第2話 マスクは世界の共通言語
「じゃあ、とりあえず誰にするかは置いといて、一緒に来てもらったらどうかな? あっ、あたしは
三人並んだ女の子のうち、俺より少し背が低いくらいの活発そうな子が栗色の長いツインテールを揺らして提案した。
それにしてもその衣装、露出度高すぎない? 軽く新音に駆け寄っただけなのに、胸がかなり揺れてジャケットをはち切りそう。白い太ももも目に痛いくらい主張してるんだけど。
「ううむ、それでもいいか……」
煮え切らない様子の新音。
「わたしも……それでいいと、思います。わたしは
三人の真ん中に立っていた薄ピンクのショートカットの小柄な子は、自信なさげに両手指を合わせながら自己紹介してくれた。
「私はここで決めて欲しいわ。ねえ、佐登留くん……だっけ?」
最後にブラウンがかったグレーのストレートロングヘアが風で広がるのを押さえながら、ほんわかしたお姉さんがにっこりと微笑み質問した。
「はい」
「私は
虹華の華奢な手が突然俺の頬に触れて、優しく撫で上げる。
「ひゃっ」
「可愛い……。ねえ、私と結婚して……くれる?」
はあ!? 結婚? 話が飛躍しすぎじゃない?
「ちょっと待って虹華さん! 抜け駆けしちゃダメだよ!」
優海が慌てて間に入ってきた。
「そうです。それでは平等ではありません……」
彩雨も控えめな表情ながら虹華に不満を言う。
「いいじゃないの、早い者勝ちよ?」
「そういうわけにはいかない」
新音が虹華を制した。
「今回のこのツアーだって希望者の中から厳正な抽選を行った上で実施しているんだ。当選できなかった者たちにしっかりした経過の説明をする必要がある」
「……分かったわ」
何のことだろう。ツアー? 抽選? この子たちはどういう世界から来てるんだ?
「さて、少しフライングもあったが佐登留くん、君にはこの三人の中から未来の結婚相手を選んで……ごほん。いや、結婚相手兼冒険のバディを選んでもらいたいのだが」
さっきから微妙に怪しいんだよな、この新音とかいう神? のようなお姉さん。
「うーん、しつこいようだけど俺はやっぱりちゃんとマスクを外した顔を見たいな。こっちの顔も見せないと礼儀的にも良くないと思うし」
正直な気持ちを伝えた。
「マスクは絶対着用だ。これがなくては私たちの会話は成り立たない!」
そんな滅茶苦茶な。マスクを共通言語みたいに言ってるし……。
「あとどんな世界なのか教えて欲しいな」
「世界……、そうだな、『ここではない世界』とでも言っておこう」
抽象的過ぎる……。
「それよりさっきからみんな会話の声が大きい! 小声で! こらそこ、マスクをズラさない!」
新音……、ここ雲の上だよ。電車内じゃないからね……。これから転移するであろう場所がどんなところかも分からないし、顔の情報も少ないし、もはやスパイだな。もしかしたらみんな偽名かもしれない。
「私としては早く佐登留くんに選んでもらいたい。一応ツアー中に相手に選出される……というのがみんなに説明している流れだからな」
戸惑う三人に目をやり、新音が告げる。
俺のよく分からないところで勝手に話が進んでいるようだ。
「うーん……、それなら思いっきり顔を近づけて決めてもらったらどうかな?」
優海が提案する。
「彩雨ちゃんもその方法でいい?」
虹華が尋ねると、
「はいっ、だ、大丈夫です」
焦った様子で答える彩雨。
が、
「危険だ」
新音はにべもない。
「もう、いい加減神経質すぎるわ……。彩雨ちゃんも来て? ええいっ」
業を煮やした虹華と彩雨が新音の脇腹を後ろからくすぐる。
「うひゃははははっ! やめろっ! やめて……、ダメ……、あああっ……あうんっ」
新音はひとしきりもがいた後、涙目で這いつくばった。
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