第13話
それからの毎日はあっという間だった。おじじが私に精霊たちの名前を付けるように言ったのは、精霊魔法を使うための足掛かりとなる、”繋がり”を作るためだったらしい。この”繋がり”を持った精霊が司る属性の魔法を使うことが出来るのが、精霊魔法なのだという。
つまり私は今、木の木蓮、火の燎火、水の和泉、風の楓香、土の蒼仁、この5人との”繋がり”を持ち、それぞれが司る魔法を使うことが出来る状態にある。
はじめに私たちは精霊魔法について色々と教わった。5人も真剣に聞いており、彼らの意志の強さを改めて感じた時間だった。
精霊魔法は、普通の魔法とは違って精霊の力を借りて使う。普通の魔法が、使用者個人の魔力を必要とするのに対して、精霊魔法では精霊が自然の力を使うので魔力が必要ないそうだ。精霊魔法は基本的に、使用するときにはしたいことをイメージするだけでいい。その点、普通の魔法では魔力を込めるために呪文を唱える詠唱をしなければならない。それも長ったらしい呪文らしく、魔法を使うには呪文が書かれた魔法書が不可欠なようだ。
一連の説明を聞いた精霊たちは、自分たちの使える魔法の有能さに感動していた。早くやってみたい、という期待の眼差しが痛いほどに突き刺さる。
ただ精霊魔法は精霊が自然を操る魔法のため、水の精霊の力を使うならば水がある場所でなければ、十分に威力を発揮できない。例えば、水の中で風の精霊の力を使おうとしても、全く発動しないか、発動しても威力が弱いかになる。
だけど私は五大精霊全てと”繋がり”を持っている。……待って?もしかして私、弱点ない?いやいや、過信はよくない。命がかかっているのだ。真剣にならなければ。
それにおじじいわく、精霊魔法には”繋がり”の強さも関係するらしい。”繋がり”の強さ、すなわち精霊からの想いの強さだ。
《ユカ殿、まずは”繋がり”を感じるのですじゃ》
おじじに言われ、最初に”繋がり”を感じる練習が始まった。精霊1人ずつと手を繋いでからのスタートだ。
最初は木蓮。
《2人とも目をつぶるのですじゃ。相手の方に意識を向けて、集中ですじゃ》
「……あ、これ……かな?なんかふわふわしてる気がする」
《私分かった、ユカと繋がってるよ》
木蓮はすぐに分かったようだ。私はまだはっきりとしない。ふわふわと漂っているようなものは感じるが、それが木蓮かと言われれば、どうなんだろう……というのが正直なところ。
お次は燎火。
「うわっ、これだ。すぐ分かった」
《燎火も!》
燎火からの圧も含まれているような”繋がり”をすぐに感じた。まだ私が黙って森を出ようと考えてたこと怒ってるのかも……。燎火は私との”繋がり”に気づけて嬉しそう。うん、大丈夫だ。
その次は和泉。
「んー、これかなぁ……」
《僕、分かる》
和泉との”繋がり”は感じるような感じないような。見つけた!と思ったらひょいといなくなっちゃうし、見失ったらまたひょっこり出てくる感じ。なんだか和泉そのもののようだ。照れて隠れちゃうけど、寂しいから見てて欲しいみたいな。和泉の方はやっぱりすぐに分かったらしい。
そして楓香。
「あー、これかな、なんか元気だし」
《僕分かったー!ユカだ!》
楓香からの”繋がり”は線で繋がってるというよりも、びゅんびゅん飛んでくる感じ。元気に飛び回る楓香らしいといえば楓香らしい。楓香自身は私との”繋がり”を早々に見つけて喜んでいる。
最後は蒼仁。
「おぉ、なんか一直線だ」
《俺も分かった》
蒼仁からの”繋がり”は、慣れてくると綺麗な一直線で繋がっているのが感じ取れた。弱すぎず強すぎず、ちょうどいい。蒼仁もやはり私との”繋がり”はすぐに分かっていた。
精霊たちは感受性が強いのか何なのか、皆すぐに私との”繋がり”を感じ取れている。対して私はまちまちだ。燎火のはすぐに分かるぐらい強かった……てことは燎火は私のことをそれだけ強く想ってるってこと……だよね?もちろん他の子たちが弱い、という訳じゃないけど。
そんな私だったが、何度か練習を繰り返すうちに、彼らとの”繋がり”を継続的に感じ取れるようになっていった。
今日は目をつぶった私の後ろで精霊たちが一列に並んで、それを私がどの順番に並んでいるかを当てる練習。
「右から和泉、燎火、蒼仁、木蓮、楓香!」
《せいかーい!》
こんな感じですぐに当てられるようになった。精霊たちも嬉しそう。
ちなみに、どうやって”繋がり”を感じ分けているかというと、ほとんど感覚に近い。しいて言うなら、それぞれの性格が出てると思う。例えば燎火のは強いし、蒼仁のは真っ直ぐ。楓香のは飛んでくるし、木蓮は柔軟、そして和泉はずっとべったりくっついてる感じ。それぞれの癖を掴めるようになってくると、皆の想いが強いのが分かって嬉しくなる。
こんな感じで精霊魔法を使うための第一段階は完了した。
といっても、後はしたいことのイメージを”繋がり”を通して伝えるだけ。と思っていたら、これが案外難しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます