21〜謎のハーモニー!イケメンにダメージ5000億!

噂が走るのはとても早い。

私と坂倉さんの交際宣言は、どうやら校内で隈なく広がっているようで、それ以来は女子から呪いビームみたいな視線を感じることも少なくなり、ようやく以前のように、ステルススキルで人目に付かずに過ごせるのかと思って、私は安堵しかけていた。


のだが…


しかし、学内で斉藤さんと人気を二分するもう片方にも、当然ファンというかガチ恋する者はいる。


今度は私は校内の男子から目をつけられる羽目になるのだった。


「坂倉さんってやっぱモテるんですね」

嫌味じゃないけど、今回のことで改めて、その美貌に心奪われている男子が多いのを実感せざるを得なかったのだ。


「莉里は顔だけ・・はいいからな〜」

いかにも口は悪いと言いたげな感じの友達に、

「マジこの顔より山本の方がいい」

とか坂倉さんは言ってくれるのだけど、

「坂倉さんはその容姿でいいことなかったんです?」

と何故、彼女は自分の顔を毛嫌いするのか知りたくて訊くも、

「さぁ?」

と、特に理由もないような口ぶりで、ただ単純に私の顔が好きなだけだったようである。


そんな休憩時間の会話中に、例の噂を聞きつけたのか、斉藤さんが血相を変えてやって来て、

「お前ら付き合ってるってマジ?」

と訊いてきたので、

「マジ」

と、私と坂倉さんは、謎のハーモニーで肯定して差し上げた。


「もしかして、女子生徒たちの嫌がらせをさせないために、偽装恋愛してるとか?」

などと、意味不明な邪推をする彼だったが、

「何でそんな面倒くさいことしなくちゃいけないんだよ」

と坂倉さんは面倒くさそうに答えるのだった。


「斉藤〜莉里は入学する前から山本に気があったからな〜年季が違うのよ年季が」

友達はそう説明しているが、ああ、昨日も坂倉さんがそんなことを言ってたな、いつからなんだろうとかちょっと思ったりもした。


「年季関係ないと思うけど、本当に山本が坂倉を好きなら、祝福するよ」

そう斉藤さんはいうので、

「ありがとう」

と、またまた、ふたりのハーモニーでお礼を言って差し上げた。


そんな息ぴったりに返事する私たちが面白いのか、友達は大笑いしているが、私たちを背に立ち去るイケメンの後ろ姿はやはりショックは隠せていないようで、逆に何でこんな不細工がいいのか訊きたいくらいだった。


そうしていると、次の授業の予鈴が鳴る。

「うわ、そういえば、実践あったな」

そう言って友達が慌てて授業の準備をする。


教室ではもう、次の授業に向けて移動を始めている生徒もいて、教室内は閑散としていた。


準備がまだだった友達を待って、坂倉さんと一緒に教室を出ると、

「莉里はまた手を抜くの?」

そう訊いてくる友達に、

「斉藤との格の違いを見せつける」

とか、何か対抗意識を剥き出しにしているが、どうも学内の評価では坂倉さんは斉藤さんより魔力で劣っているのではないか?と言われているらしいのを、本人も承知しており、それは普段はやり過ぎると色々面倒だから、力を抑えている坂倉さんからしたら不本意だと常々思っていたらしいのだ。


その低評価ゆえに、以前に斉藤さんが私の護衛権を主張してしまう結果になった訳で、坂倉さんにしてみれば本来、魔力の強さを誇示することなど興味なかったところに、私が関わる事案が発生した経緯もあり、先の発言に繋がっていると思われる。


なんか本気出した坂倉さんだと学校ごと破壊してしまわないか、などと大袈裟に思ってしまいながら、私たちは途中で体操着に着替えて、地下に続く階段を下っていく。


今回の授業は魔法の実践訓練のような内容で、レメディの薬効を先生に確認してもらうのだ。

私は毎回、レメディとは言えない、なんか謎の丸い物を投げてるだけになってしまう、とても大嫌いな授業だった。


その授業を行う魔法模擬演習場は、地下に相当広大なスペースを有して作られており、周りも鉄骨で補強されて、相当な魔法でも耐えられる設計になっていた。


しかし、授業ではあくまで薬効を確認する程度で、錠剤程度の大きさのものしか使用しないため威力もとても小さい。

奥が暗くて見えない程の広さを誇る演習場を使用する程でもないが、一応危険物を扱うので念の為ここが使われるのだが、特に防護服を着ることもなく行われるのが慣例だった。


「それでは、昨日調合したレメディを渡します」

教師が生徒の名前を呼び、先日授業で調合した物を渡す。

「今回のは小さいとはいえ危ないから、投げた瞬間、目の前の防護壁に身を隠すように」


演習場には爆風などに備えて、手前に結構な厚さの障壁が設けられている。

術者はレメディを投げた瞬間、そこに隠れて、頃合いを見計らって魔力を集中させて薬効を発動させる仕組みだ。


最初の生徒が、演習場の重い防護ドアを開けて中に入っていく。


今回使うレメディは爆発のレメディというもので、通常の火薬なら爆竹くらいの威力が、調合魔法ならそれの数倍の威力になる…ちゃんとした調合と術者ならだけど。


生徒が、その爆発のレメディを遠くに投げると、急いで防護壁に身を隠し、暫くしたら、乾いたパンッという音がするだけだった。


それを確認した教師は、ドアから中に入り、レメディの残骸を確認する。

それを見て、何やらノートに採点だろうか、書き込んでいる。


次々と生徒たちは順番に魔法の実践をしていくが、やはり一年生だとそんな威力もなく、防護壁すらいらない感じだった。


そして、次は友達の番になる。


「莉里が本気出すなら私もな」

そう言って演習場に入って、勢いよくレメディを投げると、轟音と共に爆風が演習場を駆け抜け、防護壁を超えて友達の髪をなびかせる。

これには魔法を放った友達もビビって、目をつむって耳を手で塞いで暫く動けないでいた。


「喜多さん大丈夫!?」

教師はそう言って慌てて防護扉を開くが、その友達は、

「はーびっくりしたー」

と言って特に何もなかったように出て来るのだった。

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