27〜おじいちゃん、不細工に救われる!
坂倉さんの書斎のような、本ばかりの部屋には、魔法関連の古い本がたくさん並んでいる。
それはどう見ても、私たち魔法学校の一年生が理解出来ないような難しそうな本や、数々の調合レシピを記したものなど、とても14歳の人が蔵書しているようには見えないものばかりであった。
やっぱり、頭のいい人は知識も常に得て、更に高みを行くのだなと思うばかりである。
「準備できたぞ」
そう言うと、坂倉さんは私たちを呼びに来るのだった。
「莉里アルバムどうする?」
そう言うと、喜多さんはさっきのアルバムを頭の上に掲げていたが、
「いらん」
と、あっさり却下されてしまっていた。
みんなが玄関に集まると、大きなバッグをいくつも玄関付近に並べてあって、各自それを持つと、ブレーカーを落とそうとして、ふと冷蔵庫を見れば、
「心配すんな、ヤバいのは全部食べておいた!」
と友達が高らかに言うので、そのままブレーカーを落として部屋を出るのだった。
私の家まで行く道を、友達はさっき食べたものも解説や、喜多さんはアルバムに写ってた場所の思い出話しなどしながら歩いて行く。
すると、とても高級そうなリムジンと警察車両が私の横をかなりのスピードで走り抜けていき、友達が、
「あれお城の御料車じゃね?」
と言うと、私は嫌な予感がした。
「ちょっと急ごうか」
坂倉さんも同じくそう思ったのか、早足になり、私たちも慌ててそれに付いていくのだった。
嫌な予感は的中した。
私の家の前には先の警察車両と国賓用だろうかリムジンが停まっている。
その周りを警備しているように、警察官が数名取り囲んでいて、玄関にはまるで犯罪者として捕まったように、父親が心配そうに立っている。
その手には例の禁レシピの本があった。
「いよいよ有事が近いのかもな」
坂倉さんが、足を更に早めにしてそう言うと、急いで歩いて来たのも手伝ってか、私の心臓の鼓動は早くなっていく。
「あ、来ました」
私たちを見つけた父親が、安堵の顔でこちらを見て言う。
そうすると、父親の前に立っていた軍服姿の人がふたり、こちらに近づいてくる。
ひとりは若く、愚直そうな感じで、もうひとりは
「山本優羽さんですね」
そう言うと、私は頷いて、若い軍服の人は国王が発行したと思われる書面を見せて、
「王に召集を勅命で受けたので、一緒に来てください」
そして、
「坂倉莉里さんはどちらに?」
と言われると、坂倉さんは無反応だったので、
「この人です」
と私が手を向けると、彼女にも先の書面を見せて、
「同じく勅命で召集がかかってます、一緒にお願いします」
そう言われたので、坂倉さんは友達に、
「ごめん、荷物を山本の家に届けといてくれ」
と告げて、ふたりでリムジン乗るのだった。
「この本でよかったですよね?」
若い軍服の人は、父親が先ほど持っていた禁レシピの本を受け取っていたようで、
「はい」
と答えると、それを渡されて、
「一緒に持っていてください、国を頼みましたよ」
などと言われて、もう私が魔の民相手に戦う英雄扱いしているようで、ひたすら心の中で無理無理無理無理と唱え続けているのだった。
「王の勅命なので、身分は確かのようですが、坂倉さん、話によるとまだ一年生とか?」
もうひとりの
「14歳が国を守るのに何か不満が?」
坂倉さんも相手の穏やかではない心中を察してか、若干嫌味混じりで答える。
「我が国は世界でも屈指の魔導士防衛隊が組織されていてね、その数は15万人だ」
鼻の下に髭を蓄え、
「君の通っている魔法学校を、優秀な成績で卒業した猛者の集まりだよ?でも君はまだ一年生、しかも英雄の末裔とはいえ、そのふたりだけだ」
そういうと、ため息をつきながら、
「そんな微々たる戦力が加わったとして、役に立つのかね?」
明らかに軽蔑した眼差しで坂倉さんを見ながら言うと、
「その防衛隊を倒せば信じると?」
と、言い返せば、その軍服の人は笑い出し、
「いいねぇ若いと怖いもの知らずで!せいぜい魔の民を目の前にしておしっこ漏らさないように頑張りたまえ!」
よほどウケたのか、隣の部下の肩を何度も叩いて笑い続けていた。
私は私でそんな不穏な空気にハラハラしっぱなしで、多分目の前の部下も同じ心境だろう、若干目が泳ぎ気味である。
やがて、私たちを乗せたリムジンの車列は、王の居城の門を
その広場には、他にも高級そうな車がずらりと駐車してあって、私たちの他にも幾人も召集が掛けられていたのが伺える。
「しばらくここでお待ち下さい、手続きがあるので、準備をして参ります」
そう若い軍服の人は言うと、上官と共に車を降りていくのだった。
「いや…呼んでおいてアレはないよねぇ…」
そう言う私に坂倉さんは、
「確かに14歳の女子ふたりに世界救われたら、あのジジイの人生何だったんだって思うからな」
とか謎の同情をしている様子。
「坂倉さんは腹立たなかったんです?」
ちょっと心配になって訊いてみたのだけど、
「別に」
と相変わらずで、そのまま続けて、
「でも山本のことまで言い出したら、消し炭にしてたかもな」
などと、ちょっと怖い顔で静かに言うのだった。
よかったね、おじいちゃん…私が悪口を言うにも及ばない取るに足らない存在で…
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