返してください

第16話 謀反

イリーナは、ジン帝国へ戻って来た。皇妃に会う為に、オージンと共に皇城へ向かった。皇城には、沢山の兵士が集まっていた。城門の中から、戦闘音が聞こえてくる。

オージンは、前へ出ようとするイリーナを止めた。

「イリーナ。様子がおかしい。」

「ええ、どうしたのかしら？」

城門の中では、ジェフリー公爵家の家紋を身に着けた私兵達と、帝国兵が戦闘をしていた。

明らかに帝国兵の数が多い。ジェフリー公爵の私兵達は、追い詰められていた。

帝国兵が声をかけてくる。

「オージン様！」

「何があったのだ。どうしてジェフリー公爵が、、、」

「謀反です。陛下を弑逆しようとジェフリー公爵家と皇妃が兵士を送り込んできました。陛下はご存じだったみたいで、ジェフリー公爵と皇妃は既に捕らえられております。ここもすぐ制圧されるでしょう。」

私は、尋ねた。

「皇妃様にお聞きしたい事があります。お会いできますか？」

帝国兵は、驚いた表情をしていたが頷き、私達を皇妃の元へ案内してくれることになった。

皇妃とジェフリー公爵は、皇城の応接室に閉じ込められているらしい。

イリーナは、応接室へ入って行った。

応接室では、ジェフリー公爵らしき人物が倒れこんでいた。顔や手は青白くすでに息絶えている様子だった。

イリーナは驚き思わず後ろへ下がった。

そんな、イリーナをオージンが抱きしめてくれた。

応接室で立ちすくんでいる皇妃が言った。

「貴方のせいよ。貴方さえいなければ、こんな事にならなかった。

貴方のせいで、私は陛下を失ってしまった。

貴方のせいで、私は、、、間違えたのよ。

こんな事になるはずじゃ無かった。私が望んだ事じゃなかった。

お願いよ。返してください。

陛下の関心を、愛を私に返してください。」

イリーナを見ながら、窶れ憔悴した皇妃は訴えてくる。

イリーナは言った。

「私は何も奪っていません。舞踏会で初めてお会いしたではないですか！まさか、勘違いで私を殺そうとされたのですか？」

皇妃は、ゆっくりと体を揺らしているようだ。

視点は定まらず、どこか遠くを見ていた。

「いいえ、あの女が貴方を身ごもったから私達は壊れてしまった。貴方さえいなければ私は今も陛下の側にいたはずなのよ。銀髪の庶子なんて存在してはならない。そうでしょう。貴方。」

皇妃は、イリーナ達の後ろを見て言った。

イリーナは振り返る。

そこには、イカロン・マックバーン皇帝が立っていた。