20〜不細工さん美人さんに学校で恋人宣言されてしまう。
昨日ずっと空を覆っていた鉛色の雲は、
屋根を打つ雨音に私は起こされて、久しぶりに夜に寝れた喜びも束の間、雨の降る音に憂鬱な気分にさせられていた。
いつものように学校に行く準備をして、外に出ると、傘が三つ並んでいる。
雨の中でも何故か際立って美しい坂倉さんとその友達ふたりだ。
私も傘を差して、みんなのとこに行けば、
「山本〜昨日はお楽しみでしたね〜」
と相変わらず、からかわれるのだが、
「私、寝てただけだった」
と、ちょっと嬉しそうに事実を告げるだけであった。
しかし、他人の恋愛ごとが大好きそうな友達ふたりは、
「莉里が山本の寝顔可愛かった言ってたぞ!」
と告げ口みたいなことを言い出し、そんなの初耳だと思って思わず坂倉さんの顔を見ると、何かめっちゃ頷いてるし、それを見て友達がはしゃぎだして、
「お前らなんで相合い傘しないんですか〜?」
などと囃し立てられてしまっていた。
そんな友達の言葉に、坂倉さんは反応して、傘にもうひとり入れるスペースを作ってこっちを見ているので、それに従わないと
そんな、ひとつの傘にふたりが並んで歩いていると、絶対友達はヒューヒュー言うだろうなと思っていたら、
「いいなー私も恋人欲しいなー」
とか羨ましがっていたりしていた。
何なんこの人たち…
しかーし!私は昨日、父親に託された同棲の依頼を彼女にしないといけないので…友達のからかう材料を与えるような気がして、どうしようか考えていたら、
「ニュースでアリズランドの周辺国が軍事行動を活発化してるって、いよいよかもな」
と坂倉さんが言ってきて、
「お前の家の禁レシピを城に届けないといけないらしいけど、私が一緒じゃないと誰も何もできないって
そう言ってくるので、これは同棲の話が来るのか?と思っていたら、
「でもアレ、使えないぞ」
とか全然違う方向の話になってしまって、そういえば、父親もそう言ってたような気がしないでもない。
「使えないんだ…」
そう言うと、坂倉さんは小声で、
「あのレシピの内容、何か知らないのか?」
と訊いてきたが、当然内容など分かるはずもなく、
「知らない…坂倉さんは知ってるの?」
そう訊き返すと、
「使えない内容だった」
と言って教えてくれなかった。
でも何で封印が解かれてないのに、どんなレシピか分かるんだろう?
「どうして使えないと分かるんです?」
私は、もしかしたら坂倉さんなら、あの文字を読めるのでは?と思い訊いてみたら、
「使えないってのは、使って欲しくないって意味だ」
と、昨日の土下座の説明の時のような、歯切れの悪さに終始する坂倉さん、彼女がそういう態度の時は結構大変な感じなので、それ以上は追求しないことにしてみた。
そうして、やがて他の友達も合流していくと、当然のように、相合い傘をするふたりを茶化したり、昨日のことを根掘り葉掘り訊かれたりと、それは大変な目に合うも、やっぱりお互い恋仲だと、そういうのもちょっと嬉しかったりするのだった。
「げ」
友達のひとりが下品に驚きの声をあげている。
しかし、次の瞬間、私も、
「げ」
と言うしかなかった。
私たちが向かう校門付近には、傘を差した女子たちが
そう、斉藤さんである。
きっと、私に全裸女子ズが悪さをしないか、監視目的であそこに立っていたら、女子生徒たちに囲まれてしまったのだろう。
しかし私たちは、その校門を通らないと学校の中に辿り着けない。
仕方なく、傘を前の方に傾けて顔が分からないように通りすぎようとしたけれど、坂倉さんの身長と私では差があるので、こちらの不細工な顔は丸見えで、あっさり見つかってしまうのだった。
「おはよう山本」
雨の中でも爽やかイケメンな彼は、こっちに寄って来て朝の挨拶をしてくると、一斉に女子たちの恨みが篭った視線が私に刺さってくる。
そして、坂倉さんは構わず私の腰に手を回してその場を通り過ぎようとするので、それに従って付いていくしかない状態であったが、それでも、ちょっと悪いので、一応軽く会釈はしてあげた。
しかしイケメンはめげないのだ。
過ぎ去った私たちを追いかけてきて、
「昨日休んでたけど、どうした?」
と心配してくれていたようで、それでも私は相変わらず彼を直視出来ずにいるので、友達が、
「山本は昨日莉里とずっと一緒だったんだよ!」
と教えてあげていた。
そんな友達の言葉に、斉藤さんは、
「あれ、そういえば最近、よく坂倉と
そう言って、私たちの横に並ぶものだから、他の女子生徒もそれに連なって大変な状態になっていた。
玄関を
「あれ、坂倉いたのか、おはよう」
と言うイケメンの言葉に、
「あ?」
と相変わらずの対応だが、斉藤さんは気にせず私に、
「とにかく、今日学校に来てくれて嬉しい」
とか言って、教室へと向かっていくのだった。
いや…彼が悪気はないのは分かるのだけど…
斉藤さんガチ恋勢を残して颯爽と去られたら、私はその女子たちの視線を一身に浴びまくるんですけど…
そう思っていたら坂倉さんが、
「心配すんな、これは私の彼女だから」
と周りの女子生徒に高らかに恋人宣言をしてその場を収めようとするが、いや!そんなっ恥ずかしいことをいきなり!?言いますか坂倉さん!?
などと戸惑っていると、周りの女子たちは歓喜の声を上げ、
「おめでとう」
とか
「お幸せに!」
とか祝福されて、最後は拍手まで沸き起こってしまい、それを見ていた関係ない生徒や先生からもお祝いの言葉をもらってしまうのだった。
そんな盛大に祝福されてしまって、私は恥ずかしいやら嬉しいやらで顔を真っ赤にして何故か360度にいる喝采に沸く人々にお辞儀をしまくってしまっているのだった。
いや、みなさんノリ良すぎでしょう…
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