第7話
「あの、この森には今精霊になれるのになれてない子たちはどれくらいいるんですか?」
和泉の名付けも一段落したので、気になっていたことを長老様に聞いてみた。
「私の力で精霊になれるのなら、と思いまして」
《ふむ……その時が来たら自ら寄ってくると思いますじゃ。あの子たちにもそれぞれタイミングがありますしの。ほっほ、ユカ殿はお優しいのですじゃな》
それだけ言うと、長老様は部屋の奥へと去っていった。
そうか、小精霊たちも心の準備とかあるだろうし、皆が皆早く大人になりたいわけでもないのか……。
そうなると自分から寄ってきた和泉はまだしも、木蓮が精霊化したのは私が触っちゃったからだし、燎火は長老様に呼ばれてだったよね……。2人ともそれで良かったのかな?
そう思いながら、すやすやと眠る2人を眺める。
《2人とも、喜んでた、よ?》
控えめな声がした。私の隣に座っていた和泉だった。
和泉がたどたどしく話してくれたことによると、和泉が精霊化したいと思った最初のきっかけは、木蓮の喜ぶ様子を見たからだそうだ。燎火もひそかに憧れていたようで、長老様に言われて木蓮が1人探しに来た時、自分からアピールしていたらしい。あの場での戸惑った様子は演技だったのか……。まぁあの部屋、小精霊は勝手に入っちゃいけないことになっていたらしいし、本当に戸惑ってた部分はあるよね、多分。
《だから、大丈夫》
そう言って励ましてくれる和泉。
ん?ちょっと待って?
「……今私、何も言ってないよね?」
木蓮と燎火の精霊化について考えてたのは考えてたけど、それを口に出してはいないはず。なのに和泉はどうして私の考えてることが分かったの……?
《なんか、手から、来た》
そういえばずっと、ベッドの上に置いた私の手を握っていた。
「和泉、もしかして心読める?」
私の言葉に首を傾げて、なおも手をにぎにぎしている。とても可愛い。
しかしこのことについては和泉自身も分かっていないようなので、後で長老様に聞いてみることにした。
「ふあぁ、私も眠たくなってきた……」
気づいていなかっただけで、疲れは溜まっていたみたいだ。元の世界でも、仕事仕事であんまりゆっくり睡眠とれてなかったし、ここに来て久しぶりにのんびりしたからかな。
そう、保育士という職業はなかなかハードなのだ。日々の遊び1つ1つも、年齢に合った発育を考えて提供する。行事もたくさんあるし、保護者の方とのコミュニケーションには細心の注意を払う。そのうえで子ども1人1人と向き合い、愛情を注ぐ。残業だって持ち帰りの仕事だってたくさんある。
それでも私が保育士として働くのは、ひとえに子どもたちの笑顔が見たいからだ。あの笑顔はどんな疲れも吹き飛ばしてしまう力がある。だからこそ、給料が低かろうと、休みが無かろうと働ける。
膝の上の燎火の温もりと、手から伝わる和泉の体温、規則正しい木蓮の寝息を聞いているうちに、私はいつの間にか眠ってしまった。
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