08〜女子の存在を匂いで嗅ぎ分ける男!
うちの魔法学校で一番容姿がいいであろう斉藤さんは、他のそこそこ容姿がいい男子たち数人と、私たちと同じ香林坊に遊びに来ていた。
その周りでは女子学生が
テレビのアイドルがそこにいるかのような、騒然とした繁華街で坂倉さんの取り巻きのひとりが、
「莉里どうする?帰ろうか?」
と訊いているが、
「お前の化粧を信じろ、別人だろ?」
と鼓舞して繁華街の中を進むが、私たちを
「あれ、なんで別の学校の制服着てるの?」
とイケメンが不思議そうに問うも、
「こっちの方が可愛いからに決まってんだろ」
とぶっきらぼうに坂倉さんは答える。
私は、斉藤さんはいつもここには来てないのだろうと察していた。
坂倉さんたちは毎度この制服で繁華街をうろついていたはずなのに、それを知らなかったからだ。
彼の周りの女子たちは、あらゆる者がその美貌を前にひれ伏すしかない坂倉さんを見て若干呆然としているようだったが、まぁそれはそうだろうなと、彼女がライバルなら勝てないしと思いつつも、安心して、その美人が
それより、そこそこの容姿の男子たちは妙に色めきたって、坂倉さんを紹介しろと斉藤さんにこそこそと小声で訴えていた。
めっちゃ聞こえてますよ…
そんな小声を制して斉藤さんは、
「山本は?」
といらぬことを訊いてきた。
「は?何で?」
と坂倉さんは返すも、
「だって彼女の匂いがする」
と変態丸出し発言をしてくるのだった。
えーーーーと…
「匂いとか変態かよ、あいつはそんな変な匂いしないだろ、何で分かんだよ、もしかして山本が席立ったあとの座席の匂い嗅いでんじゃねーだろーな!?」
と私の気持ちを代弁してくれる坂倉さん、いやっそこまでは思ってないけど!
「冗談、冗談、でもその焦りようだといるな?」
ああ、斉藤さんは私が一緒か探るために鎌をかけてきたのだ。
うわぁ陰湿だー…
「いねーよ」
と立ち去ろうとするも、坂倉さんと取り巻きに囲まれていた私を高い身長を活かして覗き込んで見つけて、
「いるじゃん」
と斉藤さんが言った瞬間、ウザそうな顔をした坂倉さんは何かを投げ捨てた。
その瞬間、周りの人たちは不思議そうな表情のまま止まったようになり、私は彼女に手を引かれてその場を走り去った。
「すまん、まさかあいつがいるとは思わなかった」
結構遠くまで走っただろうか、繁華街から離れた、銀杏並木が綺麗な閑散とした住宅地の中で少し息を切らしながら坂倉さんは謝っていた。
「重力のレメディかーすげーな莉里」
取り巻きのひとりがさっき坂倉さんが放った調合魔法の正体を言い当てている。
「ちょっと重くなるだけだし害はないよ」
結構凄い魔法の筈なのに、さらっと答える彼女がちょっとかっこよく見えてしまう。
そんな彼女たちに、自分が進んで付いてきた訳ではないにせよ、やっぱり迷惑を掛けてしまったことについて謝ったが、取り巻きのひとりが、
「気にすんなよ、莉里は来てくれて喜んでるし」
と言ってくれたが、思い返せば、私が制服を着替えた
「送っていくよ」
そう言うと坂倉さんは歩きだし、私も慌てて彼女の後ろに付いて歩く。
「朝何時に家出てる?」
私の前を歩きながら坂倉さんは訊いてくるが、まさか毎朝迎えに来るつもりなのかな?と思って、そこまでさせたら悪いと、
「いいですよ、ひとりで学校行けます…」
と答えたら、取り巻きが
「甘えとけよ、女の嫉妬は怖いからなー?」
の言葉に思わず、
「女?」
と聞き返したら、
「斉藤のファンだよ、変なレメディ仕込まれたり怖い呪符貼られたりするかもしれないぞ?」
それを聞いて、ちょっと怖さはあるのだけど、ただ分からないのは、当然私と関われば彼女たちも同じ危険に巻き込まれる訳で、何故そこまでして守ろうとしてくれるのか疑問に思っていたのだ。
「でも、危ないのなら尚更迷惑になるし…」
いざとなれば学校を休めばいいと思い、これ以上誰かに迷惑をかけるのは気分的にも乗れないでいた。
「お前を守れるのは私しかいねーんだが」
坂倉さんは、立ち止まって振り返ると姫を命懸けで守る
振り返った時の
それを見て取り巻きは、
「ひゅーっ!かっけー!山本〜そうだぞ莉里の魔力ならどんな奴だって返り討ちだからな、厚意は受け取っとけって」
と
「はい…」
と答えるしかできなかった。
「はい?」
と若干怪訝な表情で聞き返す坂倉さんに、
「あ、えと、よろしくお願いします…」
としっかり厚意を受け入れる意思を示した。
それを聞いた彼女は、若干優しい表情になり、再び歩き出すので、慌てて
やがて自分の家の前まに付くと、送ってくれたお礼をして玄関のドアを開けて振り返ると、何故かまだみんなこっちを見ていて、こちらに取り巻きの何人かが手を振っていたので、自分も振り返してみた。
ドアを閉め、坂倉さんとその取り巻きとあんなに仲良く一緒に帰ってきたことが、どうも夢のようで不思議な気分の中、靴を脱いでいたら父親が階段を降りてくると、若干周りを気にするように見渡している。
「友達できたのか?」
多分、窓から私が坂倉さんたちと帰ってきたのを見ていたのであろう、そう訊かれたが、自分としては友達と言っていいか分からず、
「ちょっとね」
とはぐらかすような返答しかできなかった。
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