第39話 それぞれの再会
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やがて、切り通しの谷の奥に見えてきたのは、突き当たりの岩が張り出し、まるで神殿の入り口のようになった、あの洞窟の前である。
「ここだ」
ルビーチェが、緊張した声でいった。
「この奥に——」
洞窟から吹き出る異常な魔気の強さから、ここが谷の中心であることが明らかであった。
そのとき、ルビーチェの背から、姫の身体が、自らの意志で降りた。
そして、洞窟にむかって、自分の足でしっかりと立った。
首のない姫の身体も、なにかを感じ取っているらしかった。
その両脇に、ルビーチェとグレンが並ぶ。
「さて、どうするか——」
しかし、彼らが踏みこむ前に、洞窟の奥の方で、動きがあった。
「アイッ!」
「アイッ!」
「アイッ!」
なにやら甲高い叫びが聞こえた。
そしてたくさんの小さな足音が聞こえ、その音がだんだん近づいてくる。
「アイッ!」
「アイッ!」
「アイッ!」
「おやおや、こちらがなにもしなくても、向こうから来てくれるようだぜ」
とグレンが笑う。
そして、
「アイッ!」
「アイッ!」
「アイッ!」
甲高い声がすぐそこまできて、見守るルビーチェとグレンの目の前で、洞窟の中から、まず現れたのは、白い服をまとった痩せぎすの男。手にはなにも持たず、その首にはまるで首輪のように、真紅の輪がはまっている。
男は、グレンと目を合わせ、苦虫を噛み潰したような顔をした。
あきらめもその顔には浮かんでいる。
「よお、シャスカ」
と、グレンが呼びかける。
「しばらくぶりだな、さがしたぜ」
「……」
シャスカは無言だ。
「お前なあ、いいかげんあきらめろよ、おれたちはそういう定めなんだから」
「それが嫌だといってるんだよ、私は!」
と、怒鳴るように返した。
「ま、それはそうとして、麗しの姫様はどうしてる? お元気か?」
グレンは、シャスカのそんな様子などどこ吹く風で、言った。
シャスカが、洞窟をふりかえり、首で示した。
「アイッ!」
「アイッ!」
「アイッ!」」
後ろから、大勢のキノコ人間に担がれた
輿の上にのるのは、金髪を流れるように垂らした、若く美しい女性の首。
モルーニア姫だった。
自分を見つめるルビーチェの姿を認め、榛色の姫の目が大きく見開かれた。
「ルビーチェさま! ほんとうに、来て下さったのね……」
「ああ、姫……もうしわけない」
ルビーチェが深く頭を下げた。
「ルビーチェさま……」
姫の澄んだ目から、涙がこぼれた。
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