40〜うぜぇええええええええええええええええええ!!!
その小部屋は、多分城門を警護する兵士の待機場か何かであろう、石造りの剥き出しの壁に、食器棚があり、休憩中にお茶を淹れたり食事が出来るようになっている。
そこに、相変わらずイケメンな斉藤さん、そして何故かいる私の父親、こちらは私と坂倉さんと、立会人として第一王子がいる。
一応王子の世話係もいる。
当然、王族の人間も部屋に来たので、兵士も私の父親も慌てて礼をすると、斉藤さんも状況を察して、少し遅れて礼をする。
「何でふたりが?」
私は目の前のあり得ない組み合わせの理由を訊いていた。
さっきは坂倉さんがメイドさんの話を途中で遮るものだから、てっきり斉藤さんだけで来たのかと思っていたのだけど、最後まで聞いていれば父親も来ていたのが分かってたから、私は来なかったのに。
いや、やっぱこの組み合わせは気になって、来てしまっただろうか。
「学校に行ったら、ふたりして休みだし、坂倉の友達が城に連れてかれたって言うから、慌てて山本の家に行ったらお父さんがいて」
斉藤さんはそう言うが、それでもふたりでここに来る理由にはなっていない。
「私がふたりは婚約してると言ったら、子孫はどうするんだと、いや私は弟を今から作ると言ったら、また女の子だったらどうするんだと」
父親がそう説明するが、どうやら女性同士の結婚では血縁関係のある子供が産まれないから英雄の血筋が途絶えると、斉藤さんはそう危機感を煽ったらしいが、それでも、何でそれでここにふたりで来たのかは分からない。
「だから、坂倉との婚約を破棄して、子供を作れる家庭を築くべきだと進言したんだよ」
うぜぇええええええええええええええええええ!!!
斉藤さんは、そんな他人の恋愛に口出しするためにここに来たんですか?大きなお世話だよ!
「大きなを世話だろ」
私の気持ちを坂倉さんが代弁してくれました。
「斉藤のキモい生殖欲求に何で付き合わないといけないんだよ?そういうのはこっちで考えるから部外者は出て行け」
相変わらずのキツめの言い方で彼女は斉藤さんに言い放つが、彼も私を溺愛してるからか、
「いいや、坂倉こそ自分の欲求で英雄の血を絶やそうとしているだろ?あの時の魔力がおかしいと思って色々調べたんだよ、そうしたら魔族なら可能と分かったんだよ」
私の脳裏には坂倉さんの、
「私には魔族と同じ血が流れてるから」
という言葉が
しかし彼女の行動に、英雄の血を消し去ろうなどと
それとも、恋に溺れて正確に判断出来なくなってしまっているのだろうか?
「それなら山本の両親を亡き者にすれば済むだろ?」
彼女の言葉が真っ当過ぎたのか、斉藤さんは押し黙ってしまった。
そんな痴情のもつれに、少しばかり申し訳なさそうに第一王子が斉藤さんを見て、
「君が琉士くんか、君の父上には触媒の調達に際して大変お世話になった、大変感謝している」
さすが貴族の息子、親が王子に翻意にされているとは流石だなと感心していると、
「その調べた内容を詳しく知りたいのだけど、時間はあるかな?」
などと、坂倉さんを疑う側の意見を訊きたがって、ちょっと嫌な予感がするのだった。
「用が終わったのなら帰るぞ?」
そう言って坂倉さんは私の手を引いて、面会をしていた部屋から出ようとする。
それを見た王子は、付き添いの世話係に、私たちを案内するように言ったので、それに付いて行くことにした。
「お前の親が早く弟作ればいいんだよ、明日にでも精力増強のレメディでも送ってやるか」
彼女が冗談で言っているのか、そんなレメディがあるかは知らないのだけど、私に弟が出来ればそれはそれで嬉しいかも知れない。
しかし、あの斉藤さんの執念もちょっと怖くなってくるものがあるな、と窓から城門の方を見ると、彼目当てだろうか、女子生徒が城の前にたくさんいる様子が見えた。
「何であんなにモテるのに私なんだろう?」
あの群衆の中の殆どは、私より可愛くて頭もよくて無条件にイケメン斉藤さんを受け入れてくれるだろうに。
恋は上手くいかないと思うしかなかった。
「放って置けない、母性本能、斉藤なら父性本能になるのか?それでいて従順だし、私がいないと生きていけなさそうな儚さのような」
何か坂倉さんが、私に虜になる要素をいくつも挙げていくのだけど、いや、それって小さい子供扱いなんですけど…
「お前に泣かれたら、どんな極悪人でも許してしまうだろうな」
そう彼女は続けるのだが、そうですか、なら何かあれば嘘泣きして全てを従わせますよ、ステルススキルより使えそうな能力ですね…
「昼食まで時間がありますので、お部屋で待機をお願いします」
部屋まで案内してくれた王子の世話係がそう言ってお辞儀をすると、私たちは部屋の中に入り、ふたりでベッドに倒れ込んだ。
「王子が斉藤さんの調べたこと訊いて、どうするんだろうね?」
さっきのことがちょっと気になって坂倉さんに訊いてみるも、当然のように、
「知らん」
としか答えてくれない。
そもそも、あの王子も坂倉さんに妙な興味を持っていたので、もしかしたら魔族の血が流れていることを薄々勘付いていたのではないかと思い始めている私なのだ。
「坂倉さんが魔族の血が流れているのを知ったら、どうなるのかな?」
彼女の肩に頭を寄せて、ふたりで天井のシャンデリアを見ながら私は訊くのだが、
「どうなろうと、私は山本を守るだけで、それ以外どうでもいい」
そう言って私の頭の下から腕を差し込み、その手で私の顔を抱えるようにして髪の毛の匂いを嗅ぐように大きく息を吸って目を瞑るのだった。
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