思い出のマフラー

ミケネコ ミイミ♪

思い出のマフラー

 雪が深々と降る寒い日。私は駅前のベンチに座り、目の前を行き交う人々をみていた。


「う、さむ……」


 手を擦り合わせながら息を、フーッと吐きかける。


「まだ来ない。寝坊かな?」


 そう思いキョロキョロしてみるも彼がくる気配はなかった。


 __そういえばこのマフラー。二年前の大晦日の日に、智夜がくれたんだよね。あの時は、もっと寒くて雪が降ってたなぁ__


 そう思いながら首に巻かれているマフラーを、ギュッと握り締めた。と同時に瞼を閉じ、ニヤニヤしながらその時のことを思い浮かべる……。




 その日は、朝から庭がみえないくらいに雪が降り積り、凍りつくんじゃないのかと思うほどに寒かった。


 私は智夜と二度目のデートだぁと浮かれながら家を出る。



 そう一度目はクリスマスの日。その日の数日前に智夜に告白をした。結果、オッケーをもらいクリスマスにデートしようと誘われたのだ。


 その日は映画や食事などをした。



 __今日は大晦日だけど、流石にこの雪と寒さで歩いてる人が少ない__


 そう思い待ち合わせの駅前のベンチで智夜を待った。


「寒いなぁ。屋根があっても、風があるからあまり意味ない。マフラーぐらいしてくればよかったかなぁ」


 深々と首をコートで覆いブルブルと震える。

 私は待ち合わせの時間より、三十分前に来ていた。だけど、それから一時間経っても智夜がくる気配がない。

 何かあったのかと何度もスマホの画面をみる。……なんの連絡もない。

 幾度か連絡をして確認しようかと思った。でも、もしかしたらもうそこまで来てるかもしれないと思いとどまる。


 ……そうこう考え、ここに来てから二時間が過ぎた頃。流石にこんなに遅いのはおかしいと思い、智夜に連絡をしようとする。

 とその時、息を切らしながら智夜が向かってくるのがみえた。

 私は、ホッとし肩の力が抜ける。

 側までくると、智夜は「ごめん、遅くなって--」そう言い申し訳なさそうな顔で手を合わせ謝った。


「ううん、大丈夫。だけど、どうしたの?」


 そう聞くと智夜は、大事そうに抱え持っていた白い紙袋を私の目の前に差し出す。


「これ、この前ネットカタログで欲しいって言ってたやつ、」


「えっ!?」


 そう言われその紙袋を受け取り中身をみる。と驚き嬉しくなり涙を浮かべた。


「このマフラー。既製品だけど、ネットでも中々手に入らないはず。でも、どうして?」


「クリスマスの日に何もプレゼントできなかっただろう」


「うん、だけどあの時はいろんな所に連れて行ってくれたし」


 そう言うと智夜は首を横に振る。


「いや……。だから喜びそうな物をプレゼントしたくて、入荷したところを狙って購入したけど届いたのが今日だった」


「そっかぁ。そうなんだね。ありがとう……」


 欲しかったマフラーよりも、智夜のその気持ちが嬉しくて浮かべていた涙が流れ落ちた。




 __その時は本当に嬉しかったと……。思い出し笑いをしながら智夜を待つこと三時間。やっと智夜の姿がみえた。

 二年前とは明らかに違う足取りだ。ゆっくりゆっくりと、それもビクビクしながら近づいてくる。


「やっぱり、これは寝坊かなぁ」


「ごめんっ! 遅くなって……」


 そう言いながら智夜は手を合わせ何度も謝った。

 私は、ハァ〜と息を漏らす。


「また夜通し、ゲームかアニメでもみてたんでしょ?」


 そう問われ智夜は、ポリポリ頭を掻きながら申し訳なさそうな面持ちで頷く。

 その後その埋め合わせということで、私の好きな所に連れて行ってくれた。__【完】

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