25〜お父さん、固まる。
私は愚かだ。
知らなかったとはいえ、両親も恋人さえも失った最愛の人の触れられたくない過去を、無神経に卑しい嫉妬心をムキ出しにして質問しまくるとか。
それでも怒らない坂倉さんに、私は甘えてしまっているだけなのだ。
「お前が気にすることじゃないから」
坂倉さんの前の恋人のことを質問した私が、黙りこくってしまったのを気に掛けたのだろう、そう言って顔を私の頬に寄せて、目を
「でも、何で私のような、こんなどうしようもない、顔も性格も頭も何もかも悪い女のどこがいいんですか、私は自分のことをこれほど嫌になったことなんてないです」
自分でも面倒くさい女だと思っても、言葉は止まらず、もう涙も目に溜まって、今にも溢れそうな状態であった。
「全部」
坂倉さんがそう言うが、ちょっと酸素が脳に行き届いてないのか意味を理解できないでいた。
「私はお前を好きになって、こんなに幸せと感じたことはなかったのに」
そう言う坂倉さんに、また卑しい気持ちで、
「前の彼女が可哀想じゃないですか」
と嫌味満載で言ってしまうが、
「それも前の彼女が望んだことだし」
そう言われて、とうとう私は泣き出してしまった。
恋で私は変わってしまった。
私はこんな優しくて綺麗な
坂倉さんは本当に優しい。
自己嫌悪に
「坂倉さんって誰か嫌いになったことあるんです?」
ようやく泣き止んだと思ったら、開口一番にそんな質問をぶつけてしまう私。
いや、だってこんな面倒くさい女を好きでいられるのは聖人君子くらいでしょ?
「斉藤」
あ、はい、そうですね…
「他は?」
「まぁ基本的に人間は嫌いかな」
そんな答えを聞き出した私は、見事人間じゃないと認定されったってことですね…
「とにかく、お前がどう思おうが、私は一生好きでいるから、好きに思い存分自由に生きてくれ」
前の恋人と永訣した坂倉さんの言葉が心に突き刺さる。
「こんな女ですよ?いいんです?」
まだ涙が残る瞳で、滲んだ彼女の綺麗な顔を見ながらダメ押しのように訊くも、優しく頷いて頭を優しく撫でてくれるのだった。
外ではまだ風が強く吹いていて、どこからか飛んで来たのだろう、金物が転がる音が遠くでしている。
そんな中、ドアをノックする音がして、
「ご飯できたよ」
と父親の声がした。
「あれ、もうそんな時間?」
そういう坂倉さんに私は、
「一緒に食べる?坂倉さんひとり暮らしだし、食事作るの面倒でしょ?」
そう言うと、
「いいのかな?」
と若干乗り気なので、そのまま手を引いて食卓に連れて行くのだった。
テーブルの上には4人分の食事が用意されている。
「いやぁこれからよろしくね、坂倉さん、一緒に暮らせて優羽も喜んでるでしょう」
と父親が言った瞬間、私は忘れていた、そうだ同棲の話をしようと彼女を部屋に連れ込んだんだった、なのに面倒くさい女になってしまって、と思って、父親にまだ話してないと手を横に振ってみたが、それを見た彼は時が止まったようになってしまう。
「一緒に住む?」
当然、疑問に思った坂倉さんは訊いてくるので、
「ごめんなさい、その話をしたくて部屋に通したのに、ややこしくなって、言うの忘れてました…」
そう言い訳をしたら、さすが聡明な彼女、
「もしかして、禁レシピで城に呼び出された時のため?」
と、ちゃんと理解してくれた。
そうしたら時間が止まったようなっていた父親が動きだして、
「そうそう、有事の際に優羽だけ城に行っても意味ないからね、君が一緒ならすぐに対応できる」
と食事の用意を続けるのだった。
「いいですよ、私も一緒に暮らせるのはとても嬉しいですし」
坂倉さんはそう言って快諾してくれた。
「明日荷物持って来るので、今日はご馳走に
続けてそう言ったので、私も、
「私も明日手伝う」
と言うと、
「あいつらにも手伝わせるか」
と少しニヤついた顔で、友達総動員させようと画策するのだった。
次の日の朝は風も止んで、何処からか、その風で運ばれてきたのだろう、落ち葉やそこそこ大きなゴミみたいなものが道路に散らばって落ちていた。
今日はいよいよ、私と坂倉さんの同棲を始める日だ。
昨日のこともあって、相変わらずの自己嫌悪を引きずっているのだけど、これからは面倒くさい女にならないよう頑張らないといけない。
家のチャイムが鳴る。
覗き窓から確認すると、そこには、もうヤバいくらい綺麗な坂倉さんが佇んでいた。
急いで鍵を開けて外に出ると、今日は学校はお休みなので、当然彼女は私服で来ているのだが、それがいつも見慣れた制服と違い、新鮮で思わず
制服の時と違って、身体のラインがくっきりと分かるその
そこから悩めかしい腰つきを辿れば、ぴっちりとしたデニムパンツにお大きめのお尻が収まっており、太腿は大きなお尻から生えているのにも拘らず、背の高さと脚の長さと相まって細いという、もう世界遺産に指定出来るほどの美しさなのであった。
「何?」
坂倉さんの身体を舐めるように見ていた私に、彼女は不思議がって訊いてくると、焦ってしまって、
「ごめんなさい、ごめんなさい」
とただ謝るしかないし、こんないやらしい目で見てしまう自分にまたまた自己嫌悪に陥ってしまっていると、
「別に謝らなくていいよ、エロいのはいいことだ」
などと、完全に見透かされていたようで、彼女はそう言って私の手を握り歩き出すのであった。
そうか…エロいのはいいことなのか…
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