第6話 熊倉と宗一 2

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熊倉と宗一の試合が始まった。

 ふたりは、にらみ合ったまま動かなかった。

 熊倉は右足を前に出し、腰を引き前傾姿勢を取る、股関節を中心に置き、お尻を後ろ、上体を前に動かすことで身体の前後のバランスが向上する、膝は深く曲げずにおく。

 両腕は顔の前に置き頭部を守る様に構えていた。

 動かない。

 宗一もその場から動く気配がなかった。

 だらりと腕を下げ、じっと熊倉を眺めていた。

 道場の中は静まり返っていた。


 「構えはとらんのか?」

 「此れが俺の構えです、師いわく無形の構えとか言ってた気がします」


 宗一の言っていることは半分は本気であり半分は適当であった。

 宗一の使う無形の構えと即ち『心の構え』の事である。

 どれだけ構えを取ったとしても心がそれに伴っていなければ意味を成さない、そもそも闘いにおいて相手の構えに合わせて変化するのが大事なのだから構えに正解はない、なら最初から構えなんて取らなくてもいいだろうという話である。

 もとより宗一にとっては闘いはいきなり始まる物であり、一々構えなど取っている時間などはなから無いのである。

 これが自然。

 これが闘い。

 これが最善。

 無形の構えに奥義天眼それが必勝のパターンである、もし構えるのならば構えるのは闘いの中で離れた時のみ。

樹のさざめきがやたらと大きく聞こえる。

 異常な緊迫感が道場を包み込む、何らかのきっかけが、足音一つ、それこそ落ち葉一枚落ちる音でさえ彼らが衝突する切っ掛けに成りえるだろう。

 古流柔術の志波先生と戦ったときと同じだ、不思議と口角が上がってくるのが分かる。

 ミシッ

 板の軋む音が聞こえた。

 熊倉と宗一が、ほぼ同時に動き出す。

 体重が軽い分、宗一の動きが僅かに早い。

 脚だった。

 端から速度で勝てると思っていなかった熊倉は身長の差を活かす戦いに切り替えていた。

 ゴチャ‼

 熊倉の蹴りが宗一の右脇に入り込んだ。

 戦いを見守る学生達から声が上がった。 

 宗一の体が宙に浮き後方に吹き飛ばされる。


 「っ……ぐふッ」


 吹き飛ばされた宗一の口から呻き声が僅かに漏れる。

 体はなおも死んでいない、着地と同時林政態勢に入りに再び熊倉を睨み付けるように視線を送った。

 しかし追撃は来ない、蹴りを打ち込み体を宙に浮かせたのであれば追撃するべきなのだろうが、今の熊倉にはそれが出来なかった。


 「さすがに、天川さんが忠告するだけはあるようだな」

 「がら空きだったもんでつい」


 右脇を熊倉が摩った。

 熊倉が蹴りを打ち込んだ瞬間に宗一もまた蹴りを打ち込んだのである。

 余りにも一瞬の攻撃故に熊倉も反応が遅れたのであろう。

 困惑と歓喜の入り混じった表情で宗一を睨んだ。

 


「あの宗一先輩が打ち負けた?」

 「嘘だろマジかよ」


 ざわざわと学生達から声が上がる、無理もない彼らからすれば蹴り合いをして宗一が巻けて吹っ飛ばされた形にしか見えないのだから、しかしその見立てもまた事実とは違うことに気が付いたのはただ一人であった。


 「それは違うぞ、宗一は打ち負けてはいない」


 宗一の友、勇樹である。


 「一見打ち負けたように見えるがそれは飽くまで見た目だけだ、あの結果になったのは蹴りの性質の違いだろうな」

 「性質ですか?」

 勇樹の言う性質の違いとは力の伝わり方の事であった。 

 熊倉の蹴りとは相手の体の外で衝撃が爆発するかの様な、相手を吹き飛ばすショー向けの派手な蹴りである。

 それに対して宗一の蹴りは衝撃を100%伝える肉体を破壊するための蹴りなのである、肉体の内部に残りじわじわと後から聞いてくる、超実践的な技であった。


 「なにもどっちが悪いわけではない、熊倉ってやつの蹴りも一流だがそれに合わせた宗一もやっぱ怪物だな」


 勇樹は解説を終えると再び視線を戦いに戻した。

 ピクンッ

 宗一の右足が動く。

 熊倉がそれに反応して、後ろに一歩下がった。

 下がった熊倉を宗一が追う、間合いを詰める。

 再び脚が出る。


 「ローだ宗一先輩‼」


 宗一のローが熊倉の足を襲う。

 宗一のローに対して意識を向けた熊倉が咄嗟に脚に力を入れ防御態勢を取る、しかしそれはフェイクである、途中までローの軌道に乗っていた宗一の脚が軌道を変え熊倉の頭部を打ち抜いた。


 「くっ‼」


 グラついた熊倉が打ち抜いた宗一の脚裾を熊倉が掴む、もう片方の手が股間に伸び、そこに体が潜り込んできた。

 ボディスラムか⁉

 それに反応した宗一が残った軸足から跳び上がる。

 ミシッ‼

 咄嗟に反応した宗一の跳び蹴りが炸裂する、熊倉の体から骨の軋む音がする、しかも宗一の飛び蹴りは普通の蹴りではなかった。


 「関節か……うまくやったな」


 勇樹が反応する。

 宗一の蹴りは脚を掴む腕の肩関節に対して行われた。

 肩関節を蹴られると一時的に腕が痺れ動けなくなるのだ、これはレスラーである熊倉に対しての有効である、恐らく体重差の大きい宗一が真っ向から打撃を続けても意味はないだろう、先程の内臓に対する蹴りを使わなければならないがこの関節攻撃は違う、筋肉は鍛えることは可能だが関節は鍛えることは出来ない。


 「オラァ‼」


 熊倉の拳が放たれた。

 その時には既に宗一の左手が動き始める。

 宗一の左手が滑るように熊倉の腕をかち上げる。

 宗一の体を一歩踏み込みながら、右肘を腹部にめり込ませた。

 一見力を入れているとは思えないがそれでもカウンター気味に入れたせいもあってか十全に熊倉の体にダメージを与える事が出来た。


 「ぐはぁ‼」

 「柳流 肘水殺」


 宗一の体重が乗った肘が、熊倉の水月にめり込んでいった。

 水月とは鳩尾の事であり人体の急所の一つである、ここに衝撃を与えることでことにより横隔膜の動きが一瞬止まり、呼吸困難に陥るともいわれている。

 熊倉の腹筋が鍛えられていなければ今頃宗一は血の混じった胃液を被っていた所だろう。

 ゴポッとこぶし大の窪みがぽっかりと空く、恐らく胸骨の剣状突起はへし折れているだろう、下手に動き続ければ折れた骨が肝臓に刺さる事

だろう。


 「流石だよ、だが俺はレスラーだぜ?」


 言い終わるのが先か、懐に入り込んだ宗一の襟を掴み引き付けた。

 ズンッと宗一の体に耐えきれない程の重みが襲い掛かった。

 合気か⁉

 宗一に戦慄が走る、合気とは無駄な力を使わず、効率良く相手を制し、体捌きを用いて、相手の力と競うことなく、相手の攻撃を無力化し、相手を制することを旨とする技術体系である。

 宗一は知っていた。

 一般的に言われている合気のイメージとは細身の老人が巨漢の男を転げまわす姿をイメージするだろう、しかし実態は違うのだ、もっとも合気を操れるのは自力で相手を無力化できるだけの筋肉を持った者が合気の技をもって敵を無力化することである。

 十全な力にそれを活かせるだけの技こそが合気の最強形態である。


 「掴んだな?」


 唇が捲り上がり宗一の犬歯が覗く。

 バオンッ‼

 空を切り裂く音と共に着ていた制服を残して熊倉の前から宗一が姿を消した。


 「なにっ⁉」


 否、姿を消したのではない、着ていた制服を脱ぎ捨てその制服で自分の姿を一瞬だけ隠したのである。


 「ガハッ⁉」


 消えたと思った瞬間、熊倉の頭部にとてつもない衝撃が走った。

 それは宗一の蹴りによる衝撃であった。

 熊倉が反応できないのも無理はない、なぜなら宗一の蹴りは完全に意識外から打ち込まれたからである。


 「柳流 飛燕」


 飛燕とは柳流の蹴り技の一つである、飛燕という名は燕が宙返りをするような蹴り技のためである、剣術で言うツバメ返しとは、先に刀を振り下ろし、踏み込んできた相手を、刀を瞬時に返して切り上げる事であるが柳流は少し違う。

 まず襟を掴んできた相手に対し服を脱ぎ捨て一瞬だけ目くらましを行う、その後胴回し回転蹴りを敵の頭部に叩き込み、その後返しの手で下からの蹴りをほぼ同時に叩き込む、その結果敵は頭部に受けた縦の衝撃を流しきれずに逆方向の衝撃を喰らうことになり、脳みそが頭蓋骨の中でシェイクされることになる、常人であればそれを喰らっただけで再起能になるだろう。

 常人離れしたバランス感覚と身体能力にモノを言わせた超人的な技である、まず常人には再現不可能であろう。

 ニヤリと宗一が笑う、普段の宗一ではなく志波と闘った時の殺意を持った獣が僅かに顔を覗かせていた。

 グラリと熊倉の体が崩れ落ちる、今頃彼の視界はグニャグニャに歪んでまともに機能していないだろう。

 勝負は決まった。

 誰もがそう思っていた。

 ただ一人を除いて。


 「すげぇよアンタ」


 とてつもない衝撃が宗一を襲う。

 崩れたかと思われた熊倉の体が蘇りそのまま宗一にタックルをかましたのである。

 ジャリリリリっ‼

抵抗する宗一の脚が畳を削りながら壁際まで追いやる。

両者ともとてつもない力である。

壁を踏み支える足元はへし折られた壁でぐちゃぐちゃになっている。


「なっなんで宗一さんの技を喰らったのに」

「くっ首だアイツの強靭な首が衝撃を殺したんだよ、アイツただの肉ダルマって訳じゃなさそうだな」


勇樹は忌々しそうに熊倉を睨みつける。

異常に発達した首に強靭な脚が熊倉にはある、足で衝撃を吸収し首が重要な脳を支える、それにより宗一の放った飛燕の一打目は脚のバネにより下半身に衝撃を逃がし、二打目の下からの攻撃を多少の余裕をもって受けきることに成功したのである。

無論、熊倉自身は飛燕などという技があることは知らない、全て彼の持つ身体能力及び反射神経により咄嗟に行われた物である、それだけでタダ者では無いことが嫌でも分かる。


「つぎは俺のターンだ」


不味い、宗一はそう直感が告げる。

崩れた体勢から熊倉が飛びあがり組み付いてくる。

熊倉の天性の身体能力であった。

惚れ惚れする天性のバネと反応速度である。

熊倉は宗一の胴を抱えたままブリッチを行いそのまま後ろに叩きつけられた。


「ゴフッ‼」


轟音と共に肺に貯まっていた酸素が一気に口から噴き出す。

スープレックス……いや前方から片腕を掴まれているからスロイダーか、宗一は目を白黒させながらそう考えた。

通常スープレックスという技は後ろから相手の胴をクラッチして反り投げてブリッジで固めるものだけであり。

それ以外の投げ技は「サルト」であって、相手の腕を前から掴んで投げるものは「スロイダー」と呼ばれる。

ただの投げであるなら問題ない、宗一にとっての問題は熊倉の投げ方である、ショーとしての側面の強いプロレスでは通常こういった投げ技は貯めの時間と大きなモーションがあるのが定番だ、しかし熊倉の投げは違う、一切の為もなく最小限の動きで相手を『落とす』人体を壊すための技術である。

一見地味な技であるがここはプロレスのリングではなく畳なのである、これがプロレスのリングであれば柔らかくすぐに立ち上がれるかもしれないが畳の上であれば大抵は一撃で終わりだろう。

よろめきながらも二人は立ち上がる、胃の中のものがせり上がってすぐそこまで上がってきているのが分かる。

危なかった。

だが受け身は取れた。

スロイダーのタイミングに合わせて飛び上がり、脚・腕・首の順で衝撃を分散させたおかげで、見た目よりも宗一のダメージは少なかった。

それでもゲロを吐きそうな程度にはダメージは受けている。

『柳流 分水』

柳流における投げ技に対しての防御術である、首の様な急所を打ち付けられる前に別の場所で着地しておくことで急所を守る術である、柔道における前回り受け身の全身版と言えるだろう。


「来ないなら俺が行くぞ」


 熊倉がふらつく宗一に向かって駆けだす、それに誘われるように宗一が動き出す、考えてではなく本能であった。

 両者の拳が交差する。

 宗一の腹部に拳が叩きつけられた。

 一瞬宗一の肉体が宙に浮く。

 ミシミシと骨の軋む音が聞こえる、異常に固い拳であった。

 殴られたとて宗一の拳も熊倉に当たっている為ダメージは軽減してはいるが、それでも鍛え上げられた身体でなければ、呻き声をあげながら地面をのたうち回っていただろう。

 ゾアッと腰に熊倉が組み付いてくる。

 不味い、タックルか‼

 スクロールは体重差でむり。

咄嗟にクラッチされた瞬間に熊倉の顔の方向を別の方向に変える、人間というのは顔が向いている方向にしか力が入らない、それ故に宗一と熊倉の体重差があってもタックルが切れるようになるのだ。

ゴチャッ‼

崩した熊倉の顔面に宗一の膝が叩き込まれる。

ガゴンッという衝撃が熊倉の脳を走り抜ける。

咄嗟に額で受ける、頭部で最も固い部分である、拳程度なら問題ないのだろうが、それでも膝蹴りというのは強烈であった。

受けた部分がカッと熱くなる。

それでも熊倉はうめき声は出さなかった。

無言で宗一を殴りつけた。

両腕で体を庇う宗一を容赦なく殴り続ける。

口の隙間から零れ出る空気がふぅーふぅーと聞こえてくるのが不気味だった。

 宗一が殴る。

 熊倉が殴る。

 交互に殴り合う拳が激しい花火を散らし合う、熊倉が体格で宗一を圧倒し、宗一が拳を捌く、本来であれば対格差から考えれば宗一が打ち合えるのはあり得ない、だが神がかり的な反射神経と経験からくる先読みの力が、一歩踏み外せば奈落の底に落ちる綱渡り的な戦闘を可能にしていた。

 宗一自身も拳を捌いてはいるもののそれでも全てコントロールできるわけではない、体に当たってはいるがガードの腕が何処かで緩衝しているため、完璧なダメージを負うことは無かった。

 熊倉の右ストレートに反応する。


 「しゃあ‼」


 宗一が掛け声とともに熊倉の腕に飛びついた。

 飛びついた片脚を相手の腋の下に、もう片脚を首を刈るように振り上げて、ぶら下がるように自体重で熊倉の体を「く」の字状にし、その勢いを利用して回転し腕挫十字極める、それが飛び十字固めである。


 「っ……⁉」


 熊倉の表情に苦悶の色が浮かび上がる。

 思いっきりねじり上げる。

 ミシミシと音が伝わってくる。

 宗一の腕の中で熊倉の腕が悲鳴を上げているのが分かる。

 しかし完全に極ったわけではない、関節技というのは意外と繊細なものである、正しいフォームに関節の構造を理解してなければならない、一㎜でもズレれば効果は激減してしまうのだ、そして熊倉はその腕力でギリギリ関節を極めきる寸前まで耐えているのだ。


 「くっそ……タレが……っ‼」

 「マジかっ⁉」

 

熊倉は脚を震わせながら立ち上がる。

 熊倉は腕一本で宗一を支えているのだ。

 宗一は93㎏ある。

両手ならまだしも片腕でそれをやってのけているのだった。


 「受け身はとれるかい?」

 

ニヤリと熊倉が笑う。

 その瞬間、全員が直感する。

 その技だけは不味い‼

 宗一に対して忠告を叫ぼうと瞬間、爆音がそれを掻き消した。

 ドカァン‼

 想像を絶する爆音であった。


 「嘘だろ……人間かよアイツ……信じらんねぇ」


叩きつけたのだ。

 人間を一人片腕で持ち上げ、それを全力で地面に叩きつけたのである。

 熊倉の身長を考えれば2m以上の高さだったのだろう。

 普通であれば全身の骨がバラバラになるであろう衝撃が宗一を襲ったはずだ。

 

「流石だな、それが分水ってやつか」


 ギリギリのところで腕十字を解き、先程の分水を発動し衝撃を緩和していた。


 「てめぇ……もうどうなっても知らねぇぞ」



宗一は脇を抑えながら身を震わせていた。

 宗一の中にあるのは怒りであった。

 己の未熟さ。

関節技とは小さい者が大きい者を制する事が出来る技である。

 その為に存在する技だというのに力で返される、そのことが宗一にとっては許せない事実であった。

 柳流の技ではない、だがそれなりに自信をもって繰り出した技であった。

 ゾクッと宗一以外の人間の背筋を走り抜けた。

 熊倉は足元から首に無数の虫が這いあがってくるかのような感覚に襲われた。

 怖い。

 ただの攻撃ならば大抵耐える自信があった。

 しかし宗一の発する空気はこれまでとは違う、異質な『何か』を纏っていた。

 殺される。

 自分が殺らなければ。

 闘うように指示した社長の言葉を思い出す。

 『柳流にだけは気をつけろ、俺達と同じ裏技がある、そいつを出し始めたらお前も五体満足じゃすまないだろうな』

汗が噴き出す。

 鼓動が早くなる。

 自分にその覚悟があるのか?


 「いくぞ熊倉ぁ‼」

 「うあああああぁぁぁ‼」


 これまでとは違う恐怖と不安の入り混じった絶叫であった。

 宗一が走り出した。

 それに呼応するように熊倉も走り出す。

 プロレスにも裏技がある。

無論熊倉もその技を磨いている、それを先に使えばチャンスはある。

宗一と熊倉の技が交差する。

熊倉の狙いは顔。

宗一が胸である。

いずれにしろ血を見るのは必定であった。


 


 「止めろぉぉ‼」


 互いの技が決まろうという瞬間、宗一と熊倉の視界が一転した。


 「「ぐっ⁉」」


 熊倉と宗一はいつの間にか宙に浮かび、強制的に互いにスタート位置まで戻されていた。

 無論、それを行った犯人は大方予想は点いていた。


 「邪魔するなよ勇樹」

 「立ち合いをするのは構わない、だがここは何処まで行こうと学校だ。ある程度の怪我までなら演武として処理はできる、でもここで殺人が行われるのは流石に見逃すことは管理人としては承知できない」

 

異論は認めない、強い決意を秘めた眼つきであった。

 溜息を吐きながら宗一は発していた殺気を収めた。

 漸く道場を縛っていた緊張が解かれ安堵の空気が流れ始める。

 

「成程、怪物は宗一だけじゃないって訳だな。こりゃ一筋縄ではいかないのか」

 「熊倉さん、今日の所はここいらで引き上げてもらえませんかね」


 勇樹が下手にでて提案をする。

 熊倉自身も既に殺気を収めていた。


 「そうだな、宗一ってのも味見は出来たし……五体満足で帰れるんだからまぁ上々だろう」

 「外まで送りますよ」


笑いながら熊倉は一礼をして宗一と共に場を後にした。

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