火葬場で、棺桶ごと遺体は燃やされて残ったのは人型のぼろぼろとした骨。それを芽衣の両親はぐっと涙を堪えながら箸で摘んで骨壷に入れた。


「うっ」


 遺骨を回収する両親と、そのそばでいまだ泣きそうな美樹の近くで思わず私は顔を顰めた。

 臭い。燃えた遺体が置かれているこの部屋は思っていた以上に臭くて鼻を押さえた。


「芽衣ぃ……」


 悲しみが勝っているのだろうか、この異常な臭いのする部屋で美樹はもう原型をとどめていない芽衣に縋るように涙を流した。



「私は……私はどうしたらいいの?」

「つらいことがあっても、頑張って生きるしかないんじゃないかな」


 遺骨を骨壷に収め、隣の待合室のような部屋で項垂れるように椅子に座り込む美樹の問いに応える。


「芽衣がいなくなったら……私」

「美樹ちゃん、これでも飲んで落ち着いて?」


 そう言って私の横から紙コップに入った温かいお茶が差し出される。


「芽衣ちゃんが亡くなったのは悲しいことだけど……生きている私たちは前に進まなくちゃ、だよ。きっと芽衣ちゃんもそう思ってるはず……私、芽衣ちゃんと話したことあんまりないけど」


 彼女はそう言って美樹の隣に腰掛けた。美樹の友人だ。芽衣たちとは隣のクラスの子だった気がする。私はあまりこの子については詳しくない。


「芽衣ちゃんは美樹ちゃんのお友達ってことくらいしか知らないけど……優しい子だって聞いたことがあるよ。だからいつまでも友達の美樹ちゃんが泣いてると、芽衣ちゃんも悲しんじゃうと思うよ?」

「そ、うなの、かな」


 友人の言葉に美樹が顔を上げた。いつもの気が強い美樹と同一人物だと思えないくない、たどたどしい声だ。


「うん、きっとそうだよ。だから元気出して!」

「……うん、そうだね。芽衣はだもんね」


 友人の言葉に美樹の表情が少しだけ和らいだ。

 私の言葉は聞いてくれないのに、彼女の言葉は聞くんだ。そう思うと少しムッとして、頬を膨らませた。

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