 「朝か・・・・・・」




 クソ、朝が来てしまった、俺はいつもそうだ。嫌な事がその日にあるとき、毎回昨日寝てしまった自分を恨む、寝なければ次の日は、来ないと思っているからだ。




 コンコン




 「パラディー起きて今日は、お母さんのお祖母ちゃん家に行く日よ」




 お祖母ちゃん家か、今日だけじゃなくて明日も明後日も一生だろうが、畜生俺は、またしても自分の親に騙され捨てられるのか。




 「はーい今起きました〜」 




 眠そうな返事をして部屋を出る。




 「おはようございます、お母様」




 と出来るだけ平静を装って挨拶をする。




 「おはよう、パラディ朝食を食べたら着替えてきなさい」




 なんか声が震えている。よく見れば目が軽く充血している、ミリスティーナの事だ、自分の子を手放すのが悲しいんだろう。




 朝食を食べるいつも通り旨い。特にこの牛肉? が凄く旨い、流石我が家のメイドだ、だがこの朝食を味わえるのも今日で最後か、そう思うとなんだか寂しくなってくる。




 寂しさに浸る時間もなく朝食を食べ終わるそして自分の部屋に着替えに行く。


 


 こっちの服は、何かの皮のような物と、絹の様な者で作られている。服の下は少しゴワゴワするが悪くない、三年間使ったジャージよりはマシだろうな。




 どうでも良い事を考えていると馬車が一台館に来た。あれ? 迎えか? 早すぎる、もう少し、あと一時間ぐらいはこの家に居たかったんだけど。




 「こちら、エリザート・ラステリア様の命により、パラディ・スレイガー様をお迎えにあがりました」




 うわーマジで来ちまったよ、もう行くのかよ畜生、畜生畜生、また親に捨てられるんだークソが。


 


 過去のトラウマにより半狂乱になりかけていた俺に冷水をかけるかのごとくレディックが、冷たい言葉をかけてきた。




 「穢れ者が、さっさと出て行け、お前は俺達とはなんの関係の無い者だ、じゃあなパラディ・ラステリア」




 あークソ野郎。こいつやっぱり良い奴なんかじゃない、ただのクソ野郎だ、まてよこいつ今俺のことラステリア? とか言ってたよな。




 「え? ラス? テリア?」




そう聞き返すとレディックは不機嫌そうに、言った。


 


 「そうだ、当然だろ? お前と俺達は他人になるんだ、スレイガーを名乗る権利はお前にはない」




 なるほど、あれだな親が離婚して苗字が変わるようなものだ、うん、分かった理解、理解。




 ふざけんな! 俺は貴族じゃねえのかよ!!




 「僕が……スレイガー……じゃないっ?貴族……… ボソボソ」




 そう何度も口ずさみながら屋敷の外に出る。




 「ごめんね。パラディこんなお母さんで魔眼さえなければあなたのお母さんでいられたのに」




 あーもういいよそうゆうのお涙頂戴の被害者ズラは、俺からすればあんたもレディックと変わらないし、俺の居場所を奪う加害者なんだから。


 


 そうだ最後に心にくる、一言をプレゼントしよう




 「お母様は、僕のお母様じゃないんですか?」




 そう言うとミリスティーナは堪えていた涙を大量に流し始めた。




 「いいえ、お母さんはあなたのお母さんよ」




 チッどの口が言うんだ俺を捨てるくせに、やっぱりどの女もそうなんだ。子供より男なんだよ、くたばれクソ○ッチ。  


 


 そう内心思っていたらラステリア? の使用人に急がされた。




 「申し訳ございませんが、王都からゲルニア領までは10日は掛かりますのでお急ぎ下さい」




 ゲルニア? まあそんなことはどうでもいい。よし行こう、すぐ行こう、こんなクソ親捨ててまだ見ぬヒロインってやつを見つけに行こう!




「すみません、もう少しだけ」 




 そう言って涙ながら使用人に言う、使用人は少しだけならと承諾してくれた、まぁ美女に潤んだ目で懇願されれば誰でもイエスを言うだろう。




 「パラディ、ちゃんとお祖母ちゃんの言うことはきくのよ? 」




 「はい」




 「ちゃんと文字のお勉強するのよ? 」




 「はい」


 


 「これはプレゼントよ、魔術のお勉強もしたいって言ってたでしょう、はいこれ」




 マジかよ分厚い本だ表紙に、魔術なんたらとか書いてある。確かに魔術使ってみたかったけど本だけじゃどうにもならんだろ、まぁでも、貰えるなら頂こう。




 「ありがとうございます! お母様! 魔術を使えるようになったらお母様に見せてあげます!!」




 ハハ、最後にかましてやったぜ俺の性格の悪さを甘く見るなよ泣けよ、泣けよ。




 「うん、いつか見せてね」




 は? 泣かないのかよ畜生。




 「そろそろ、よろしいでしょか? 」




 「ええ、パラディ元気でね、愛してるわ」




 何が愛してるだよ・・・・・・




 馬車に乗る。進み始めたら、もう戻ってこれないのか。少し寂しくなるな、まぁこの先にヒロインがいるかもと、期待を持てば少しはマシになるな。




 「行け」




 と使用人が馬車の操縦者に指示を出す、ガタッガタッと馬の足音が鳴り出す、進んでしまった。




俺が馬車についた小窓から外を見ていると使用人が話しかけてきた。




 「わたしは、レイブン・アイズと申します以後お見知りおきを」




 「はい、僕はパラディ・スレイガーです」




 と俺も名前を告げる




 「パラディ様はもうすでに、スレイガー家の者ではなく、ラステリア家の者でございますので、ラステリアをお名乗り下さいませ」




 あーなるほど。俺はもう、スレイガーを名乗ってはいけないらしい、その代わりにラステリアを名乗れと言うことかだが一応聞いておこう。




 「ラステリア? 僕の名前はパラディ・スレイガーですけど」




 「いえ、パラディ様は先程スレイガー邸を出た瞬間からスレイガー家との関係は無くなりました、つまりパラディ様はスレイガー家に存在していない事になっております」




 まぁーなんてわかりやすい説明だ。3歳児でもわかる、要約するとお前はもうスレイガー家ではないからスレイガーを名乗るな、ということだな。。




「なるほど、じゃあ、なんでラステリアを名乗るんですか?」




 「それは、ミリスティーナ様の旧性がラステリアだからです、ラステリア家とは…」




 話が始まってしまった。要約するとミリスティーナはラステリア家という貴族のお嬢様だったがレディックと結婚してスレイガーに変わった、その後パラディ・スレイガーという俺が生まれた訳だ。




 「分かりました。母様の名前がラステリアだったから僕もラステリアってことですね?」 




 「簡単に言えば、そうですね」




 でもミリスティーナがラステリア家の者だったからって穢れ者である俺を引き取る道理はないよな? 聞いてみるか。




 「でも、なんで僕をラステリア家に連れて行くんですか?」




 「それはミリスティーナ様がパラディ様をお願いしますと、当主様にお願いなさったからです」




 「なるほど、でも僕は穢れ者ですけどいいのですか?」 




 そうだ。俺は穢れた者らしい、そもそもこの魔眼があるからスレイガー家を追い出されたんだから、ラステリア家も普通は穢れるとか言って断るだろ。




 「穢れ者? そのような言葉をなぜ、パラディ様が知っておられるのですか!?」




 まずいなんかやばい事言っちゃったかな、もしかしてこの人も穢れ者なのか? とりあえず謝ろう。




 「すみません! なにか気に触ることをいってしまいますたか?」




 「いえ、穢れ者の意味をわかってなっさるのですか?」




 「はい。魔眼を持っていたり、魔族との混血の人を指す言葉ですよね」 




 「はい。そうですがその言葉はあまり使ってはいけません、穢れ者とは、差別的な言葉ですから」




 「そうなんですか」




 「パラディ様は魔眼をお持ちで?」


 


 「はい」


 


 「なるほど、確かにスレイガー家は差別的な考えを持つ方が多いいですからね。            パラディ様のような、魔眼をお持ちの方は一般的には魔眼持ちと呼ばれます。魔眼持ちの方は少なく、魔眼を持っているのは才能とも言えますよ」 




 お!!! やったぜ! もしかして魔眼持ってる俺って凄くて希少なのか? よし自信がついたぜ。




 と興奮過ぎた長話聞いてたら眠くなってきたな。




 「パラディ様お休みですか?」




 「はい。少し寝ます」




 「分かりました、おやすみなさいませ」

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