13〜対決!美男美女!って私の取り合い?

私の通う学校は、400年前の魔王アリズと魔の民との戦い、所謂いわゆる魔の民侵略戦争の際に、王の居城を守るように最終防衛要塞として建設された。

そのため所々ところどころ、戦時中の名残りはあるものの、ほとんどは改築されていて、歴史ある厳格さは残しつつ、国の最高峰の難関学校に相応しい佇まいを誇っていた。


そんな格式ある学校の教室内では多少騒めく生徒たちが、ある出来事に視線を集めている。

その視線の先では美男美女が対峙していた。

斉藤さんと坂倉さんだ。


その両名は、私の護衛権を巡って決闘で決着をつけようと臨戦体制に入ろうとしているのだった。


しかし、こんなところで自分のせいで争われたら色々迷惑すぎると思って、慌てふためきながら私は、

「あのっ、ちょっとここでは…」

とふたりを諌めようとするも、

「じゃ日時と場所とルールを決めてやりますか!」

そう言って友達がその場を収めようと言ってくれた。


「ここでする気だったんか?」

斉藤さんは対峙する坂倉さんに訊いているが、その表情には余裕が伺える。

「いつでもいいんだが」

と、やる気満々の彼女は答えるが、その計り知れない実力を目の当たりにしたばかりの私からしたら、斉藤さんのその余裕が返って彼を危険な目に合わせるのではないかと、ヒヤヒヤするしかなかった。


教室内も、斉藤さんに憧れる女子たちが心配そうに見つめていたり、男子は男子で何か熱くなってる感じの人がいたり、どちらかが惨敗するのを予想してか、可哀想な表情をする者がいたりと、異様な雰囲気に包まれているのだった。


「じゃあとから概要伝えるし、それまで解散な!」

と友達が告げていると、休憩時間が終わるチャイム鳴り、みんなは自分の席に戻っていった。


「何でこんなことに…」

正直、自分のせいであのふたりが争うということに酷い罪悪感を覚え、どうにかやめさせられないかと思うが、斉藤さんに相手がめっちゃ強いことを伝えて諦めてもらおう、と一瞬考えたけれど、実際それを見ないと信用はしないだろう。

何を言っても争いを止める方便としか取ってくれないだろうし、そもそも彼に話しけるのを女子に見られたら、話しが更にややこしくなりそうで、どうにもならない。


当然、坂倉さんも引く訳もないので、頭の悪い私が何を考えても無駄なのだ。

もう最小限の怪我などで決着がつくのを願うしかない。


そんな常に噂の的のふたりが、なんか地味を極めた不細工な女子を巡って決闘するという話は当然、瞬く間に全校に広がり、方々ほうぼうでどっちが勝つのかで盛り上がっているようで、斉藤さんファンは当然、彼が勝つと思っているようだけど、いや彼が勝ったら私の護衛に付きっきりになるんですよ?いいんですか?

そんなややこしい状況なっている。


一方、坂倉さんの勝ちを予想する者は少なく、それはそうで、彼女の実力を知っているのは私たちとか今朝の全裸女子ズくらいだろうから、それでも学内のエリートふたりが魔法対決するということ自体で騒然としているのだった。


当然この異常事態を重く見た教員たちは、当事者のふたりを呼び出し、一切の対人に向けての魔法使用を禁じて、事態の収拾を図るのだった。


放課後に、またまた担任に呼ばれた坂倉さんと、共に呼ばれた斉藤さんからそのことを聞いた私は、安堵の表情と共に帰路に着くのだった。


「とりあえず、何もないまま斉藤は山本の護衛を諦めざるを得なくて笑うよなー」

下校時、相変わらず私を周りから見えないように囲いつつ、学校をあとにしながら、友達はそう言って今回の事件の顛末を笑っていた。

「つか、莉里はどうやって斉藤を倒すつもりだったんだ?」

友達にそう聞かれた坂倉さんは、

「睡眠のレメディで終わりだろ」

と、あっさり答えた。

確かに戦いの最中に寝てしまっては勝負にならない…彼女はちゃんと相手を傷一つ付けずに勝つ方法を考えていたのだ。

やっぱり頭のいい人は違うな…

そんな中、それを聞いたみんなは、笑って、

「斉藤くん決闘場でぐっすりおねんねだったのか〜!」

「ついでにお湯を股間に流しておくと莉里の完勝だな!」

などと相手をちゃかすように盛り上がるのだった。


そう言って歩いてると、例の交差点に着いたので友達は、

「今日どうする?香林坊行く?」

と誰にという訳でもなく訊いてきた。

その言葉に反応して坂倉さんは私の顔を見てきたので、

「斉藤さんいるかな?」

と一番の懸念を口にすると、

「あいつをあそこで見たのは昨日が始めてだし、そんなしょっちゅう来てないはず」

「女子が騒いでたら、すぐ帰ればいいんじゃね?」

そう言って、私の了解を得るまでもなく、みんな香林坊の方へ歩き出すので、私もそれに付いていくのだった。


そのまま例の公園に向かうと、公衆トイレに入って各々着替えるのだが、昨日私に制服を貸してくれた友達は、何か違う制服を持参していた。


「しかし、何であの別人化していた化粧でバレたんだろうな?」

昨日の斉藤さんに私が見つかったのが妙に納得できてない友達が、不思議そうに言えば、坂倉さんが、

「マジで匂いで分かったんじゃね?」

と危険なことを言ってくる。


焦った私は自分がにおってるんじないかと、あちこちに鼻を近づけて確認するも、それを見た友達たちが寄って来て各々私のあらゆる部位の匂いを嗅いでくるのだった。

「ひぇええええ」

と思わず意味不明な悲鳴を上げてしまうも、

「匂わないって!心配すんな!」

そう言って友達は安心させてようとしたが、いや、身体の隅々を匂いを嗅がれるという惨事がですね…


そんなことを思っていたら坂倉さんが、

「そんなことしてたら斉藤になるぞ」

と言って、さっさと歩き出すので、みんなは、

「ひぇえええええー」

「それだけは勘弁!」

と笑いながら、それに付いて香林坊に向かうのだった。

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